USJのV字回復、勝因は映画専門パークからの脱却
日経エンタテインメント!
ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)がここ3年で急速に復活している。開業した2001年度こそ入場者数は1100万人を超えていたが、2010年度には約750万人まで低迷。それが2011年度は870万人、2012年度は975万人と2年連続で100万人以上伸ばし、2013年度は1050万人に達した。
USJは2001年に大阪市に誕生。翌2002年は開業の盛り上がりの反動からか、大きく落ち込んだ。アトラクションに許可量を超える火薬を使用していた問題などの不祥事も相次いだ。その後、最大株主だった大阪市の財政が厳しくなり、2004年に経営危機に追い込まれる。そんな窮地からいかに盛り返したのか。
再建を進めてきた現・最高経営責任者(CEO)のグレン・ガンペル氏は2010年、マーケティング部門を強化するため、外資系生活用品メーカーにいた、森岡毅氏(現・最高マーケティング責任者=CMO)を自らヘッドハンティング。ここから風向きが変わった。
ガンペル氏は、新キャラクターとしてハローキティ、ピンク・パンサーを取り入れ、映画以外のコンテンツの導入を進めていた。このため、「映画のテーマパークからブレた」との声も社内外から聞かれた。
が、森岡氏は「娯楽が多様化しアニメ、マンガ、ゲームの優れた作品は多くあるのに、映画だけでは不必要に狭めている」とガンペル氏の方向性に賛同。「映画を軸とした、世界最高のエンターテインメントを集めたセレクトショップ」を目指し改革を進めた。
例えば、ハリウッドのスタント技術や映像技術を駆使した質の高さにもかかわらず、「映画だけのパーク」の呪縛でひっそりと行っていた『ONE PIECE』のショーを大々的に告知。さらに、ゲーム『モンスターハンター』の世界を等身大で再現した「モンスターハンター・ザ・リアル」など、限定イベントを投入した。
ファミリー層の獲得、「大人だけ」からの軌道修正
同時に「子ども向けアトラクションが少なく、大人のテーマパークのイメージが強かったため、ファミリー層を取りこぼしていた」と森岡氏は分析。家族向けを強化しつつファンが離れないよう、それぞれへの対策を講じた。
2012年には、3~6歳の子どものいる家族を対象にしたエリア「ユニバーサル・ワンダーランド」を新設。ハローキティ、スヌーピー、セサミストリートのキャラクターゾーンを1カ所に集め、アトラクションやレストランなど、30施設を作った。結果、低年齢の子どもがいる家族連れの集客を3割増加させた。
「若者~大人向け」に2013年3月、後ろ向きに走るジェットコースター「ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド~バックドロップ~」を期間限定で投入。連日長時間の行列となり、常設アトラクションとなった。2013年7月には人気のハイテクアトラクション「アメージング・アドベンチャー・オブ・スパイダーマン・ザ・ライド」の映像を4K3D(フルHDの4倍の解像度を持つ"4K映像"を使用した、高精細な立体映像)にリニューアル。この2つが人気をけん引し、2013年度は1000万人超の入場者数となった。
そして2014年7月15日には、映画『ハリー・ポッター』の世界を忠実に再現した大型エリア「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」がオープンする。米ユニバーサル・オーランド・リゾートの集客を飛躍的に伸ばした施設で、同施設初の海外進出。総投資額はUSJ過去最高の450億円に上る。東京ドームのグラウンド3個分に相当する4万平方メートルの敷地に、エリアのシンボルとなる「ホグワーツ城」や「ホグズミード村」、4K映像で空を飛ぶ魔法の冒険を体感するアトラクションなどがそろう。
国内外からの集客増で、2014年度の入場者数は過去最高を更新し、1200万人に達する見込みだ。
写真提供:ユニバーサル・スタジオ・ジャパン
TM & c Warner Bros. Entertainment Inc. Harry Potter Publishing
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(ライター 平山ゆりの)
[日経エンタテインメント! 2014年6月号の記事を基に再構成]
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