会いに行けるヒーロー&キャラクタースポット
日経エンタテインメント!
日本で最も世代人口の多い"団塊の世代"を親に持ち、1970年代の前半に生まれた"団塊ジュニア"が、アラフォーの年齢を迎えている。彼らが少年時代に大きく影響を受けたヒーローといえば、現在も映画やテレビでシリーズが続く『ウルトラマン』や『機動戦士ガンダム』など。その世代が今、子を持つ親となり、ファミリー層をターゲットとしたエンタビジネスを大きくけん引している。
顕著なのは、ヒーローを親子で応援できるスポットが、全国でにぎわっていることだ。"地方の時代"、"町おこし"に、各地でヒーローが一役買うようになっている。かつて、炭鉱の町として栄えた地域に、若いファミリー層を多く呼び込んでいるのは、熊本県の「ウルトラマンランド」(写真1)。栃木県では、玩具工場の跡地がヒーロー玩具の博物館「バンダイミュージアム」に。遊園地内の強い集客施設としてオープンしたのは山梨県「富士急ハイランド」の「EVANGELION:WORLD」と「ガンダムクライシス」だ。実際に会い、体験し、写真が撮れるヒーロースポットは、若いカップル層からファミリー層まで幅広い世代を取り込める、理想的な集客施設なのだ。
また、日本のヒーロー作品はアジアをはじめとする海外でも楽しまれてきた。それを見て育った大人が、海外から訪れていることも、盛り上がりの一因になっている。
【ウルトラマンランド】
誰もが少年時代に憧れ、夢中になって見たウルトラマンのヒーローショー。実は、円谷プロダクションが、秋葉原のAKB48劇場のような常設劇場を運営しているのをご存じだろうか?
熊本県荒尾市にある「ウルトラマンランド」は、広大な敷地に遊園地やホテル、温泉などがある九州最大級のレジャーエリア「グリーンランドリゾート」に併設。"いつでもウルトラマンに会える場所"として、ファミリー層には人気のヒーロースポットだ。
ヒーローと身近にふれあえる施設
「ウルトラマンランド」の中央、ドーム型の建物に、ウルトラヒーローのショーを楽しめるライブステージがある。取材した日は、小雨が降る寒い天候にもかかわらず、午前中から家族連れが多く来場し、場内は満員盛況だった。この日は節分にちなんで、ウルトラヒーローの豆まき大会も開かれた。ウルトラマンがパワーを込めた"ウルトラお豆"がまかれると、子どもも大人も拾うのに夢中。
親子連れにとって、来場の目的はウルトラヒーローによるライブステージや握手&サイン会、各種常設展示だけではない。場内のレストランでは、シェフの格好をしたウルトラヒーローが、誕生日の子どものテーブルまで駆けつけてお祝いをしてくれる(写真2)。さらに、施設前の「ホテルヴェルデ」の「ウルトラマンルーム」に泊まれば、ウルトラヒーローが部屋まで購入したグッズを届けに来てくれるなど、至れり尽くせりだ。
また、レストランのスタッフはウルトラ警備隊の制服をイメージしたコスチュームを着ているなど、細かなところまで気配りが見える。「映画やテレビで見る格好いいヒーローと、身近なヒーローの両方に会えるのがこの施設の魅力です」(円谷プロダクションの高田昌範氏)。
3月24、25日には、ウルトラマンシリーズの最新作映画『ウルトラマンサーガ』公開と、「ウルトラマンランド」設立16周年を記念し、歴代のウルトラヒーローが大集結するイベントが開かれた。ウルトラファミリーが集結する機会は年に1度だけなので大変盛り上がった。
【おもちゃのまち バンダイミュージアム】
JR上野駅から東北新幹線などを乗り継いで約90分。栃木県の壬生町(みぶまち)に"ここでしか会えない等身大ガンダム"がある。その場所は、玩具メーカーのバンダイが運営する「おもちゃのまち バンダイミュージアム」。"合体ロボ"など、多くのおもちゃが製造されていた工場だった施設が、2007年に博物館としてオープン(2010年にリニューアル)したものだ。
海外からもファンが来館、2大スターキャラに会える
施設に入ると、正面で入場者を出迎えるのが、高さ約5.6mの実物大ガンダム胸像(写真3)。原寸大ガンダムといえば、2009年に東京・お台場、2010年に静岡で公開された18mの全身立像が、2012年4月に東京に再び帰ってきたことが話題になった。一方、バンダイミュージアムの実物大像は胸像(劇中でいう"Aパーツ")で、全身立像よりも、近い場所からガンダムの顔を見たり、写真を撮ったりできる特徴がある。アニメで育ったガンダム世代には何とも懐かしく、テレビアニメ第1話『ガンダム大地に立つ!!』でガンダムが上半身を持ち上げた、あの有名なシーンがありありとよみがえってくる。
このガンダム像にはセンサーが埋め込まれ、近寄ると頭部を左右に振る。写真撮影も自由で、用意してあるファン作成の"ザクバズーカ"を手に記念撮影もできる。
ほかにも、同施設では、江戸時代から現代までのおもちゃを展示。ウルトラマン、仮面ライダー、マジンガーZ、メタルヒーロー、スーパー戦隊など、往年のヒーローの、ソフビ人形や超合金、巨大フィギュア「ジャンボマシンダー」が数多く並ぶ。「韓国や中国、米国、英国など海外からの来館者も増えています」(所長代理の鈴木涼佳氏)と、ファン層は今や国際的。毎月最終日曜日にはコスプレイベントを開催中だ。
【富士急ハイランド EVANGELION:WORLD/ガンダムクライシス】
東京・新宿から高速バスで約100分。山梨県富士吉田市の「富士急ハイランド」は、2大人気キャラクターの"実物大"像に一度に出合えることで、ファンによく知られている。今秋新作も公開する『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』の世界観が楽しめるパビリオン「EVANGELION:WORLD」と、『機動戦士ガンダム』の体験型アトラクション「ガンダムクライシス」だ。
2大スターキャラの実物大に遭遇できる貴重なスポット
「EVANGELION:WORLD」(写真4)では、"汎用人型決戦兵器人造人間エヴァンゲリオン初号機"(全長80m)の胸から上の部分を実物大で再現した像をはじめ、搭乗&撮影可能なエヴァの操縦席「エントリープラグ」、劇場版で登場した"エヴァンゲリオン2号機獣化第2形態"の実物大の頭部を含む場面の再現などを展示。
同施設の責任者である河野雄介氏によると、来場するファン層には女性が多く見受けられるという。「コスプレをして来られる方も目立ちます。アジア圏の方に加え、ヨーロッパからのお客様も多く見受けられます」。オリジナル商品を含め、エヴァグッズが400~500アイテムも売られており、一度に数万円の"おとな買い"をするファンもいるという。「今後、秋公開予定の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』に合わせ、何かしらのイベントをできたらと考えている」(河野氏)そうで、さらに盛り上がりそうだ。
一方、「ガンダムクライシス」は、出動の準備を整えて横たわるガンダムを起動させるため、施設内のチェックポイントを探し出し、その数を競う、体験型アトラクション。過去に"等身大ガンダム"は各地で公開されているが、当地の特徴は、ガンダムのボディーの各部に、実際に触れること。ゲームが成功すると、ガンダム内のコックピットに搭乗して写真も撮ってもらえる。「成功率は数%ですので、リピーターも多いです。最近では中国ほかアジアからのお客様も増えています」(富士急ハイランド企画部 部長の早川優氏)。"実物大""乗れる""触れる"というリアリティーで、国境を越えてファンを呼び込んでいる成功例といえるだろう。
(ライター 安保有希子、日経エンタテインメント! 白倉資大)
[日経エンタテイメント!2012年4月号の記事を基に再構成]
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