味の好みを決める4つの「おいしさ」とは働きもののカラダの仕組み 北村昌陽

おいしいものを食べると幸せになります。ホッとしたり、元気が出たり…。でも、おいしすぎて困ることもあります。止めたいのに手が止まらなくなることも。そもそも「おいしさ」の基準は人それぞれ。どうやって決まるのでしょう? これが今回のテーマです。

だれにでも食べ物の好みがあるものだ。ある人が「おいしい!」と思うものを、ほかの人があまり好きじゃないのは、よくあること。食の嗜好という性質は、個人差がとても大きい。

ただ、考えてみるとこれは不思議な現象だ。だってほかの動物では、そこまで食の好みがブレないから。笹が嫌いなパンダなんて聞いたことないですよね? でも人間では、同じ甘いものでも好き嫌いが分かれる。

人間の食べ物の嗜好は、ほかの動物とは違うメカニズムで決まるのだろうか? そんな疑問を、京都大学大学院農学研究科教授の伏木亨さんに尋ねてみた。味覚と嗜好を研究する「おいしさの科学」の専門家だ。

「人間の食嗜好には、“生きる”という動物共通の目的だけではなく、“楽しむ”という側面があります。これが人生を豊かにする一方で、煩悩のように私たちを悩ませてもいるのです」。

へぇ~面白い話になりそうだ。伏木さんのガイドで「おいしさのしくみ」をみていこう。

本能的なおいしさ、人間特有のおいしさ

伏木さんによると、人間が「おいしい」と感じるしくみには4つのタイプがあるという。

(1)「生理的おいしさ」。これは、必要な栄養素を含む味をおいしいと感じるもので、すべての動物がこの性質を持つ。「例えば汗をかいたら塩味が欲しくなるような性質です」。脳の働きでいえば、視床下部のような本能と直結する部位の作用と考えられる。

これに対して、人間の大脳皮質が作り出す、ヒト特有のおいしさもある。それが(2)と(3)。

(2)は「文化的なおいしさ」。幼いころによく食べた味を好ましく感じるもので、海外滞在中に食べる和食がやたらおいしいと思うのが典型例。いわばお袋の味を好む性質だ。

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