原作者には金銭面のリスクも不利益もない

日本における原作者と映画製作者がもめる原因のほとんどは、クリエイティブとビジネスの話を混同してしまっていることだ。映画は、原作者のほか出版社、監督や脚本家など、著作権の所有関係がいくつも分散している。本来は連携しあうべき各者がそれぞれの立場で自己主張を通し始めると、最悪は訴訟合戦に発展しかねない。

出版社であり、原作映画の製作も手がけるティー・オーエンタテインメントの本田武市氏は、「原作とイメージが違うだとか、ビジネスとは関係のない話が主になりがち。物語を最初に生み出した原作者のクリエイティビティは尊重されるべきですが、原作者を絶対の正義にしたら、ビジネスが感情の問題にすりかわって、話がややこしくなります」と語る。

明確にしておくべきだが、映画化で原作者は金銭面でのリスクは負わない。安かったとしても原作使用料は支払われ、本は売れるし、作品の認知度も上がる。映画化がなければ発生しない利益を、ゼロリスクで享受できる立場なのだ。

もちろん、傷つかないわけではない。映画に絡む打ち合わせやシナリオチェック作業やらで、原作者は余計な気を使うことになり、連載中の作品や次回作の執筆に影響が出る。また意に沿わない映画になった場合、作品へのモチベーションが減退し、結果的に作家収入が落ちることもあるだろう。

原作使用料にからむ騒動を避けるために、オリジナル作品が増えればいいのではと思われるかもしれない。だが、オリジナル脚本の映画を増やすのは、現実的にほぼ無理である。映画製作において、リスクを減らすため複数の会社が投資する、「製作委員会」の方式が今の主流である。出資する側にとっては、「〇万部のベストセラー」は企画段階の大きな安心材料となる。少しでも失敗を避けるために、原作のある作品が優先されるのは、仕方のないことでもある。

「日本の映画興行収入は約2000億円でこの10年ほど変わっていません。小さい市場で観客の奪い合いをしている状況です。今後は少子高齢化で、減少していく可能性も否定できません。そうなると製作側は知名度のある原作に頼っていかざるを得ません。今のプロデューサーは、オリジナル企画を立てるのではなく、いかに売れている原作を獲得するかが重要になっています」(前出の久保田氏)

原作と映画。両者の関係は、より強固になっている。前出の四宮弁護士は、「クリエイティブとビジネスを理解し、両者をきれいに分けて考えることで日本の映画ビジネスはもっと成熟する」と期待を寄せる。映画製作に関わる人が、等しく利益を享受できるようにシステムを見直す時期にきている。

(ライター 浅野智哉、平山ゆりの)

[日経エンタテインメント!2013年9月号の記事を基に再構成]

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