ここでしか味わえない“本物の”名物料理続・食を愉しむ旅(6)ナショナル ジオグラフィック日本版

~フランス カスレの秘密~

大皿に盛られたカスレ(C)Bernhard Winkelmann/StockFood UK.

南フランスでは3つの都市とその周辺地域が、自分たちの町こそカスレの本場であると主張している。

フランス南西部ラングドック地方のカルカソンヌでは、おいしいカスレ(煮込み料理)にヤマウズラの肉が欠かせないという。一方、その100キロほど北のトゥールーズでは、豆や豚肉、タマネギ、ニンジンが入った栄養たっぷりのカスレを風味豊かに仕上げるために、ソーセージとカモ肉のコンフィを加える。この2つの都市の間にあるカステルノダリでは、豚バラ肉と、周辺のロラゲ地方で作られるガチョウのコンフィが不可欠とされている。

このように、それぞれの土地ごとにカスレの作り方はしっかり守られている。特にカルカソンヌとカステルノダリでは、そのレシピを守るために組合まで作っている。これは、親睦のための料理というカスレの本質を反映している。もともとは身近な材料を使った、収穫期の臨時雇いや親族の集まりに出す料理だった。

作り方は違っても、白いんげん豆(タルブ産のものやランゴ種のもの)が基本の材料であること、表面がこんがり固まるまで長時間、弱火のオーブンで煮込むのは共通している。

カスレを味わうにはどうすればいいだろうか。中世の城壁に囲まれたカルカソンヌの旧市街では、メニューに5種類のカスレがある「レキュドール」へ行こう。トゥールーズでは、まず歴史あるミディ運河沿いを散歩し、それから「オー・ガスコン」へ行こう。手ごろな値段で高級カスレが味わえる。カステルノダリでは「オテル・ド・フランス」に行き、カスレ愛好家に混じって昼食を食べよう。

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■ベストシーズン  フランス南西部は年中快適。だが、カスレの本場で美食とワインを堪能するなら涼しい時期がいい。冬は黒トリュフもレストランのメニューに登場する。

■旅のヒント  国際都市トゥールーズには週末を使って滞在しよう。コンサートや美術館など見どころがたくさんあり、夜遅くまでにぎわう酒場で寝る前の1杯を楽しめる。カルカソンヌの北西、セサックには13世紀のアルビジョワ十字軍に破壊されたカタリ派の城の廃虚がある。

【見どころと楽しみ】
<カスレの本場>
・カルカソンヌに本部があるカスレ総合アカデミーは、各地の代表的なカスレをたどるカスレの道を定めている。小麦や豆、ひまわりの畑、アヒルやガチョウが飼われている農場を眺めながらドライブすると、この料理が生まれた土地が実感できるだろう。
・トゥールーズでは、街で一番大きなカピトル広場で、有機農産物のファーマーズマーケット(毎週火曜日と土曜日の朝)が開かれる。近くには屋根付きのビクトル・ユーゴー市場もあり、こちらは毎日新鮮な食材を売っている。冬には黒トリュフを売る店も出る。
・カステルノダリの北西、マ・サンテ・プエルに住むノット兄弟は、カソールという土鍋を今も作っている数少ない陶器職人だ。カスレという料理名はこの鍋に由来する。南フランスで広く使われているオック語では「カスーレット」あるいは「ルウ・カソール」という。カステルノダリを見渡せる城塞博物館には昔のカソール(土鍋)が展示されている。
・ラングドック産のフルボディのワインは、こってりした田舎料理のカスレにとてもよく合う。カバルデス、マルペール、濃いざくろ色のコルビエールがおすすめ。
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