これから急増 ワーキングプアの老後どう支える中央大学教授 山田昌弘氏

50年先の生活を心配する余裕ない

――年金制度に欠陥があると、払いたくないという気持ちにもなりますね。

山田 以前、年収200万円くらいの非正規雇用の人100人くらいにインタビューしたときに、「年金保険料を納めていますか。老後が心配ではないですか」と聞いたところ、1人のフリーターの人に「5年先の生活がどうなっているか分からないのに50年先の生活なんか心配している余裕はない」と言われてしまいました。社会が安定していて、5年先、10年先の様子が分かる人だけが年金保険料を納められるんです。

健康保険はすぐに病気になる不安もあるので保険料を納めるようですが、年金となると50年先で、制度もどうなっているか分からないということで、納めたくないという気持ちになるようです。ある人は「どうせ60歳前に死ぬから払わなくていい」と言っていました。

――非正規雇用の人も厚生年金の対象にするという方向で解決することはだめなのでしょうか。

山田 いまの正社員というのは、妻を養うというのを前提に年金制度が構築されています。そうではなくて、離婚も単身者も増えていますから、一人でも生活できるという形に制度を変えていくべきでしょうね。

――年金保険料も払えない人たちが増えてきた場合、生活保護を受ける条件も厳しいですから、どのようにセーフティーネットを構築すればいいのでしょうか。

山田 「ベーシック・インカム」や「負の所得税」といった最低保証の給付を国が行うべきではないでしょうか。ベーシック・インカムは月に何万円かをすべての国民に配るというものです。これを給付すればベーシックなところを保証しますから、生活保護は要らなくなる。働いている人にも働いていない人にも、お金持ちにも貧しい人にも一定額を一律に配る仕組みです。

働く意欲喚起へ“効果あるばらまき”も

――お金持ちにとってはボーナスみたいなものでしょうが、生活が苦しい人には生活を支える保証になるわけですね。

山田 生活保護と異なり、働いたら給付を減らされるということがないのが利点です。働けば働くほど生活は楽になるわけです。常に働こうというインセンティブがあるわけです。

「負の所得税」もほとんど同じ考え方なのですが、自由主義経済学者として有名なミルトン・フリードマンが考えた方式です。個人が所得税を払う際、所得が一定額より少ない人は逆にお金がもらえます。ただし、所得の正確な捕捉が前提です。

――生活保護を受けるために必要なものもすべて売却して無一文になる人が多いと聞きます。そうすると、そこからはい上がろうとしても、元手がなにもなくなっているので、なかなかはい上がれない。働こうというインセンティブを残す制度として、ベーシック・インカムなどは検討してもよさそうですね。

山田 それをばらまきと言う人もいますが、効果のあるばらまきもあると思います。

(ラジオNIKKEIプロデューサー 相川浩之)

[ラジオNIKKEI「集まれ!ほっとエイジ」12月6日、12月13日放送の番組を基に再構成]

「集まれ!ほっとエイジ」(ベネッセスタイルケア、野村証券提供)は、変化を恐れない果敢なシニアたち=ほっとエイジが、超高齢社会をどう生き抜くか、を考えるラジオNIKKEIの番組(http://www.radionikkei.jp/hot-age/)。月曜日が、ライフワークに生涯を捧げることを提案する「目指せ!生涯現役」。火曜日が、学校では教えてくれない親の介護、マネープラン、人生90年時代の人生設計を学べる「シニア予備校」。水曜日が、介護サービスを検証するとともに、どんなシニア向けビジネスに可能性があるのかを探る「シニアビジネス研究所」。木曜日が、どうすれば幸せな長寿社会を生きられるかを考える「理想の長寿社会を語ろう」。バックナンバーはネットで聴くことができます。キャスターは相川浩之、町亞聖(月~水)、大宮杜喜子(木)。
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