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孔子は聖人ではなかった? 「論語」の最新解釈

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「学んでときにこれを習う、また説(よろこば)しからずや」――中国の古典「論語」がビジネス・歴史専門誌で相次ぎ特集されている。「先行き不透明な時代の指針として論語に人気が集まる」(渡辺秀樹・洋泉社MOOK編集長)。安冨歩・東大教授の「超訳・論語」(ディスカヴァー21)は40代からシニア層にかけて読まれ、元特捜検事の田中森一氏の「塀のなかで悟った論語」(講談社)もベストセラーをうかがう売れ行きだ。しかし生前の孔子はどこかアヤしいところがあり一流の人物とは見られていなかった。論語も儒教の多くの教典の中では二流の副読本の扱いだった。孔子の実像をたどりながら、最新の論語の読み方を探った。

言い換え、強弁……本当はセコイ?

中国の春秋戦国時代に生きた孔子は失脚・亡命を余儀なくされた「挫折した政治家」といえる。乱世のさなか小国の宰相格まで上り詰めたが、その後の晩年約14年間は自らの登用先を求めて中国各地を巡回しなければならなかった。孔子の理想主義が当時の君主らに受け入れられなかったとされるが実態はどうか。「諸子百家」(講談社)などの著者、浅野裕一・東北大名誉教授は「孔子の誇大妄想的な考えが敬遠された」とみる。

「礼」によって統一国家を樹立するのが孔子の理想だった。孔子は古代の統一国家「周」の礼法を教える教師として本格的なキャリアをスタートさせた。

しかし孔子は貧しい環境に育ったとされる。白川静氏は「孔子伝」(中央公論新社)で巫女(みこ)の庶子だったろうとしている。その孔子が下級役人などの仕事の合間にどのようにして君主や貴族の儀礼・作法を知り得たのか、その過程は明らかになっていない。「結局あれこれ聞きかじっただけの耳学問ではなかったか」(浅野名誉教授)。

魯国の大廟に入れてもらったときに、孔子は関係者を質問攻めにした。「古い礼法を教えている人が知らないのか」と笑われると「(こういう時はあれこれ質問するのが)礼というものだ」と返した。

君主から桃とキビを下賜されたとき、まずキビを有り難く食べた。「キビは桃の皮をこすり落とすためのものだ」と注意された孔子は「五穀の長であるキビの方が桃よりも尊い食べ物です」。

いずれも孔子の偉さを伝えるエピソードとして伝わっているが、自らの無知をとっさの切り返しで取り繕ったにすぎない、とも読み取れる。

野心家で出世主義の一面も

人間的にも君子と言い切れるかどうか。浅野名誉教授は「出世主義の野心家の部分があった」と指摘する。

孔子が諸国巡回時代に仕官を求めようと悪戦苦闘する様子は司馬遷「史記」などに詳しい。弟子にたしなめられると「自分を買ってくれる相手を待っているんだ!」と言って内心のいらだちを隠さない。欲得を捨てた聖人のイメージからはどうも遠い。

最晩年に「鳳鳥至らず河図は出ださず。我はやんぬるかな」と嘆く。聖者が出現する吉兆のシンボルとされた鳳鳥も河図も出ない。変革の兆しはなく世の中は悪いままだ。それも「自分はどうしようもないと自らの不運を悲しんでいるだけで、分裂状況にある中国の民を思いやったのではない」と浅野名誉教授。「自分を創始者とする統一国家樹立の夢想があった」とみる。春秋戦国時代には無為自然を説いた老子、後に秦が採用し全国統一に繋げた法家、軍事戦略を説いた孫子などの思想が一斉に花開き、儒教だけがもてはやされたわけでもなかった。

二流の教科書、寄せ集めの逸話

その儒教で最高クラスの書物は孔子自身が編さんしたとされる「書経」。さらに「易経」「詩経」といった古典がある。それらのテキストのなかで「当初、論語は格下の雑書とされた」と加藤徹・明治大教授は位置付ける。

論語は孔子の一言一句を弟子たちが集めたアンソロジー集だ。成立は孔子の死から約150年後とされる。「学而編」など20編で構成されているが、統一した編集方針の下で集められたものではないらしい。

「当然ながら孔子自身が筆を取ったわけでもないし、生前の孔子を知らない孫弟子が書いた部分もある」(加藤教授)。正確に孔子の肉声を伝えてきたとも言い切れない。他の古典と同様、なかには後世の創作も混じっているようだ。当初は取っ付きやすい入門書のような位置付けだった。加藤教授は「論語が一流に格付けされるのは宋の時代になってから」としている。

よく言えば融通むげ、悪く言えばいい加減な論語の成立状況こそが、時代を超えたロングセラーとして読まれることを可能にさせたと加藤教授は分析する。「読者は様々な読み方ができる」。

a 宗教の教典のように厳格に解釈の基準がはめ込まれているわけではない

b 愚直な弟子・孫弟子が集めたから『上から目線』で教えを受ける感じがしない

c 身近な実際の人間関係を扱っており、孔子や弟子の心理状態なども分かりやすい

かしこまらずに楽な気持ちで読めることも古典が生き残る条件の1つ、と加藤教授は指摘する。

パワハラ、入獄…21世紀にどう読むか

この論語、現代でもずいぶん"使いで"がありそうだ。

例えばパワハラ対策の手引きとして使えるとしたのが安冨歩・東大教授だ。「超訳・論語」で新たな読み方を提示している。

安冨教授は東大以前にパワハラ事件を目の当たりにした経験があり、現在も研究課題の1つにしている。論語を読みこなすとハラスメントを行う側の心理が見えてくるという。「論語に出てくる『小人』がハラスメントの加害者を映し出している」としている。小人は「現代でも他人とのコミュニケーションの回路を閉ざす小人タイプがハラスメント事件を引き起こしがち」(安冨教授)。

安冨教授は「学んでときにこれを習う」という言葉が論語のキーワードになっていると説く。人間には好奇心がある。学び修練を重ねているとしっかりと自分のものになる瞬間が訪れる。その学習することのよろこびに孔子は人間社会の秩序の根源をみたという解釈だ。

社会的に指弾された人物が論語に触れるとどうなるか。田中森一氏はかつて特捜検事から弁護士に転じ、逆に「闇社会の守護神」といわれた人物だ。

田中氏は詐欺罪などで服役中にがん宣告まで受けてしまう。その逆境の中、摘がん手術を受けた後の独房で論語を読みふけったという。「正直法律的な考え方とは違和感を感じる部分もある」と田中氏。「しかし生きる希望を失いかけたときに論語は大きな助けになった」。転んだ後のツエが論語だとしている。刑期を終え社会に復帰後は論語の研究会を立ち上げ、現在約300人の会員が参加しているという。「人と人を結びつける力が論語にはある」と田中氏。法律社会のオモテとウラ、本音と建前を知り尽くした人物だけに、得体の知れない説得力を感じるのかも知れない。

戦後に長期政権を誇った吉田茂元首相は、日常生活や人間と人間の交渉のことは何でも漢籍に求められるというのが信条だったという。

外交官出身で徹底した親英米主義者として知られ、長男で英文学者の吉田健一氏とは歩きながら英語で議論していたこともあったというエピソードも持つ吉田元首相。そんな西洋好きも中国古典の力を認めていたわけだ。

明治大の加藤教授は「中国の歴史的財産の8割は人間関係に関すること」と言い切る。日本経済が大きく動きあれこれ忙しく立ち回っている我々も1日くらいは時間をつくって論語を読み直してもいいかも知れない。(電子整理部 松本治人)

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