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劇的に進化 体験者が語る乳がん検査・治療のいま

2014/6/11

16人に一人が罹患するという乳がんは、女性にとって身近な病気。しかも発症のピークは40代~50代で、社会でも働き盛り、家でも重要な役割を担う年代だけに、影響は深刻です。患者数は増加傾向ですが、医療事情は検査、診断、治療、患者のQOLサポート……あらゆる場面で飛躍的に進化を遂げています。そんななかで、「乳がんにならないための選択」を公表した、ハリウッド女優の行動にも注目が集まりました。医療が大きく変わるなかで、患者自身が正しい知識を持ち、積極的に治療に参加することを求められています。乳がん体験者で美容ジャーナリストの山崎多賀子さんと、聖路加国際病院ブレストセンター長の山内英子さんが乳がんのいまについて語りました。

山崎 早いもので私も乳がん発覚から8年余りが過ぎました。その間、乳がんを取り巻く環境は劇的に進化していますね。新薬もどんどん出て。

山内英子さん 聖路加国際病院(東京都中央区)ブレストセンター長/乳腺外科部長。順天堂大学医学部卒業後、聖路加国際病院外科医員、ハーバード大学などで乳がんの研究、ハワイ大学などで臨床経験を経て2010年より現職。家族性・遺伝性乳がんの啓発活動に力を注ぐ (撮影:小山志麻)

山内 乳がん研究は今や日進月歩。その大きな要因のひとつに、がん細胞の遺伝子レベルでの解析技術が飛躍的に進んだことがあります。見た目でしか判断できなかったがん細胞が、遺伝子を調べることで詳細な性格まで分かり、効率的な治療の選択ができるようになっています。ますます個別化治療が進んでいくし、たとえ再発しても、打つ手はたくさんあります。

山崎 そうなれば、自分にとって本当に必要な治療を受け、過剰な負担を体にかけなくてもすむようになりますね。

山内 自費ですが、最先端の遺伝子検査法(「オンコタイプDX」や「マンマプリント」など、がん細胞の特性を遺伝子レベルで解析する検査法)も登場し、がん細胞の性格をさらに細かく解析することができるようになりました。また、もともと持って生まれた遺伝子の中に、乳がんが発症しやすい変異遺伝子があることも分かってきています。

山崎多賀子さん 美容ジャーナリスト。NPO法人CNJ認定乳がん体験者コーディネーター。乳がん経験から患者が自分らしくいるための、「キレイを支える」活動を行う。聖路加国際病院内支援企画のビュ ーティリングでメイクレッスンを担当。仲間と「マンマチアー」を立ち上げ定期セミナーを開催

山崎 代表的なのが遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)ですね。昨年、アンジェリーナ・ジョリーさんが両乳房を予防的に切除したと公表したことはセンセーショナルでした。日本ではまだ遠い話と思っていたことが一気に身近に迫った感じがして、ドギマギしました。15年間、米国で乳がんの研究、診療をしてきた先生は、世間やマスコミの反応をどう感じましたか?

山内 私がいたフロリダでは、患者さんが普通に遺伝子検査を受け、希望があれば私も予防的切除を行っていたので、正直、なんでこんなに大騒ぎをするのだろうと。

山崎 たとえ可能性が高くても、病気ではない乳房を切除するなんて「米国人は過激だ」と思った日本人は多いです。

山内 文化や思想の違いという方もいますが、この問題は人種を超えた一人ひとりの考えが大切だと思うんです。HBOCと診断された方は将来的に乳がんや卵巣がんになる確率が他に比べてはるかに高い。乳がんや卵巣がんで苦しんだ末に亡くなったお母様や叔母様を見てきたアンジェリーナさんは、子を持つ母親として、がんにならないようにする選択をした。これは、いい、悪いという尺度で判断する問題ではないと思います。日本でも、がんになりたくない、片方が乳がんになって、もう片方をがんにしたくないから取りたいと考える方はいる。その思いを尊重し、選択肢を支える医療体制を準備しておくことは、非常に大切だと思っています。

~発症リスクを把握するには家族性・遺伝性乳がんのチェックを~

表1 欧米の研究では、BRCA1か2遺伝子のいずれかに変異がある場合の乳がんの発症リスクは、そうでない場合と比べ、50歳までで16~25倍、70歳までで8~12倍になるというデータが。両乳房での発症や再発率が高いことも分かっている (データ:NEJM;357,2:154-62,2007)

乳がんの約8割は家族歴に関係なく発症するが、血縁者に乳がん、卵巣がんの患者が複数いる場合、乳がんになりやすい体質を受け継いでいることがある。これを「家族性」乳がんという。また、特定の遺伝子に変異がある場合は「遺伝性」乳がんという。

遺伝性乳がんの場合、BRCA1とBRCA2という2種類の遺伝子の両方またはどちらかに変異がある。それにより発症リスクは25 倍に跳ね上がるというデータも(表1)。

不安な場合は、「遺伝子カウンセリング」をまず受けてみるといい。対策や選択肢などを助言してもらえる(ほとんどの場合1時間3000~1万円)。相談先はHBOCのサイト(http://hbocnet.com/)で検索できる。慎重に検討したうえで正確に調べたいなら、血液による「遺伝子検査」を。費用は保険適用外のため20万~30万円程度だ。

アンジェリーナ・ジョリー
アンジェリーナ・ジョリーが予防的乳房切除を公表
遺伝子検査で遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)で、将来87%の確率で乳がんが発症すると医師から告げられたハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーは、発症を防ぐために両側の乳房を全切除し再建したことを世間に公表。日本でも大きな反響を呼んだ。

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