映画市場急拡大 チャイナマネーにすり寄るハリウッド
日経エンタテインメント!
2012年、中国の映画市場は27億ドルを記録し、日本を抜いて世界で2位にランクアップした。中国では著しい経済発展にともないシネコンが急増し、富裕層や中間層が大勢映画館に足を運んでいる。2008年には6億3000万ドルだったマーケットが、12年には27億ドルと過去5年間で4倍以上に拡大。今なお映画市場は右肩上がりで成長しており、今後もこの勢いは続きそうだ(変わるポイント1、2)。
活気づく映画市場が生み出すチャイナマネーが、ハリウッドに流入する動きも相次いでいる。ドリームワークス・アニメーションは中国企業3社と合弁で、製作会社オリエンタル・ドリームワークスを12年に上海に設立。CGアニメ『カンフー・パンダ3』の製作を進めているほか、中国語の実写映画も企画開発中だ。
ウォルト・ディズニーは『アイアンマン3』を中国のDMGエンタテインメントと共同製作。パラマウントは14年公開の『トランスフォーマー ロストエイジ』を中国企業2社と共同製作する(いずれも出資額は未発表)。ジェームズ・キャメロン監督は『アバター』の続編を中国との共同製作を模索していると伝えられる。
また、昨年中国の複合企業ダリアン・ワンダ・グループは米シネコンチェーン2位のAMCエンタテインメントを買収した。
中国で人気の高い強い男、ド派手なアクション
中国での今年のヒットランキングを見ると、中国人はハリウッドのアメコミヒーロー映画や、強い男性が主人公のド派手なアクション映画が大好きであることが分かる(変わるポイント3)。
興収1億ドルを突破した作品の俳優は、ロバート・ダウニー Jr.(アイアンマン3)、チャーリー・ハナム(パシフィック・リム)、ヴィン・ディーゼル(ワイルド・スピード/EURO MISSION)、ヘンリー・カヴィル(マン・オブ・スティール)と、強い男がずらりと並ぶ。
世界版と別に中国版も製作
また、中国人は3D映画も大好きだ。『アイアンマン3』『パシフィック・リム』『マン・オブ・スティール』は3D版も上映されたほか、過去には『タイタニック3D』、今年は『ジュラシック・パーク3D』も大ヒットしている。『タイタニック3D』『ジュラシック・パーク3D』『パシフィック・リム』の3本は本国・米国の興収を上回るほどだ。
特に『パシフィック・リム』は中国での大ヒットが後押しとなり続編企画が進んでいる。逆に米国で大ヒットしたコメディー映画やピクサーアニメなどは、それほど興収を上げていない。
そこでハリウッドでは、アメコミヒーロー映画やアクション映画に中国テイストをトッピングして、中国市場での売り上げ増進を狙っている(変わるポイント4)。
例えば『007スカイフォール』では一場面を香港にしたり、『パシフィック・リム』では舞台の1つを香港として中国製ロボット「クリムゾン・タイフーン」を登場させた。『アイアンマン3』に至っては、世界公開版とは別に中国公開版を作成し、中国人俳優のファン・ビンビンらを出演させたほど。
14年公開の『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』続編や『トランスフォーマーロストエイジ』にも中国人俳優が出演し、『トランスフォーマー』は中国も映画の舞台として登場する。
そこで重要なのが、強いアメリカンヒーローと共に戦うヒロインの存在。『アイアンマン3』『X-MEN』新作とハリウッド映画の出演が相次ぐファン・ビンビンや、『パシフィック・リム』の菊地凛子など、今後は「気骨のあるアジア女性」をイメージさせるヒロインの需要が高まりそうだ(変わるポイント5)。日本からも中国デビューする女優が出るかもしれない。
(フリーライター 相良智弘)
[日経エンタテインメント!2013年11月号の記事を基に再構成]
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