これから急増 ワーキングプアの老後どう支える中央大学教授 山田昌弘氏

細る正社員の道

――昔、アルバイトをしながら、演劇を志すような若者はいましたが、そういう若者と、いまの若者はまた違うわけですね。

山田 20年前に「フリーター」という言葉が生まれたころは、そういう若者たちを指す言葉だったのです。つまり、正社員になれるのに、あえてならずに、アルバイトの仕事とは別のことに情熱を傾けている人たちをフリーターと呼んでいました。

パラサイト・シングルも似ていて、結婚できるのにしなかったのが90年ごろの若者でした。もちろん、そういう人はいまでもいますが、大多数の人は正社員になりたくてもなれない。独立して結婚したくても収入が低くて、それができないのです。

――なぜこんなにワーキングプアが出てきて、格差社会といわれる時代になってしまったのでしょうか。

山田 世界的にも似たような現象は起こっていて、企業がすべての人を安定した正社員として雇うことができなくなってしまったのです。経済社会が構造転換し、同時にグローバル化も起こり、普通に勤めている人が一生安定して高い給料をもらえる時代ではなくなってしまいました。そうした世界的な状況が日本にも及んできたのが1990年代の半ばです。

24時間営業している小売店があれば、朝や夜、お客がほとんど来なくても人を雇わなければなりませんが、正規雇用では対応できません。また、グローバル化によって、工場が海外へ移転してしまったり、IT(情報技術)化で事務作業をする人が要らなくなったりするなど、経済が大きく変化するなかで、不安定な雇用が増えざるを得ない状況になっています。

ヨーロッパは不安定ななかでも社会保障が下支えしていますが、日本では不安定な部分が結果的にすべて若者に押し付けられて、政府は何の対策もしませんでした。

終身雇用の制度は多くの企業で生きていますので、当然、正社員になれる若者もいるのですが、全員が正社員になれるわけではありません。正社員になって、苦労なく結婚できる若者もいるけれども、そこから弾かれる若者が少しずつ増えています。

高卒であっても正規雇用された人は安定しているのだけれども、高学歴であっても正規雇用されない人の生活は不安定です。安定した仕事に就いた若者と、そうではない若者の間に大きな格差が生まれています。そして、いったん非正規雇用になってしまったら、なかなかそこから抜け出られないというのが日本の社会の特徴です。

孤立死する人、年間3万人

――年金も十分でない、配偶者も子どももいないという人たちが高齢になったときが心配ですね。

山田 いまは高齢者の一人暮らしが多いですが、その中には、過去に配偶者や子どもと一緒に暮らしていたけれどもいまは一人という人が多い。つまり近所に息子夫婦や娘夫婦が住んでいて、いざとなったら駆けつけてもらえるという一人暮らしの高齢者が多いです。それと、団塊の世代まではきょうだいが多いので、元気なきょうだいや甥(おい)や姪(めい)がいるケースが多いです。それでも孤立死する人が年3万人くらいいる。いま年間120万人くらい亡くなりますので、2.5%が孤立死です。

いまの若者の生涯未婚率は25~30%と予想されています。離婚率も高まっていて、結婚した若者の3人に1人は離婚しています。若者で結婚して子どもをもうける人の割合は5割を下回ると予測されています。将来は孤独な高齢者が多くなりそうです。

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