「おお、ようこそお越し下さいました。あなた様のお姿を拝見して従業員一同、感涙にむせんでおります!」

心を込めるっていうのはこういう大げさなのじゃなくて、人に接するにあたっての配慮。言うなれば人格の尊重です。大げさになっちゃったけど、そういうことです。人を人として正当に扱うことです。

最近は、他人を物のように扱う風潮が強まっていると感じておるわけですよ。同時に、逆に自分が物として扱われるパターンも覚悟している風情が実に気になります。しかし、ここらへんは積もる話がそれこそ山のようにあるので、別の回に改めますね。

 店員も驚く 「挨拶返し」

ここで皆さんに質問です。知っている誰かから挨拶をされたら、挨拶を返しますか? それとも挨拶されても無視しますか? 私は、挨拶を返すタイプです。ほとんどの人がそう答えるでしょう。挨拶を無視するなんて、相当に嫌な奴のはずです。

では少し設定を変えて。ここはコンビニエンスストアです。あなたが店内に入ると、「いらっしゃいませこんばんはー」と、店員さんが向こう向きに作業をしながら言葉を発しました。

形式的には挨拶ですが、単にマニュアルに沿った発声なので気持ちがこもっているとは思えません。

さあ、ここで普段の皆さんはどうしてますか? 無視、ですよね、きっと。たいていはそうです。

でもそこで私は悔しいんです。マニュアルのために、挨拶がないがしろにされつつあるのですよ。挨拶の劣化です。コミュニケーション不全の小さな糸口です。

私はバカなので挨拶し返します。「こんばんは!」

時にはもんのすごくビックリする店員さんがいます。まあ、驚くくらいなら挨拶すんなッて!

立川談笑(たてかわ・だんしょう) 1965年、東京都江東区で生まれる。海城高校から早稲田大学法学部へ。高校時代は柔道で体を鍛え、大学時代は六法全書で知識を蓄える。予備校講師など様々なアルバイトを経験し、93年に立川談志に入門。立川談生を名乗る。テレビの情報番組でリポーターを務めながら芸を磨く。96年に二つ目昇進、2003年に談笑に改名。05年に真打ち昇進。古典落語をもとにブラックジョークを交えた改作に定評がある。十八番は「居酒屋」を改作した「イラサリマケー」など。国立演芸場(東京)などで毎月独演会を開くほか、吉笑(二つ目)、笑二(同)、笑笑(前座)の弟子3人とともに武蔵野公会堂(同)で一門会も開催。フジテレビ「噺家が闇夜にコソコソ」に出演中。
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