2012/9/5

若い頃に比べて、役に立たなくなれば、時給が安くなるのは当然ですよ。それでいいとなぜ思わないんでしょう。それが分からないようなバカな年寄りにならない方がいいですね。

――定年延長やリタイア後の再就職に加えて、公的年金の支給開始年齢を引き上げるべきだという議論もあります。

それは人それぞれでいいんじゃないですか。一律に制度化する必要はないと思います。

80歳でも90歳でも働きたくないものは食うべからず

(撮影:竹井俊晴)

友人の上坂冬子なんか面白い個性で、「私は年金を早くもらうから!」っていってました(笑)。支給開始を後ろ倒しにした方が総額でおトクと考える人もいれば、何歳まで生きるか分からないし、国家なんか信じられないから早くもらうという人もいていいじゃないですか。

ただし、聖書にも「働きたくないものは食べてはいけない」と書いてあるんです。「働けない」人じゃないですよ。働きたくない人、つまり怠け者は食べさせなくていいということです。

――「定年後は自分のしたいことだけをして豊かな余生を過ごす」などという時代は終わったということですね。では、本当の「大人のお金持ち」とはどんな人でしょうか。

家族に許される範囲で、好きなことに責任をもっておカネを使える人だと思います。

――曽野さんご自身も、そうしたおカネの使い方の経験はありますか?

私は52歳のとき、35日間かけてサハラ砂漠を横断しました。特殊仕様の四駆自動車を2台購入するなど、ちょっとおカネがかかりましたが、どうしても行きたいと言ったら家族は誰も反対しませんでした。

8600kmを、仲間と交代で1日6時間、自分で車を運転して旅をしたのですよ。360度砂だらけの世界です。日本の超過密社会のまさに真逆で、何もない、誰も守ってくれない、むき出しの世界がそこにありました。

道に迷ったら早めにに引き返さないと命の危険と直結しますから、みなで話し合って物事を決める民主主義の論理など通用しない。それを実際に体験したことで、アラブ問題や宗教に対する理解が深まりました。

聖書には「喜べ」という意味のギリシア語「カイレー!」という言葉が羅列されている箇所があります。命令系なのは、苦しみや不安があるときも元気にふるまいなさいという意味だからです。

聖書の教えに「汝(なんじ)の敵を愛しなさい」という言葉があるでしょう。それと同じことなのです。敵を本当に愛せるはずがない、本当に愛さなくてもいい。それでも愛しているような態度を取りなさい、内面と外面を使い分けなさいと言っているのです。

心に不安があっても背筋を伸ばして「喜べ!」。それが人生に対する命令なのです。

(聞き手は安原ゆかり)

[日経マネー2011年6月号の記事を基に再構成]