2013/9/13

しかし私には、単なる健康診断で来院してきた女性の人生の選択肢に口を挟む資格はない。健康状態を確認し、お酒やタバコなどの悪影響について触れ、PRENATAL VITAMINS(妊婦用ビタミン剤。葉酸などを含み、妊娠中の女性や妊娠を計画中の女性が服用する)を処方するのが、私の仕事なのである…。

さて、冒頭で紹介した女性から、数カ月後に「妊娠しました!」と弾んだ声で電話がかかってきた。やはり精子バンクが成功したのかと、さりげなく聞いてみると、2カ月ほど付き合っている人がいて、性病検査の結果を見せ合ってから、避妊をせずに性交をしていたという。彼も、彼女の妊娠したいという望みを知っていて、協力してくれたらしい。

つまり、精子バンクは利用せずに済んだわけだ。「今のところ自分も彼も結婚するつもりはない」と彼女は言うものの、親権をシェアすることになるかもしれないし、養育費の支払い義務も発生するから、まさに一生の付き合いになる。その男性が、良い人であることと、彼女と生まれてくる赤ちゃんの、健康と幸せを願うばかりである。

緒方さやか(おがた・さやか)
 婦人科・成人科ナースプラクティショナー(NP)。2006年米イェール看護大学院婦人科・成人科ナースプラクティショナー学科卒。「チーム医療維新」管理人。プライマリケアを担うナースプラクティショナーとして、現在、マンハッタンの外来クリニックで診療にあたる。米ニューヨーク在住。

[日経メディカルオンライン 2011年12月1日付記事を基に再構成]