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これから急増 ワーキングプアの老後どう支える 中央大学教授 山田昌弘氏

2012/12/28

 少子・高齢化の背景にあるのは、正社員になりたくてもなれない、結婚したくてもできない若者が増えているという現実だ。「正社員と主婦」というこれまで当たり前と思われていた家族形態が崩れ、それを前提として構築されている社会保障制度にも、矛盾が拡大している。この問題に詳しい山田昌弘・中央大学教授は「家族形態や働き方に関わらず、個人単位に社会保障制度を構築することが急務」と主張する。

■いまの若者、「自立しない」ではなく「自立できない」

 やまだ・まさひろ 1957年、東京都生まれ。中央大学文学部教授。専門は家族社会学、感情社会学。「パラサイト・シングル」「格差社会」という言葉を浸透させた。著書に「近代家族のゆくえ」(新曜社)、「パラサイト・シングルの時代」(ちくま新書)、「希望格差社会」(ちくま文庫)、「新平等社会」(文春文庫)、「少子社会日本」(岩波新書)、「ここがおかしい日本の社会保障」(文春文庫)、共著に「『婚活』時代」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。

――山田さんが1997年に、親と同居し続けることによって自分の収入をすべて小遣いとして使う未婚者たちを「パラサイト(寄生)・シングル」と名付けたときは、親離れができない困った人たちの話だと思っていました。しかし、いま、親にパラサイトしている人の多くは、そうしないと人並みの生活もできない人のようですね。

山田 私が「パラサイト・シングル」という言葉を使い始めたのは、97年のアジア金融危機の直前でした。そのころは、ほとんどの若者が、男性も女性も正社員で、親から独立しようと思えば独立でき、結婚しようと思えば結婚できるにもかかわらず、親と同居しながら、大部分の収入を小遣いに使っているという事例が目立ちました。そうした独身の男女を、パラサイト・シングルと名付けました。

 親と同居しながら、リッチな生活を送って、結婚を先延ばしする人たちがパラサイト・シングルだったのですが、その後アジア金融危機が起きて、若者の経済状況が坂を転げ落ちるように悪化しました。そのあたりから若者の収入が低下し、雇用の非正規化(フリーター化)が進んだのです。

 いまは、自立できるのにしないのではなくて、自立すると生活ができないから、しかたなく親と同居して、慎ましやかに生活をするという人がほとんどです。

■未婚男性の3分の1は「年収200万円未満」

――結婚して家族を養いたいと思っても、養えるほどの経済力がないワーキングプアと呼ばれる若者が増えているのですね。

山田 20年前は「三高」といって、年収が1000万円なければ(結婚相手としては)だめだという女性が多かったのですが、いまは年収300万円、400万円を稼ぐ未婚男性も少なくなっています。明治安田生命生活福祉研究所が2010年に行った調査によると、20~39歳までの未婚男性のうち、約3分の1が年収200万円未満でした。3分の1が年収200万円から400万円までです。年収400万円以上を稼ぐ未婚男性は25%しかいないのです。

 けれども女性の条件はもっと悪い。20年前は未婚女性の多くは「一般職」ではあったけれども正社員でした。いまは非正規雇用の女性が多く、男性以上に収入が少ない。

――男女ともに収入が少ないと、なかなか結婚に踏み切れないわけですね。

山田 男性は、親と同居しながら自分の収入が高くなるのを待つ。女性は収入が高い男性が現れるのを待つ。けれども、待てども、そんな男性は現れないのです。そして、結婚しない人が増えて少子化が進むというのがいまの日本の状況です。

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