2012/12/4

ダイレクトメッセージ

アウトバーンは速度が無制限の区間があるということばかりが強調されます。でも、無制限ということは、重要な判断がドライバー自身に委ねられているということです。「あなたのクルマの性能と、運転の技量に応じて、安全に走行できる速度を自分自身で考えなさい」と。

これに対し、日本の高速道路では最高でも時速100キロまでしか出せないことになっています。現代のカローラであれば、よほどおかしな運転をしない限り、この程度のスピードで「おしりがふらつき不安になる」ことはありません。日本のドライバーがクルマの限界や運転の力量を知る機会が少ないのは無理からぬところがありますね。

そこに様々な「運転支援技術」も加わると、あまり考えずに運転してしまうマイナス面が強まりかねない。重い乗り物が高速で移動している実態は変わらないんですが…。

ドイツのニュルブルクリンクが有名ですが、欧州には一般ドライバーが比較的安い料金でクルマを飛ばして限界を試すこともできるサーキットがあちこちにあります。

auto tips 世界のサーキット 安価で誰でも利用できるドイツのニュルブルクリンク以外にも、欧州には手軽に走行できるサーキットが多くある。ドイツのホッケンハイムリンクは入場料3ユーロを払えば、15分間12ユーロで利用できる。英シルバーストーンサーキットやベルギーのスパ・フランコルシャンサーキットでも一般の人が使える日を設けている。
BBCの人気番組「Top Gear」から。日本ではBSフジで放送中

英公共放送BBCは名物テレビ番組の「トップギア(Top Gear)」を放送しています。新型車の性能比較をしたり、改造車で競争させたり、日本では考えられない、かなりめちゃくちゃなこともやる番組ですが、老若男女問わず多くの視聴者が楽しむ長寿番組になっています。

環境や歴史の違いといったらそれまでですが、欧州のドライバーは「クルマをどう運転すると、どういう状態になるか」ということに、日本人以上に関心が高いように感じました。そうしたことを理解したうえで、クルマの運転を楽しみたいというニーズがあるのだと思います。

フェイスブックに寄せられたご意見です。

○クルマの性能が上がってそれを過信して事故が起こらないとは限りません。ドライバーの技術やマナー、歩行者のマナーも向上させないといけませんね。

世界に誇れる日本の優れたクルマですが、ドライバーの成熟を待たずに、運転支援技術の高度化に突き進んでいる面もあります。それは、仕方がないことなのかなと思う半面、「大丈夫だろうか?」という気持ちにもなるのです。

皆さんはいかがですか?

中嶋一貴氏(なかじま・かずき) 自動車レースの国内最高峰、全日本選手権フォーミュラ・ニッポンの2012年チャンピオン。カートを経て2002年、トヨタが運営するレーシングスクールを受講し奨学生に。03年、初参戦のフォーミュラ・トヨタで年間チャンピオン。06年からF3で欧州を転戦。07年ブラジルグランプリでF1世界選手権への昇格を果たした。08年、09年も名門、ウィリアムズのレギュラードライバーとして出走。11年から国内レースに復帰。今年はフォーミュラ・ニッポンに加え、スーパーGT、トヨタのハイブリッドレーシングカーで世界耐久選手権(WEC)に参戦した。父は日本人初のF1フル参戦ドライバー、中嶋悟氏。1985年1月11日生まれ、愛知県岡崎市出身。
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読者からのコメント
よさのあきお 40代男性 大阪府
文中の「クルマという機械の理解を深めることも大事だと思います。(略)自分の運転の技量と、クルマの「限界」の両方を知っておくことは重要」は的を得たご指摘だと思います。 免許取得時の教育もこの点に重きを置くべきです。箱庭での教習など無意味です。ボンネットを開けたこともないドライバー、スペアタイヤの交換をしたことのないドライバーが多数存在します。自分のクルマに責任を持ち、自分のクルマの限界を知り、自分の技量を知る。本質的に重要なことはドライバー各人の意識を成熟させることだと考えます。 そのためには、日本の免許制度、道交法等の抜本的な見直しが必須です。今のままでは、無責任ドライバー及び不条理に検挙された善良ドライバーの量産、クルマ離れ、産業の衰退という負のスパイラルに陥りかねません。たかが道交法ではなく、制度を改革しようという志をもった国家観のある政治家・官僚が出てくることを真に願います。
tk2188 20代男性 東京都
いつも興味深く拝見しています。今日も御意見に大いに共感をいたしました。私は30前にしてようやく免許をとった身です。大学生の免許取得は当然、近所の買い物に主婦が運転するくらい車が身近な時代で、私自身もあった方が便利だからという軽い気持ちでしたが、教習所で一番心に残ったのは「自動車は動く凶器である」という話でした。 安全に関する技術の向上はもちろん好ましい話と思いますが、よく問題になるドライバーのマナーという話も「自動車という道具を正しく使うための知識と、使い方を誤ってはならないという意識」が重要なのだと思います。
ふぁにぃ・もんすたぁ 40代男性 福島県
「車の家電化」は実感します。まず運転するにあたってMTからATになって「走り」の楽しみ、危険性を見極める感覚が薄れたかと。車って走れば人を殺める道具なんです。もう一度考えないといけません(我が家では「そうなんだよ」といってます)。ちなみにカメラは機械ではなく家電の仲間入りをしてしまいました。電池ナシでは動きませんし。デジカメ写真は失敗しても消去出来るようになりましたが、車の事故は消去出来ませんし。「操る人の技量」が、今は『さらに』求められていると考えます。
自転車乗りです。 40代男性 千葉県
クルマを運転する機会が減った理由……自分の場合、ちょっとした距離なら自転車でも快適に移動できることを知り、自転車に乗る機会が増えたからです。 自転車、いいですよ。 クルマが売れれば景気がよくなるというより、自動車メーカーが車に代わる売れるものを作って景気がよくなることを考える時代ではないかと思います。
30代男性 東京都
今回も中嶋さんのご意見にとても共感しました。 事故がなくならないのは、技術が進歩した分、運転技術が低下したからなのではと感じることがあります。車を運転する事を、自転車で気軽に出かけることと同じ感覚にとらえていて、真剣に走らせることが減ってきている気がしました。 最新の車であればとても「楽」に運転できますので、身が入らなくなっているのかもしれませんね。 乗ればだれでも凶器になりうる機械なので、意識して付き合う必要は今後も変わらないんだと思います。
okichan 40代男性 三重県
私は、普通レベルの車好きだと思っています。ですが、最近の傾向として、車はただの移動手段になってしまっているような気がします。だとすれば、最終目標が自動運転というのも仕方のない事かもしれません。でも、私は、やはり運転すること自体が楽しい車、運転する事が手段ではなく、目的になるような車に今後も乗りたいです。私はそういった車作りを地道に続けているメーカーにエールを送り続けます。
TAKEさん 40代男性 静岡県
こんにちは。 中嶋さんの、今回のご意見に深く賛同いたします。 この国の、ほとんどのドライバーには、自分が非常に危険な乗り物を運転しているのだ、という自覚が完全に欠けていると思います。なぜ自動車の運転には、一定の技術教育と資格および安全教育が必要なのか、もう一度よく考えるべきだと思います。自動車の安全な運行には、本来、非常に高いレベルの技能が必要とされるもののはずです。日々報道される悲惨な事故の背景には、そういった「気構え」の欠如が伏流しているような気がしてなりません。山や海での遭難事故にでさえ、そういうものを感じます。
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