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伸び悩む女子選手に壁を破らせるには 競泳・平井コーチ 名将に学ぶ「女子パワー」の引き出し方

2013/6/3

伸び悩んでいる女子選手に限界を超えさせるには、過去の失敗経験や思い込みによる不安を払拭させなければいけない。何よりもコーチが相手の目線に合わせて向き合うことが大事だ。ロンドン五輪で戦後最高の11のメダルを獲得した日本競泳チーム。その立役者となった日本代表ヘッドコーチの平井伯昌氏から、女子力を引き出す方法を学ぶ。

「自分は寺川綾や加藤ゆかのコーチだと自信を持って言えるようになるまで、2年かかりました。最初は、北島康介や中村礼子を育てたコーチの目線のまま、彼女たちに接していた。そこから一歩近づけるまで、試行錯誤の連続でした」

競泳日本代表ヘッドコーチの平井伯昌はそう語る。平泳ぎの北島をアテネ・北京五輪2大会2種目連覇、そして背泳の中村も2大会連続の銅メダルに導いた名伯楽。東京スイミングセンターを拠点とするチーム平井は大きな栄光をつかんだが、北京五輪後、北島は練習の拠点を米国に移し、中村は引退。メダリストたちがそれぞれ新しい道を歩み始める中、平井もまた競泳日本代表ヘッドコーチに就任し、ロンドン五輪に向けて始動していた。

競泳日本代表ヘッドコーチの平井伯昌氏(c)小川拓洋

新生チーム平井の主なメンバーは小学6年の時から指導する自由形日本記録保持者の上田春佳、2009年1月に自らチーム平井の門を叩いたアテネ五輪背泳ぎ8位の寺川、平井が声をかけて練習を見ることになったバタフライ北京五輪代表の加藤。種目も年齢も違う女性3人を教えることは、平井にとっても新たな挑戦だった。

五輪2大会連覇という偉業を考えれば、この“3人娘”たちも簡単に指導できるだろう…。そんな予想は甘かった。特に寺川と加藤という実績も経験もある社会人は、中学生の頃から教えてきた北島や、アテネ五輪を翌年に控えて、切羽詰まって平井の元に来た大学生の中村への指導とは違う難しさがあった。北島や中村には「これをやりなさい」と指示すれば、その通りに一生懸命に取り組んだ。

だが、寺川や加藤は、平井が指示をしても「それはやりたくありません」「できません」と返してくる。そこでやり取りはおしまい。

「今までやってきた練習ができない。頭の中が混乱しました。やっていられないというのが正直な感想。どうせ私がアドバイスしても嫌な顔をして聞かないだろう…。そんなふうに思うようになった」

寺川と加藤は決してやる気がないわけでなく、抵抗しているわけでもなかった。

「寺川は同じ種目に礼子や伊藤華英という強い選手がいて、日本のトップになれない辛い時間が長かった。その分、失敗の引き出しが多く、傷が深い。だからこの練習はダメ、それはムダなどと自分が納得できないものには挑戦しない。加藤は競技を継続するか否か迷っていたぐらいで、何が何でも五輪でメダルという必死さはなかった。今までの練習で五輪に出場はできたのだから、練習やフォームを大きく変える必要はないと考えていたのでしょう」。実績や経験があるからこそ、今までの自分のやり方や思い込みがストッパーになり、平井の指示を素直に受け入れられなかったのだ。

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