星新一賞グランプリ2作品 機械進歩した未来描く電子書籍として出版

さて、星新一賞の最終審査会は2つの点で風変わりだ。ひとつは審査員の多様性にある。

審査員による受賞作選考の議論は大いに白熱した(最終審査会の様子)

SF作家の新井素子氏が含まれるのはごく自然だが、あとはノーベル賞を受賞した理論物理学者の益川敏英氏、宇宙飛行士の野口聡一氏、米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)で大活躍する研究者の石井裕氏、日本を代表するハイテク企業IHIの技術系トップである朝倉啓氏、科学担当の新聞記者である私だ。

共通するのは読書好き、とりわけSFを比較的よく手にしてきたという以外に共通点はない。

通常の文学賞であれば、作家が審査をする。つまり作品を生み出す供給者側のプロフェッショナルが選考にあたるのだが、星新一賞では供給側のプロは新井氏ただひとり。あとはいわば読者代表である。しかもかなり理系マインドの強い読者代表たちといえる。このかなり徹底した読者目線がユニークだ。

もうひとつは審査員が偶数(6人)である点だ。選考を円滑に進めるなら奇数が適切だが、あえて偶数にした。そのため上位作品の議論ではたびたび意見が3対3に割れた。すると「説得合戦」が始まる。

なぜその作品を推すのか、各人が主張し異なる見解を覆そうと試み、再投票をした。結論は二転三転し、さながら米国の陪審員制度を描いたドラマ「12人の怒れる男」のごとくだった。もちろん星新一賞の審査員は怒ることなどただの一度もなく、多いに議論を楽しんだ。

どれも6人の審査員が大きな自信と、少々の不安も抱きながら選んだ作品だ。ぜひご一読いただき、「われも」と思う方には第2回に応募していただきたい。(編集委員 滝順一)

日経「星新一賞」
日本経済新聞社が昨年創設した文学賞。SF作家・星新一の名を冠し、「理系文学」を舞台として発想力と想像力を競ってもらうべく、第1回は昨年7~10月に作品を募集した。一般部門(年齢制限なし)は「あなたの理系的発想力を存分に発揮して読む人の心を刺激する物語を書いてください」(想定字数1万字以内)、ジュニア部門(中学生以下)は「100年後の未来を想像して物語を書いてください」(同5000字以内)として課題を提示。2部門合わせて3057作品が寄せられた。日経「星新一賞」の公式サイトはこちら。
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