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おとなの数学

2012/8/28

おとなの数学

「無駄が全くない訂正符号」とは

これは、このような0または1から成る7文字を並べた数字の列に備わる、次のような特殊な性質を応用したものである。このような数字の羅列は全部で128種類ある(これは0か1、すなわち2パターンの数字が7文字並ぶのであるから、2を7乗すれば求められる)が、そのどれを選んでも、上記の「あ」から「た」までのどれかを表す数字の列の1つだけと、必ず1文字以内の違いで一致するのである。一致しない列は存在しないし、2つ以上と一致する列もない。「無駄が全く無い誤り訂正符号である」といえる珍しい性質である。このような符号を専門用語で「完全符号」という。

誤り訂正符号はとても便利な仕組みだが、やり取りするデータ量がいたずらに増えてしまっては元も子もない。なるべくデータ量を抑えながら、誤り訂正もしたい。この場合、この「完全符号」は役に立つのである。先に説明したA国の電話番号システムはこれとは反対に、無駄がある訂正符号だ。誤りの訂正はできるが、正しい電話番号と関係のない遊んでいる電話番号がたくさんできてしまうからである。

一昔前の火星探査機マリナー号でも、7文字もの訂正能力をもつ符号を使っていた。宇宙では太陽の黒点などによる雑音が発生するので、遠い宇宙から地球への情報伝達では、高い訂正能力の符号が必要だからである。

CDやDVDなど身の回りにある情報機器でもさらに精緻な誤り訂正符号の仕組みを取り入れている。程度にもよるが、小さな傷が付いても正しく視聴できるのはこのためである。映像や音楽を楽しむ際、こうした情報機器に数学の知識が生かされていることを少しでも思い出してくれれば幸いである。

芳沢光雄(よしざわ・みつお) 1953年、東京生まれ。東京理科大学教授を経て現在、桜美林大学リベラルアーツ学群教授。理学博士。数学教育に力を注ぐ。主な著書に「数学的思考法」「ぼくも算数が苦手だった」「新体系・高校数学の教科書」「新体系・中学数学の教科書」。59歳。
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