これから急増 ワーキングプアの老後どう支える中央大学教授 山田昌弘氏

成り立ちにくくなった2つの典型的モデル

――若い世代は年金や介護で高齢者を支えていますので、いまも大変なのに、将来が不安なのですね。

山田 いま支えているのは、結婚している人が多い40代、50代が中心ですからいいのですが、いまから20年後、つまり私が高齢になって年金をもらうころになると、いまの20代の3分の1くらいが非正規雇用なので、果たして支えてもらえるのか不安ですね。

――いまの厚生年金は、正規雇用されている人を想定した制度ですが、非正規雇用の人が増えてくると、いまの制度でカバーできない人たちも出てくるのではないでしょうか。

山田 いままでは、「夫が正社員、妻が主婦かパート。子どもを育てて、高齢になったら厚生年金をもらう」というのが一般的なパターンでした。しかし、このパターンから外れる人がどんどん増えています。昔は先祖代々の自営業というパターンもあったのですが、こちらのほうも継続が難しくなっています。子どもに譲る前に廃業することも多いですから。

「自営業を代々続ける」「夫が正社員」という2つの典型的なモデルが成り立ちにくくなっています。

――典型的なパターンから外れる人というのは、例えば、どういう人ですか。

山田 昔私のゼミにいた女性が、卒業して専業主婦になったのですが、あるとき、いきなり年金を払えと言われたと相談に来ました。「働きすぎたの」と聞いたら、そうではなくて、夫が脱サラして、フリーランスになったというのです。正社員の妻だったら、年金保険料は免除されますが、フリーランスの妻は年金保険料を払わなければならないというのは、おかしいですよね。収入がないから保険料を払ったことにしようというのが「第三号被保険者」の制度だったわけです。彼女は「私は収入がないのに、なんで保険料を払わなければいけないんですか」と聞くので、「厚生労働省は夫・フリーランス、妻・専業主婦という家族はこの世に存在しないことにしている」と答えざるを得ませんでした。

個人単位の社会保障が必要

――フリーランスですと、まだ自分の意思でそれを選んだという部分もありますが、非正規雇用は自分の意思に反してというところもあるので、サポートがないのはつらいですね。

山田 会社の正社員が前提になっている制度なんです。

――いま、雇用も流動化して、いろいろな働き方が出てきているのに、固定的なパターンにしか社会保障制度が対応しないというのでは困りますね。どこを改めればいいのでしょうか。

山田 どこに勤めていても、どんな家族形態でも、同じような形で社会保障が受けられるということが望ましいと思います。個人単位で社会保障が受けられるようにしていくことが必要です。

――個人単位にするために、国民一人ひとりに番号をつけようとすると反対論が巻き起こりますね。

山田 それを実施していない先進国のほうが珍しいのです。私はアメリカに客員研究員として1年いましたが、外国人の私でも社会保障番号というものをもらいました。すべての個人が働いたら一定割合を社会保険料として納める。その代わり、その分がなんらかの形で返ってきます。

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