終活ご注意 「デジタル遺言」では安心できない相続トラブル百科 実践編第109回

自分が死ぬときに備え、生前から葬儀や相続の手はずを整えておく「終活」が関心を集めています。葬儀サービスを体験できる展示会や相続税、遺言について学べるセミナーも増えてきました。SNS(交流サイト)のアカウントや公開情報をどう処理するかといった「インターネット終活」も取り沙汰されるご時世ですが、こと相続に関してはデジタル対応が遅れているのが実情です。

自分にどんな財産があり、誰にどう相続させるかをパソコン上でまとめておきたい気持ちは分かるが…

例えば電子文書の「効力」の問題があります。「不動産は長男の太郎に、A銀行の預金は長女の花子に、B証券の投資信託は次男の二郎に」……。こんなふうに自分の財産をどう相続させるかの考えをまとめ、パソコン上に保存する方もいると思います。

財産の帰属が明らかになりますし、そのままメールに添付して送れば差出人も日付も分かる形となり、「遺産はこのように分けなさい」という指示が具体的な記録として残るように思えます。ところがいざ相続する際、このデータを根拠に手続きを進めようとしても、実際はそう簡単にはいかないのです。

現在の日本の法律では、ネットやパソコン上のデータ、動画のメッセージなどは、原則として遺言にはあたらないとされています。たとえ故人が遺族のために正確な内容で、思いを込めて残した記録だとしても、残念ながらそれだけで有効にはなりません。故人の意向を知る一つの材料にはなるかもしれませんが、その内容が即実現するような法律上の強制力はない、という結論になるのが現状です。

やはり法的な効力を持つ遺言にするためには、公証役場を利用して正式な法律文書を作成してもらうのが確実です。あるいは自分で書く場合でも(1)全文自筆であること(2)署名があること(3)日付があること(4)押印があること――などの細かなルールを一通り順守する必要があります。

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