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「朝の子ども」から見えるもの

~ママ世代公募校長奮闘記(2) 山口照美

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NIKKEI STYLE

 2013年4月、大阪市立小・中学校に11人の民間出身校長が誕生しました。そのなかで唯一の女性が大阪市敷津小学校の山口照美校長。0歳児を含む2児の母でもあります。校長としての仕事と家事・育児、そして介護…。リアル子育て世代の女性民間校長が直面する様々な問題から、働く女性の現在と未来像が見えてきます。

「子どもたちは、校長先生の笑顔で一日が始まります」と、研修でOB校長に教えられた。毎朝、その言葉を胸に門に立つ。もう1人、私の配属先、大阪市立敷津小学校の門の前には、毎朝お手製のメッセージカードを持って立つ「笑顔の人」がいる。ボードは日替わりだ。書いてある言葉を並べてみよう。

「あさごはん、何食べた?」

「夕べ、何時に寝た?」

「ハンカチ、ティッシュは持ってる?」

ベテラン養護教諭である岡部眞味(おかべ・まみ)先生の「おはようございます!」が響き、子どもたちの何人かは足を止めてカードをのぞきこむ。

「今日はパン食べてきた」という子もいれば、 「何も食べてない」という子もいる。 「昨日、寝たの12時やねん」と、しんどそうな子にはいたわりの言葉をかける。

できている子を褒める。決して叱ったり、強い指導はしない。

「朝ご飯、今日は食べてきたんやね、よかったぁ」

「元気なあいさつ、ステキ!」

照れながらも、小学生たちはうれしげな足取りで校舎に向かっていく。

敷津小の合言葉は「小さな学校★大きな家族 チーム敷津」だ。家族の健康を心配するように、門に立ってくれている「保健室の先生」。校長として、そして1人の母親として、話を聴いてみた。

「家庭のしんどい時代」に小学校ができること

――いつから朝、校門に立つようになったんですか?

「平成21年に、新型インフルエンザが流行し始めた時です。あの当時はどんな重い症状になるか、ただ不安でした。それで、自分にできることは何かないかと、校門で児童の登校の様子を見守ることにしました」

――通勤の方にもどんどんあいさつされますよね。

「最初は抵抗があったんですが、一緒に立っている当時の校長先生が通勤の方や、近所の市場の方にもあいさつをされるんですよね。一日が明るいあいさつで始まるって、いいな、と。子どもたちにもその快感を知ってほしくて、立っています」

――メッセージカードを持つようになったのはなぜですか?

「ただ立っているより、何か健康に関することを意識させたいと思って。『動く掲示板』みたいなもの(笑)」

――毎朝、私自身がドキっとするんですよ、このメッセージボード。「何時に寝た?」と聞かれると、ああ、夕べも5歳の娘をやっと寝かしつけたのが、22時だったなぁとか、クッキーとバナナ程度の朝ご飯しか食べてないんちゃうかな、とか。

「本当は、おうちの方に伝えたいメッセージでもあるんですけど、それぞれ事情もあって難しいですよね。極端なケースでは、朝、家に食べる物が無いこともある。そういった家庭には、子ども自身に『夕方、明日のパンの1個でも買っときや』と指導をする考え方もありますね」

――民間校長として小学校に来て思ったのは、「小学校の指導範囲が増えている」ことです。「それは家庭の問題」と言われた健康管理まで、学校が気にかけている。本来は家庭教育の部分だったものに、保護者の手が回らない。「とりあえず毎日をこなす」ので精いっぱいの家庭、特に寝かしつけの時間に両親がそろわないところはしんどい。我が家も、夫に任せる夜が多いんで……

「保護者とつながることもあきらめたくはないんですが、目の前の子ども自身を変えていく必要もあります。でも、『これが守れなきゃダメ!』みたいに窮屈にするのは、しんどいでしょ(笑)。だから、朝のメッセージボードを見て『朝ご飯食べて来たよ』『昨日は早く寝た!』という子を褒めて、『ああ、褒められるっていいな、僕もやろう』と思ってもらえたらな、と考えています」

「笑顔で『いってらっしゃい』」だけ、お願いしたい

――この金曜日によく登場する「つめきり曜日」のメッセージもいいですね。週明けにチェックのためのカードが出てくるので、私もこの1カ月半で習慣づきました(笑)

「月曜日に爪を見せてくれる子は、増えましたね。クイズにしたり、ストーリー仕立てにしたり、子どもにどうすれば伝わるか、あちこちからネタを集めています。来月は『しきつすこやかウィーク』を実施するので『はやね宣言』を家族にするという企画を予定しています」

自分で寝る時間を宣言する、そのためにテレビを早く消したり、さっさとお風呂に入ったり、早く寝るための「作戦」を自分で決めます。「宣言」とか「作戦」とか、小学生は好きですよね。

――子どもたちがどんな作戦を立てるのか、学校をあげて楽しんでやりましょう!最後に、養護教諭として、家庭にお願いしたいことを一つ挙げるとすれば何ですか?

「朝、子どもを笑顔で『いってらっしゃい』と送り出してほしい、それだけです。どれだけ家が忙しく、もめごとがあったとしても、おうちの人がニコッと笑顔で送り出してくれるだけで、子どもは元気に一日を始めることができます。

朝から叱られて、下を向いて歩いてくる子はすぐわかります。ちゃんとした朝ご飯、生活リズム、いろいろお願いしたいことはあるけれど、『朝を笑顔ではじめる』ことで、子どもの一日は変わると思うんです」

――私は子どもが寝ている間に出てくるのですが、せっかく会える短い時間にプリプリ怒っているのはいけないですよね。今日はありがとうございました。明日からも、岡部先生のステキな笑顔を子ども達にお願いします!

入学式の式辞で、保護者の方に向けて「『早寝・早起き・朝ごはん』は子どもが元気に学校生活を送る基本です。それぞれ事情はあると思いますし、私も日々悩んでいます。知恵を出し合って、一緒にがんばりましょう」と伝えた。子ども達の授業の様子を見れば見るほど、「早寝・早起き・朝ごはん」が重要だと実感する。働く親として「わかっちゃいるけど」と焦る気持ちを、「まずは『笑顔でいってらっしゃい』から」と言ってもらえると、少し楽な気持ちになる。

笑顔で「いってらっしゃい」と送り出された子どもたちを、「おはよう!」と笑顔で迎える。

家も学校も、大好きな場所。安心できる場所。自分の学校が、子どもにとっても教職員にとっても「みんなの居場所」になればいいな、と明日も門に立つ。

小学校には、「愛あるプロ」がたくさんいる。

民間から来たからこそ、本人達も気づいていない「小学校の努力や工夫」がよく見える。何でこの苦労が、実践が知られていないのか、歯がゆい思いでいっぱいだ。

そして、自分の子どもに頭を下げながら、学校の子ども達に向き合ってきた「ママ教職員」「パパ教職員」が大勢いる。介護問題に直面する校長先生方も多い。親であり、子どもであり、教育者であるプロの実践や想いを、連載を通じて伝えていければと考えている。

最後に、どんなにピリピリしていても、笑顔を作る魔法をご紹介して終わりたい。

「ほっぺにタコ焼き!」

口角を上げて目尻を下げると、頬がぷくっと膨らむはず。忙しい時ほど「ほっぺにタコ焼き」を乗っけて、笑顔で乗り切りたい。これは、合唱指導で声を響かせる時にも使う言葉だとのこと。

ぜひ、みなさんもご一緒に!

山口照美(やまぐちてるみ)
同志社大学卒業後、大手進学塾に就職。3年間の校長経験を経て起業、広報代行やセミナー講師、教育関係を中心に執筆を続ける。大阪市の任期付校長公募に合格、2013年4月より大阪市立敷津小学校の校長に着任。著書に『企画のネタ帳』(阪急コミュニケーションズ)『売れる!コピー力養成講座』(筑摩書房)など。ブログ「民間人校長@教育最前線レポート」(http://edurepo.blog.fc2.com/)も執筆中

(構成 日経BP共働きプロジェクト・日経DUAL編集部)

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