その症状、老眼かも 早めの対策で快適に
日経ヘルス
「新聞を読むとき、今までより少し距離を離すほうが読みやすい」「薄暗い場所で、値札が見にくくなった」……。思い当たることはないだろうか? これらは典型的な老眼の症状だ。
60歳前後で安定
老眼は「目のレンズの役割をしている水晶体が加齢によって硬くなり、ピントを調節している毛様体筋という筋肉が、いくらがんばっても調節できなくなって、近くのものが見えにくくなる状態が続くこと」。こう解説するのは、スマイル眼科クリニック(横浜市)の岡野敬院長。
どんな人にも老眼は起こる。早い人では40歳前後から、平均で45歳くらいになると見え方に何らかの変化が起きる。その後老眼は進み、視力が安定するのは60歳前後といわれる。
日経ヘルスプルミエが実施した調査では、6割以上の人が「小さな字が読みにくくなって、初めて老眼を自覚した」と答えた。だが実際は、目が疲れる、しょぼしょぼする、夕方になると見づらくなるなどの症状から、すでに老眼は始まっている。「自分が老眼とは思わず、眼精疲労を訴えて受診し、老眼を指摘されるケースも多い」と梶田眼科(東京都港区)の梶田雅義院長は指摘する。
逆に気づいていても「無理したらなんとか見える」と我慢して、老眼対策を先送りする人も多い。しかし、老眼状態を長い時間放置していると「肩こり、頭痛、最悪の場合、吐き気といった症状が起こることもある」(梶田院長)。
早く老眼対策をすると余計に老眼が進むのでは、と不安に思うかもしれないが、その心配はない。むしろ現代人は、「我慢せずに早めに対策をし、不要な目の負担を減らすほうがいい」と岡野院長は説明する。
老眼用のメガネとコンタクトにはそれぞれ長所と短所があるが「目への負担の軽さや安定感から考えると、第一選択は遠近両用メガネ」と岡野院長は言う。
遠近両用メガネはその見え方に慣れる必要があるため、老眼が進んでから初めて使うと「度の強いレンズ」の見え方に体が慣れるまでに余計に時間がかかってしまう。「度の弱いレンズから始めるほうが楽」(岡野院長)との意味でも、早い老眼対策がお薦めだ。
とはいえ、遠近両用メガネというと、レンズに境目があったり、小窓がついていたりして「いかにも老眼鏡」というタイプを想像する人も多いのではないだろうか?
用途で使い分け
今の遠近両用メガネは、遠くから近くまで、自然に、かつ連続的に見えるように度数を段階的に変えた「累進レンズ」を使ったものが主流だ。一見しただけではそれが老眼鏡と分かる人はいない。
累進レンズは、2つの度数(遠・近)とその中間部で構成され(図参照)、見たい距離に合わせてタイプを選ぶ。一般的なのは、遠くから手元まで見える「遠近両用」レンズ。近視の人が使いやすく、ひとつで戸外から室内までの視野をカバーする。
手元から3~5メートル先までよく見える「中近レンズ」は、中間部を重視した、デスクワークや家事全般に向く室内専用。パソコン作業が多く、手元と約1メートル先までの視野を重視するなら「近々レンズ」を。
手元を見るときだけ使う単焦点レンズは「様々な距離を見たり、長時間仕事をしたりするのは難しい」(梶田院長)。これまで目が良かった人は、遠・中間部はガラス、手元部分だけ度を入れた累進レンズを検討してはどうだろう。
レンズ選びで注意したいのは、すべてがクッキリ見えるものはないということ。「ひとつですべてを見ようと欲張ると、過矯正となり、眼精疲労のもとになる」(梶田院長)
自分の生活スタイルで重点的に見たい距離を検討し、必要なら複数を使い分けるのが理想。老眼は進むので、視力が安定するまでに「通常、3回くらい作り替える人が多い」(梶田院長)そうだ。
見たいものが快適に見えて、長時間使っても疲れないメガネに出会うにはまず、3つのポイントを眼科やメガネ店に伝えることだ。(1)何に困っているのか(2)何を見たいのか(3)1日にどのくらいそれを見るのか――。
その際、眼科は検眼に力を入れている施設、メガネ店は光学レンズメーカーのものも扱い、その場で30分以上、お試しレンズを掛けて多様な距離を見させてくれるような店が目安だ。
眼科医らとよく相談してレンズの距離を選び、そのレンズの特徴に合うフレームを選ぶこと。初心者はレンズの縦幅が3センチメートル以上のものが、より見やすく、慣れやすい。その際、初心者は安易に安価なメガネを作らないこと。「高性能レンズで撮った写真と安価なカメラの写真の仕上がりと同じ」(梶田院長)で、レンズには大きな差がある。
老眼鏡は自分なりの見方を見つけるのに慣れが必要。すぐに諦めずに徐々に慣れるつもりで使いたい。使いこなせない場合に、返品や交換に対応してくれるかどうかも確認を。
(日経ヘルス編集部)
[日経プラスワン4月13日付を基に再構成]
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