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1人で起業、人気の焼き菓子ネットショップを続けるコツ

自作スイーツをネットで売るには(2)

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NIKKEI STYLE

 自分が作ったお菓子やパンをネットショップなどで売ってみたいと思ったことのある人は少なくないのでは? 開業資金はないけれど、独立開業したい。まずは週末起業からチャレンジしたい。そう考える人にとって、なるべく負担のかからない方法で起業する一手段がネットショップです。本シリーズでは、『スイーツをネットショップで売りたいあなたへ:全国12店のオーナーが明かす、小さなお店で成功するための店づくり・商品・売り方』(柴田書店)の著者・籏智優子さんが女性向けの事例を紹介します。

今回紹介するのは、OLから転身して1人で開業、以来、オリジナリティーのある焼き菓子で常連客の支持を集めてきた「クー・ド・ラパン」。ところが婚礼ギフトサイトへの広告出稿を機に想定外の注文が激増し、ついには身体を壊す事態に。無理せず、ひとりでの営業を続けていくため、オーナーはある決断をした。

【クー・ド・ラパン】メッセージクッキーが人気。注文ルール明文化し、無理せず営業

・オーナーが1人で運営

・オーダーメードクッキーの納期は受注から10日後

・それでも、月商20万円

クー・ド・ラパンの強さの理由

1 オーダーメードには明確なルールが必須
クッキーに入れる文字数を制限。また急ぎの注文は受けずに無理なく営業

2 受注の際の注意点を明記
納期やデザインに関する注文時の注意点を明記し、不明点をなくす

3 予約注文でロスを防ぐ
季節限定の焼き菓子も予約注文のみで受注し、計画生産

4 イベント用に喜ばれる予備の1枚
クッキーには必ずスペアを添えて、万一の破損にそなえる

5 外箱の工夫で運び手にも注意を喚起
小脇に抱えないよう、内箱を手提げ袋や持ち手付きの箱で梱包

お菓子ブログの好評ぶりに開業を決意

大阪市・天王寺区にアトリエを構える「クー・ド・ラパン」は、動物や草花がモチーフのクッキーと、季節感あふれるマフィンなどの焼き菓子が人気のネットショップだ。

オーナーはOLから転身した金田裕美子さん。金田さんは、お菓子づくりを仕事にしたいと27歳で製菓専門学校に入学。卒業後は大阪府内の洋菓子店に入社が決まっていたが、1995年1月に起きた阪神大震災の影響で内定が取り消されてしまった。

「他を探そうにも、神戸の菓子職人が大勢移ってきた大阪に、未経験者を雇う店はなく、OLに戻るしかありませんでした」

その後は趣味でお菓子作りを続けた。2004年に自作スイーツを掲載するブログを開設すると、予想以上のアクセスを集めた。ブログの「キリ番」での来訪者に、お菓子を贈ると、味を絶賛された。

「お菓子の仕事への思いがよみがえりました。でも、実店舗を開くのはハードルが高い。そこで小資本で開業できるネットショップを開こうと決めました」

住み慣れた天王寺区内を中心に物件探しをはじめ、築40年のマンションの1階にある9坪の店舗物件を契約した。コンクリートの床にクッションフロアを敷いて壁紙を貼り替える改装工事を実施し、ガスオーブン、冷蔵庫、シンク、作業台などを購入。210万円かけて、製造態勢をととのえた。

ネットショップ運営サービスは、ショッピングカート機能を格安で利用でき、初心者でも簡単にデザインをカスタマイズできる「カラーミーショップ」を選択。自身で撮影した商品写真をアップして、ホームページを構築した。

開業5年目、婚礼サイトへの出稿で注文が激増

2006年11月、クッキー、マフィン、バターケーキなどおよそ10品の焼き菓子をそろえ、ネットショップをオープン。

「それから数年は月商10~20万円台の時期が続きましたが、実家住まいで貯金もあったので、『赤字でさえなければいい』と思いました。常連さんにおいしかったと喜んでもらえるのがうれしく、毎日が充実していました」

状況が一変したのは、2011年秋のことだった。2008年に考案した「メッセージクッキー」の受注量が、ある日を境に急増したのだ。

同店のメッセージクッキーは、ココア風味の茶色い丸型クッキーに、花や動物型のミニクッキーを重ねたものがベース。ここに、お客の希望の文字をアイシングで絞る。見た目のかわいらしさ、さくさくの食感、添加物なしの安全性が女性客に評価され、卒園式などのイベント菓子としてクチコミで評判が広がりはじめていた。引き菓子の受注も増えるかもと考えた金田さんは、あるウエディングギフトのサイトに、半年に一度の割合で広告を出稿。それが嵐のような忙しさのはじまりだった。

「単一のベースクッキーを注文数ぶん焼き、『Thank You』などの短い言葉か、新郎新婦の名前を書き込む、といったオーダーを予想していました。ところが『ベースのクッキーは全種類3枚ずつ』『メッセージは、ありがとうを50ヵ国語で』『招待客全員の名前を1枚ずつ書いて』といった想定外のオーダーが相次ぎました」

クッキーは、大きさや形などで焼成時間に差があるため、ベースのクッキーの種類が増えるほど製造の手間と時間は増す。またアイシングの文字は一度紙の上で下書きをする。メッセージや名前の異なるクッキーを50枚つくるとなれば、下書きと本書きで100回書かざるを得ない。

「自分の首を絞めることになるとわかっても、『お客さまのためにできるだけのことをしたい』『仕事を断り、受注がなくなるのが怖い』と注文を受け続けました」

元気に店を続けるための"注文ルール"

翌2012年は、正月早々深夜まで作業する日々が続いた。2月には、大好きだったはずのクッキーを焼くにおいが耐えられなくなり、3月、ついにけんしょう炎で指が動かなくなった。金田さんはすべての受注を停止し、一時閉店。これまでの働き方を改め、無理のない受注方法を編み出すことにした。

まず、20近くあったベースのクッキーの種類を15に削減した。さらにお客ひとりが注文するベースのクッキーが多品種小ロットにならないよう、1種類あたりの注文枚数に応じて価格を変えることにした。また、メッセージは一度のオーダーにつき3種類、書き込める文字数は30字までに制限。納期はそれまでの1週間から10日にのばし、急ぎの注文は一切受けないことにした。

加えて問い合わせの際に、希望枚数、到着希望日、メッセージの文言などに記載もれのあるお客から受注しないことにした。「記載もれは迷いの現れ。心に迷いのある新婦は、一生に一度のことだからと、製造枚数やメッセージのリクエストをのちのちエスカレートさせがち」と経験上学んだためだ。

「わがままな注文の受け方だという自覚はあります。でも店の決めごとを尊重してくださる方から注文をお受けすることをみずからに課し、自分自身を守らない限りは、独力でメッセージクッキーのオーダー生産を続けるのは無理だと痛感しました」

午前に製造、午後に梱包のペースで無理なく営業

けんしょう炎が癒えるまでの約1ヵ月間の休業を経て、2012年4月に営業を再開。注文時の注意点をホームページに明記すると、納期やデザインなどに関する初歩的な問い合わせが減り、事務作業の負担も軽減された。

焼き菓子も、アイテム数を大幅に絞り込んだ。現在の主力商品は焼き菓子の詰め合わせ。レモン、チェリー、カボチャなど月替わりの旬の素材をテーマに、7、8種ほどのお菓子を詰め合わせたものだ。発売期間は2週間で、注文が予定数に達し次第締め切る。

「メルマガで知らせると常連さんが反応してくれ、すぐに注文がいっぱいになります。この売り方なら製造したぶんがすべて売れ、ロスも出ません。そこでお客さまへの感謝を示すため、本来付けたい価格から2割程度引いた価格に設定しています」

現在の受注は月におよそ40件で、売り上げは20万円ほど。受注は以前より減ったが、「無理な注文がなくなってストレスが解消し、お菓子を焼く楽しさを取り戻せました」と金田さんは笑顔を見せる。

アトリエへの出勤は、毎朝8時。製造は午前に終え、午後は梱包作業に集中するのが、金田さんの日課だ。

梱包の特徴は、第一に隙間をつくらないこと。形が立体的で生地もさくさくとやわらかいメッセージクッキーは、厚手のクッキー袋に個別包装し、1枚ずつ気泡緩衝材でくるむ。これを数枚ごとに紙袋のように折ったボーカスペーパーに立てて入れ、内箱に入れる。さらに、ボーカスペーパーや緩衝材で隙間を徹底的に埋める。

また、スペアクッキーのサービスも印象的だ。製造中に破損するリスクも踏まえ、金田さんはいつも注文数より数枚多くクッキーを焼く。この一部をスペアとして内箱に入れている。

「緩衝材代わりにもなりますし、万一配送中に割れたりしても、スペアがあれば安心。おまけとしても喜んでもらえます」

愛らしいクッキーの世界観を梱包にも表現

パッケージのかわいらしさも金田さんが追求している点だ。商品を包んだ気泡緩衝材を止めるのは、四つ葉のクローバーのシール。ボーカスペーパーの目立つ部分にスタンプを押し、納品書は黄色い紙に手書き風の書体で印刷。内箱は、中身がくまのクッキーならくまの柄、うさぎならうさぎ柄のクラフトテープでとじる。ここまでこだわるのは、商品と梱包材の世界観を一致させるため。このこだわりに共感し、リピーターとなるお客も多い。

また、商品が一方にかたよると破損事故が起きかねないため、金田さんは段ボール箱を傾けずに水平に運んでもらう工夫もこらしている。ドライバーが小脇に抱えないよう、内箱を外箱ではなく手提げ袋に入れたり、外箱に持ち手となるPPバンドを巻いたりといった具合だ。

まめなメール連絡も大事にしているポイントという。受注時には、注文個数や到着日時を明記した「注文確定メール」、商品発送後に「発送済みメール」をみずから文章を打ち込んで送るほか、その間に「製造準備開始メール」と「発送準備完了メール」も送信する。

「半年前から予約を受けるメッセージクッキーは、注文から納品までに時間があきがち。『製造準備開始メール』には、『ご注文を確かに承っています』とお客さまを安心させ、『発送準備完了メール』には『確実にお受け取りを』と、念押しする意図があります」

ていねいに作り、確実に届けたい

実店舗のオープンは、いまのところ考えていないという。

「私が好きでよく使う天然色素は、光で退色しやすいため、クッキーを店頭に陳列するのは難しいと思います。また焼き菓子は『レモンづくし』『チェリーづくし』といったマニアックな商品が大半。全国のお客さまが対象となるネット通販なら売れても、実店舗では売れにくいでしょう」

実店舗を開くために、商品構成を売れ筋のものに変える。それは自分がしたいことではないと金田さんは言う。拡大だけが正解ではない。たとえ量は少なくても、愛着の持てる商品をていねいにつくり、確実に届ける。それを真摯に貫くことも、ネットショップオーナーのひとつの見識といえるだろう。

【ネットショップ 5つのQ&A】

Q ネットショップのメリット、デメリットは何ですか?

A  この夏は「季節の焼き菓子」として、黒コショウやシナモンなど、スパイスをきかせた商品を販売しました。ネットショップの長所は、全国のお客さまが対象となるため、こうしたマニアックなお菓子でも売れることです。デメリットは、お客さまが商品にどのくらい満足してくださったのかが、なかなかわからないことです。

Q これまでに経験したトラブルは何ですか?

A どんなにていねいに商品をつくり、梱包しても、配送中に破損してしまったら、おじゃん。そのため宅配ドライバーには、「気を付けて扱うようお願いします」と一声かけ、注意を喚起するように心がけてきました。ところがある日、某社のドライバーから「クッキーなんて割れるに決まっている。そんな面倒くさい荷物出さんといて」といわれてしまいました。

Q その後、宅配業者にどう対応したのですか?

A まずは営業所に連絡し、事情を説明しました。担当者は平謝りでしたが、一時は取引の打ち切りも考えました。ただ、「ここなら絶対に安心」というパーフェクトな宅配業者は、残念ながら存在しません。担当ドライバーを交代してもらうと同時に、荷物を水平に持ってくれるように手提げ袋やPPバンドを活用するなど、こちらができる破損防止の工夫を怠らないようにしています。

Q この仕事で経験した印象に残るエピソードは?

A 結婚式の引き菓子として、クー・ド・ラパンのクッキーをご利用くださった方が、今度は出産の内祝いとしてクッキーをリピート注文してくださったことです。お礼の手紙とともに送られてきた結婚式や赤ちゃんの写真を見るたび、幸せな気持ちになります。また先日「メール連絡がまめで、お店で買うように安心して買い物できました」とお客さまからいっていただき、感激しました。

Q 今後、チャレンジしたい分野は何ですか?

A 天然着色料のバリエーションを広げることです。先日、カボチャと紫イモのパウダーを見つけ、生地に混ぜて焼いても色があせずに色味が保たれるか実験してみたのです。賞味期限内は色が持つことが確認できたので、早速新商品に使いました。パウダーは、デパ地下で偶然見つけたものです。製菓材料の売り場以外もこまめにのぞき、今後も安全な天然着色料を増やしていきたいです。

~金田さんの1日のスケジュール~

6:30 起床
7:00 朝食
8:00 出勤・メールチェック
8:15 お菓子の製造
12:00 昼食
13:00 梱包・発送
15:00 メールチェック・返信
16:00 仕込み・翌日の準備
19:00 帰宅
19:30 夕食
23:00 就寝

製造工房は、大阪市営地下鉄・四天王寺前夕陽ヶ丘駅から徒歩15分のマンション1階。10社以上の不動産業者に仲介を依頼したものの、女性ひとりでの起業を警戒する業者が大半で、物件探しは難航。半年後にようやくこの物件を見つけ、契約した。以前は店舗として使われており、開口部はシャッターと引き戸だったが、店頭販売を行う予定がなかったため、壁とドアにつくり直した。月商は約20万円。

籏智優子(はたちゆうこ)
 明治学院大学卒業後、雑誌編集者を経てフリーランスに。著書に「カフェをはじめてみませんか?」(柴田書店)、「知っておきたい!働く時のルールと権利」(ぺりかん社)など。最新刊「スイーツをネットショップで売りたいあなたへ 全国12店のオーナーが明かす、小さなお店で成功するための店づくり・商品・売り方」(いずれも柴田書店)

[nikkei WOMAN Online2013年6月11日掲載]

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