最初から量を狙うな シニア向け商品、ヒットの法則SUDI室長 今井啓子氏

シニアによるシニアのための商品開発の提案が本になった。「シニアの健康で快適な暮らし」をテーマに研究を続けているボランティア研究団体「SUDI(湘南くらしのユニバーサルデザイン商品研究室、スーディー)」が今年6月に出した「オヤノタメ商品ヒットの法則」(集英社)だ。実は、これまでのいわゆるシニア向け商品は、当のシニアに支持されないケースが多かったのだが、数少ない成功事例を集めて、ヒットの秘密を解き明かした。シニアが抱える不安や不便とは何か、その解消に必要なのはどんなものなのか。SUDI室長の今井啓子さんに聞いた。

団塊シニアの未来、良いイメージ浮かばず

――「オヤノタメ商品ヒットの法則」が注目を集めていますが、なぜこのような本を著したのですか。

いまい・けいこ SUDI(湘南くらしのユニバーサルデザイン商品研究室)室長。NPO「ユニバーサルファッション協会」名誉会長。「ハイファッション」(文化出版局)の編集者を経て、高島屋商品本部でファッションコーディネーターとして活躍。ニューヨーク大学大学院でウェルネス(健康学)を学んだ後、資生堂で、ザ・ギンザ取締役、企業文化部ファッションディレクター等を務める。2001年SUDIを設立。03年ファッション界で最も権威のある「毎日ファッション大賞鯨岡阿美子賞」を受賞。著書に「ファッションのチカラ」(ちくまプリマー新書)などがある。

今井 SUDIはボランティアで集まったグループなんですけれども、10年ぐらい人間の体をよく考えて作った商品を研究してきました。それをまとめて、提案したいというのが、まず、ありました。

それから、10年間、研究をしているうちに団塊の世代の人たちが年をとってきて65歳に突入しました。しかし、彼らの未来を考えたときに、よいイメージが浮かんでこなかったのです。企業は、この人たちはお金をもっているから使わせてしまえということで、商品を出しているようで、商品づくりが間違っていると思いました。それで、団塊シニアが毎日生活するうえで必要な商品とはどういうものかということをみんなで話し合い、本にまとめてみようということになりました。

成功している事例は少ない

――団塊の世代が一斉に定年退職して消費が拡大するのではないかという期待が高まりましたが、お金がある人にお金を使わせようというだけの商品、サービスが多かったためか、団塊シニアはほとんど反応しませんでした。

今井 成功している事例が少ないんです。これまでと同じ、大量につくれば儲かるという考え方なんです。ところが、そういう考え方でものをつくっても心に響かない。この人たちはどういう状況にあるのだろうということをいつも研究していないとだめだということが分かったんです。タイトルは「オヤノタメ商品」にしました。つまり、子供が親を考えるときの気持ちでシニア向けの商品をつくることが大事なのです。

――商品開発の心構えが間違っていたのですね。

今井 私は商品開発畑が長いんですけれども、高度経済成長のころは、いかにたくさんつくり、たくさん買っていただくかが商品づくりの基本でした。ところが状況が一変して同じシステムでものをつくっても売れるはずがないのに、企業の多くがそれに気づいていないのが恐ろしいと思いました。

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団塊世代はライフスタイルなどに独自のこだわり