定年退職後、妻に嫌われない方法作家 三田誠広氏

夫が定年退職した後、「主人在宅ストレス症候群」になる妻が多いという。夫が家から一歩も出なくなり、自分の生活リズムも狂ってくるためだ。「団塊老人」「夫婦って何?『おふたり様』の老後」などの著書もある作家の三田誠広氏は、夫婦ともに楽しい老後を送るためには「妻が夫の地域デビューを助けたり、夫の自立を促したりすることが大切」とアドバイスする。
みた・まさひろ 1948年、大阪生まれ。早稲田大学文学部卒業。1977年、「僕って何」を「文芸」に発表し、芥川賞受賞。以降、小説、評論、エッセーと幅広く活躍している。著書は、「いちご同盟」「鹿の王」「空海」「団塊老人」「夫婦って何?『おふたり様』の老後」など多数。

――老後の夫婦の生き方になぜ関心を持たれたのですか。

三田 私は小説家ですので、家で仕事をしています。妻から見ると、毎日家にいて、ずっと同じ生活をしているので、希望がありません。これに対し、サラリーマンは、ちょっと前までは年功序列でしたから、給料も上がるし、係長から課長に出世したりするので、絶えず希望が持てました。

でも、サラリーマンも、定年になると、突然希望がなくなります。定年後25年間、希望なしに生きていくというのは難しいし、希望もない旦那が家のなかでごろごろしているのを見ると、妻も参ってしまうのではないかと思いましたので、警鐘を鳴らす意味で、「夫婦って何?『おふたり様」の老後」などを書きました。

夫の在宅は妻のストレス

――「主人在宅ストレス症候群」などという言葉もあるようですが、定年後、家でごろごろしている男性は、女性にとって困った存在なのでしょうね。

三田 アメリカにも主人在宅ストレス症候群はあるらしいですが、アメリカの場合は仕事をやめたご主人が台所に立って、大はりきりで料理をつくったり、さあ、キャンプに行こう、バーベキューやろうと、仕切ったりするので、奥さんがストレスになるというケースが多いようです。

一方、日本の場合は、家事をしない男性が多いです。ご主人が毎日家にいる。することがなく、朝からパジャマのままでひげもそらずにお茶の間でテレビばかり見ているんです。それを奥さんが横から見ているとストレスがたまってくる。いまだけならいいのだけれど、10年後、20年後もこの老人がずっと、ここでのさばっていて、希望もなくぼやーっとしているんだと思うとストレスになるんです。それで病気になってしまうこともあります。

――三田さんは、そうした男性のことを「未来のない粗大ごみ」と呼んでいますね。

三田 産業廃棄物という言葉も使っているんですが、日本の企業があまりにもサラリーマンを働かせすぎたんですね。残業が多いし、出張も多い。土日も仕事を与えるので、自分の時間が持てない。自分の趣味も、しっかりした人生観も持てない。会社でよく働いて出世するということにしか、人生の希望がないんです。

その人たちにある年齢がきたら「さあ、定年です。やめてください」と言う。そう言われたら、その人たちは生きる希望を失ってしまうんですね。そういう人間が各家庭に一人ずつ粗大ごみのように捨てられて、だれも引き取り手がない。ご家族が一番困るわけです。

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