ここでしか味わえない“本物の”名物料理続・食を愉しむ旅(6)ナショナル ジオグラフィック日本版

~スペイン バレンシアのパエリア~

最高のバレンシア流パエリアは、晴れた冬の日に、焚き火でつくる(C)Michael Jenner/Robert Harding

地中海に面したスペインの都市バレンシアは、議論の余地なくスペインで最も有名な料理の本場だ。

バレンシアの人々がこだわるものが、いくつかある。北のバルセロナやカタルーニャとの関係、その言語(カタルーニャ語と同一言語扱いされることを拒む)、そしてパエリアだ。

イベリア半島がイスラム教徒に支配されていた時代、ムーア人の農民が考え出したパエリアは、最初は貧しい人の食事だった。短粒米とオリーブ油、サフラン、野菜、そのほかあり合わせの材料(鶏、ウサギ、カモ、カタツムリなど)を一緒に調理したのが始まりだ。米は、できあがったとき、上のほうは軟らかく、下の層はあめ色でかりかりになっているのが理想だ。ソカラット(おこげ)と呼ばれる下の層は最もおいしい部分とされている。

パエリアには主に2種類ある。肉を入れるバレンシア風と魚介類を入れるパエリア・マリネラだ。バレンシアの完璧主義者は、パエリア調理法の戒律を定めている。汝(なんじ)、ソーセージを加えることなかれ、肉は魚介類と同時に入れることなかれ、グリーンピースを入れ忘れることなかれ、空豆を忘れることなかれ。

だが、結局はおいしく食べられれば、それがなによりだ。バレンシアには、「カーサ・ロベルト」「エル・フォルカット」「ラ・ペピカ」「ラ・マルセリーナ」「エル・ラール」などの有名店がある。

■ベストシーズン  パエリアは年中食べられる人気メニュー。3月15日から19日の5日間はバレンシアの火祭り。巨大な張り子の人形や石こうの人形(ニノッツ)が町中に飾られる。もちろんパエリアもある。

■旅のヒント  バレンシアの主な見どころは、歴史あるカルメン地区や、バレンシア出身の建築家サンティアゴ・カラトラヴァが設計した超モダンな芸術科学都市など。おなかがすいたら魅力的なコロンブス市場へ行こう。

【見どころと楽しみ】
<鍋と作り方>
・パエリアを作る浅い金属製の大きな鍋のこともパエリアという。もとは平鍋を示すラテン語の「パテーリャ」からきている。パエリアが大好きなスペインの人の台所には、パエリア鍋が置ける特大コンロが付いている。
・バルセロナにはパエリアのほか、アロス(「米」の意味)という米料理もある。アロス・ア・バンダ(魚介類で作る)、アロス・ネグロ(イカスミ入り)などいろいろある。フィデワという料理は、米の代わりに短く折った極細のパスタを使う。
・バレンシアの純粋なパエリアにこだわる正統派はけっしてソーセージなど入れない。しかし、パエリアがあまりに広く浸透してしまった今では、スペインじゅうで、香辛料がきいたチョリソーの入っていないパエリアには見向きもしないという現象が起きている。
・パエリアのファストフードチェーンパエリアドールは、あちこちの観光名所のそばにある。そのお味はどうかというと、家庭できちんと調理した、あるいはレストランのパエリアとは比べるまでもない。

(日経ナショナル ジオグラフィック社)

[『一生に一度だけの旅 世界の食を愉しむ BEST500』の記事を基に再構成]

『一生に一度だけの旅 世界の食を愉しむ BEST500』(日経ナショナル ジオグラフィック社、7800円[コンパクト版は2940円])では、活気あふれる市場から、高級レストラン、見事なぶどう畑や幻の香辛料、熟練の技を継ぐ醸造所、農家の台所まで、世界各国の食文化を巡る旅を紹介している。 http://nng.nikkeibp.co.jp/nng/shop/detail.php?id=264

一生に一度だけの旅 世界の食を愉しむ BEST500

著者:キース・ベローズ他.
出版:日経ナショナルジオグラフィック社
価格:7,800円(税込み)

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