ここでしか味わえない“本物の”名物料理続・食を愉しむ旅(6)ナショナル ジオグラフィック日本版

~フランス 本物のブイヤベース~

「ミラマー」のようなレストランでは、魚はコースの一品として、魚介類のうまみたっぷりのスープとは別に出てくる。(C)Corbis/Morton Beebe

 かつては漁師の食事だったマルセイユ風ブイヤベースは、ハーブの香り高い世界屈指のシーフード料理に発展した。

 フランス最大の地中海の港マルセイユに行ったからといって、とりあえずブイヤベースならどれを注文してもいい、というわけではない。ハーブの香り高いマルセイユの有名なブイヤベースには、昔から決まった材料を入れることになっている。

 かつてマルセイユの漁師たちは、とれた魚のうち上等なものを売り、売れそうにない残りの魚を持ち帰った。それを煮て、クルトンとルイユ(にんにくと香辛料をきかせたマヨネーズのようなソース)を添えて夕食にした。その後、マルセイユが貿易港として栄えた19世紀、上流階級の人々がブイヤベースをより高級な料理に仕立て、世界三大スープのひとつになった。

 気をつけたいのは、観光客に質の悪い料理を出して荒稼ぎしようとする輩がいることだ。そういう料理は「魚のスープ漁師風」や「当店流ブイヤベース」といった名が付いている。

 1980年、シェフたちが集まり、ブイヤベースに入れる材料を定めた憲章をつくった。本物のブイヤベースを味わうなら、旧港周辺にあるレストラン「ミラマー」に行こう。また、その近くには、本物を出すことを誇りにしているレストランが2軒ある。カタラン通りに店を構える「シェ・ミシェル」と、ヴァロン・デ・ゾッフにある「シェ・フォンフォン」だ。

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■ベストシーズン  マルセイユの夏は暑く、冬は温暖。6月と7月にはマルセイユ祭りが開かれ、ダンス、音楽、演劇、映画の出し物がある。フランスの人は8月に長い休暇をとるので、レストランの多くは8月は閉まる。

■旅のヒント  朝、ベルジュ埠頭に行ってみよう。漁師がとってきた魚を見ることができる。マルセイユで一番高い丘の上には、19世紀半ばに建てられたビザンチン様式のノートルダム・デ・ラ・ガルド教会があり、そこから街と旧港が見渡せる。

【見どころと楽しみ】
<本物の材料>
・本物にこだわる人は、ブイヤベースには少なくとも4種類の地中海産の魚を入れなくてはならないと主張する。たとえば、最も一般的なカサゴ、アナゴ、ホウボウ、マトウダイなどだ。これに生のトマト、じゃがいも、生のフェンネルをたっぷり加え、アニスの香りのペルノ酒を入れて煮れば、正真正銘のブイヤベースだ。
・乱獲で、地中海産の魚を使うのは年々難しくなっている。それでも、サケの入ったブイヤベースは断じて本物ではないし、貝の入ったものですら議論が分かれる。
・伝統的に、ブイヤベースは2段階に分けて出される。最初はスープ。にんにくを塗ったクルトンにルイユをまぶしてボウルに入れ、その上からスープを注ぐ。クルトンはスープの後から足して表面に浮かせてはならないし、すりおろしチーズをかけてもいけない。
・スープの後、魚を食べる。接客係が目の前で身と骨を分けてくれる。ブイヤベースにぴったりのワインは辛口のカシス(プロヴァンス産のワイン)の白かバンドール・ロゼ。もちろん両方ともマルセイユ近郊で造られる。
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