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給食調理室より愛をこめて

~ママ世代公募校長奮闘記(4) 山口照美

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NIKKEI STYLE

2時間目を過ぎるころ、給食調理室からいいにおいが漂ってくる。「あっ、今日はカレーや!」と小躍りする子どもたち。私もちょっと嬉しくなる。自校調理の給食は、おいしい。

大阪市の給食は、一食あたり約220円。比較的安めのコストで、子どもにしっかり栄養を取らせるための工夫がなされている。「栄養士さんってすごいなぁ、と感心しますよ!」と教えてくれたのは、献立を元に学校で調理をしてくれる給食調理員の柴田佳子(しばた・よしこ)さんだ。小6・小3・5歳の3人の子どもを育てる母親であり、敷津小学校の台所の責任者でもある。年齢が私と同じこともあり、「子育て調理員の本音」を聞いてみた。

――配属は3校目だそうですが、小学校ごとに仕事の違いはありますか?

 「ありますよ! 敷津小学校は人数が少ないので、仕事の進め方がかなり違います。たとえば、大きな学校なら野菜はほとんど機械で切ります。でも、120人分ならがんばれば手でも切れちゃうんですよね。ラッキーにんじん(シチューなどに入れるハート型などのにんじん)も、ついたくさん作っちゃいます(笑)。その代わり、後片付けや掃除はしんどいかな。たった2人で、大規模校と同じことをしなければならないので……」

――子どもの好き嫌いや食べる量に特徴はありますか?

「この学校は、すごくよく食べる学校ですね。量は食べるけれど、好き嫌いはちょっと多い、という感じです。あと、食べることと関係ないですが、大人と子どもの距離が近い学校で、私にもよく話しかけてくれます」

――柴田さんが、登下校時の子どもと話をしている姿をよく見かけます。校長としては、とてもうれしい場面です。

「今の6年生は長男と同じ年なんです。自分の子どもを見るような感覚で、何年も見ています。長男のブームは学校でも流行ってるんで、話すネタには困りません(笑)」

――給食の仕事をしていて、一番うれしい時はどんな時ですか?

「みんなで給食を返しにきて、『おいしかった!』と言われるのもうれしい。でも、一番うれしいのはいつも食べるのが遅くて、後から食器を返しに来る『常連さん』が完食している時。『めっちゃ嫌いな野菜を、今日はがんばって食べたんやなぁ』とうれしくなります」

――子どもの変化を食べ残しで見てくれているんですね。

「食器が変な重なり方しているなぁと思ったら、間に嫌いなものコッソリ挟んであることもあります。バレバレです(笑)」

――苦手な食材でも、栄養のバランスから言えば食べてもらいたいところです。

「ピーマンが給食に出る時は、『嫌いな子が多いから、しっかり炒めてやろう』と考えます。苦みが取れて、食べやすくなる。それで残食(食べ残し)が少なかったら、ちょっとうれしい」

――そう言えば、この間出たチンジャオロースもよく炒めてありました。あれは柴田さんの愛なんですね!これからは、もっと噛みしめて食べます。

「7月はゴーヤーが出てきます。これまた、苦手な子が多いんですよね。食材費を押さえる意味もあって、給食は旬のものを大量に使います」

――5~6月は「いんげん豆祭り」でしたね(笑)

「そうそう(笑)。子どもたちは、学校で初めて食べた!という食材も多いようです」

――驚いたのは、お味噌汁やスープに入っている野菜の量です。具がどっさり!

「ウチの子も大阪市の小学生なので、家で『わかめと豆腐の味噌汁』を出したら『具が少ない、学校のお味噌汁の方がおいしい』と文句を言われます。野菜を食べさせるための工夫で、具だくさんにしてあります」

――「給食が唯一のまともな食事」という家庭は、どこの学校にも多かれ少なかれあります。旬の野菜を、学校でバリバリ食べさせたいですね。ちなみに、柴田さんの「自宅の食卓」はどんな感じですか?

「子どもが3人いると、帰ったら戦争状態。夫もフルタイムで働いているので、とにかく早く作る!残り物を使い回す!という発想です。ひじきをたくさん煮て、残ったひじきは翌日にご飯にまぜてひじきご飯。カレーの残りは、パン抜き型のグッズでサンドイッチにして翌日の朝ごはん、といった残り物活用をよくしています」

――どっさり調理と残り物アレンジ、我が家でも参考にさせてもらいます。他の家事で、何か工夫はありますか?

「工夫というより必要に迫られてなんですが、子どもには自分のことは自分でするようにしています。学校で水筒がいるなら、その用意は自分でさせます。つい、『お茶が漏れたら困る』なんて考えて代わりにやってしまいがちですが、『失敗したら失敗したでええやん』ぐらいの気持ちでやらせています。毎週の上靴洗いと、お風呂で自分の靴下を洗うこともルールです。男の子の靴下はなぜか真っ黒になるんで、ちょっとのこすり洗いでキレイになるねんで~と教えて、やらせています」

――お子さんが3人もいると、洗濯物の量もすごそう!

「いやいや、洗濯物より3人が保育園・幼稚園・小学校とバラバラに通っていた時の『明日の用意』のややこしさの方が大変だった。プリントもスケジュールもどれが誰のか混乱状態で(笑)。ウチでは、子どもが忘れ物をしても届けません。私も学校に行っているので届けられないという事情もあるけれど、『忘れて困ったらええねん』と思っています。困れば、だんだん自分で気をつけるようになるから」

――確かに、忘れ物をしても誰かが届けてくれる、先生が貸してくれる、という経験が当たり前になると、『忘れ物=いけないこと』という意識にならない。『ホンマに困った経験』をしたら、2度としないよう気をつけるのは、大人も一緒ですね。

「失敗してもいいので、とにかく任せる。意外にできるし、こっちも楽です」

――学校の給食当番も、必要な教育やなぁと思って見ています。あんまり失敗はしてほしくないのが本音だけれど(笑)

「給食を係に渡して教室へ持って行ってもらう時が、一番緊張するポイントです。『午前中かかって一生懸命作ってんで、絶対にひっくり返さんといて!』と念をこめて渡しています。おかずやご飯の入れ物をひっくり返す事件、毎年起きるんです」

――柴田さんたち、給食調理室からの『愛』を無事に教室に届けてもらわないと困ります!……最後に、ここ数年の給食の変化を教えてください。

「年々、子どもたちが喜ぶように複雑なメニューが増えてきました。来月はパエリヤがあります。新メニューはうまくできるか、少し緊張するんですよ」

――パエリヤ、楽しみだなぁ。家でもなかなか作らないメニューが食べられるし、給食をヒントに「こんな野菜の食べさせ方があるんだな~」と参考になるので、働く親としても満喫しています。これからも、敷津小学校の台所をよろしくお願いします!

「給食の時間が楽しい」と思える学校に

学校給食は、貧困による子どもの栄養不足を補うのが当初の目的だった。食生活が豊かになった今は、食事マナーや食育といった視点で継続しているのが建前だ。

しかし、現実には給食が無くなる夏休みに、やせる子どもが存在している。あちこちの小学校で耳にした。給食開始当初の目的である「児童の欠食を補う」命綱になっているケースもあることを知ってほしい。食べつけない野菜や魚を何とか食べてほしいという願いが、献立を考える栄養士さんの知恵、現場で仕上げる給食調理員さんの仕事にこめられている。

栄養不足だけでなく、給食には「心の栄養不足」を補う意味もあると思う。親しい人と、話をしながら出来たての食事を囲む。一日のうち、「温かな食卓」は給食だけという家庭がある。私自身、朝も夜も子どもと食べられない日がほとんどだ。自分の家庭に対する葛藤を抱えているだけに、給食の時間を「うれしい時間」にしてやりたい。クラスに居場所のない子は、給食もおいしくないはずだ。自分がかつて、そうだったから。温かい学校を作るのが、私の仕事だ。

給食調理室から届けられた愛を、ひっくり返さないように、こぼさないように。クラスのみんなで分け合って、今日も手を合わせよう。「いただきます!」

山口照美(やまぐちてるみ)
同志社大学卒業後、大手進学塾に就職。3年間の校長経験を経て起業、広報代行やセミナー講師、教育関係を中心に執筆を続ける。大阪市の任期付校長公募に合格、2013年4月より大阪市立敷津小学校の校長に着任。著書に『企画のネタ帳』(阪急コミュニケーションズ)『売れる!コピー力養成講座』(筑摩書房)など。ブログ「民間人校長@教育最前線レポート」(http://edurepo.blog.fc2.com/)も執筆中

(構成 日経BP共働きプロジェクト・日経DUAL編集部)

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