米国の夏はケーブル局の季節 注目は殺人事件モノ
海外ドラマはやめられない!~今 祥枝
2014年5月に多くの人気番組がシーズン最終回を迎え、サマーシーズンまっただ中。従来、この時期は人気番組の再放送が主となるテレビのお休み期間でした。ですが、リアリティー番組の成功に続き、近年はケーブル局が夏に新番組、人気作の初回放送をぶつけることで、秋の地上波の新作ラッシュと競合することなく視聴者数を獲得しています。
ここに目をつけて、地上波も夏に新番組をミニ・シリーズ形式でもってくるようになりました。2013年はCBSが『アンダー・ザ・ドーム』で成功を収め、2014年はハル・ベリー主演の新作SFスリラー『Extant』が7月に始まりました。
とはいえ、今のところサマーシーズンはやはりケーブル局に勢いがあります。近年、夏の雰囲気に合った作品群で成功を収めていたのは、『SUITS/スーツ』『ロイヤル・ペインズ』などのUSA。2014年は、TNT(ターナー・ネットワーク・テレビジョン)の猛攻が目立っています。6月に670万人という素晴らしい数字でシーズンプレミアを飾った『MAJOR CRIMES ~重大犯罪課』を筆頭に、『リゾーリ&アイルズ』『フォーリング・スカイズ』『Dallas』といった人気作の新シーズンが次々とスタートしました。
10話でひとつの事件を描く
皮切りとなった『Murder in the First』は、『NYPDブルー』の名プロデューサー、スティーヴン・ボチコが手がけるサスペンス。サンフランシスコを舞台に起こる殺人事件を、死期が迫った病に苦しむ妻を抱える殺人課刑事テリーと、シングルマザーのヒルディのコンビが捜査にあたります。
鍵を握る、シリコン・バレーで成功を収めた若き大富豪を『ハリー・ポッター』シリーズのトム・フェルトンが怪演。シーズン1は全10話でひとつの事件を描くスタイルで、捜査、逮捕から裁判までを描く展開となる模様です。初回は安定感のある出だしで、490万人の視聴者数を獲得しました。
TNTはケーブル局のオリジナル・ドラマが台頭した早い時期に『クローザー』をヒットさせて、USAの『名探偵モンク』と並び、ベーシック・ケーブル局の質の高いドラマ作りをリードする存在でした。コンスタントに良作を輩出してきましたが、今期は並々ならぬ気合を感じます。
2014年6月には、映画『トランスフォーマー』シリーズの大物監督マイケル・ベイが手がけるSFアクション大作『The Last Ship』、8月には、『HOMELAND/ホームランド』『24‐TWENTY FOUR‐』の製作陣によるショーン・ビーン主演のミニ・シリーズ『Legends』と、今夏注目の新作が目白押し。9月から始まる14~15年シーズン本番を前に、熱い闘いを繰り広げています。
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●今月のオススメドラマ
『SHERLOCK/シャーロック』シーズン3
奇跡の生還を果たしたホームズが新たな事件に
アーサー・コナン・ドイルの小説『シャーロック・ホームズ』シリーズを基に、現代のロンドンを舞台に翻案したイギリスBBC製作の大ヒットシリーズ。
自称・コンサルタント探偵であるシャーロック・ホームズが、スマートフォンやインターネットなどを駆使し、相棒ジョン・ワトソンと共に難事件を解決に導く過程を、スリリングかつスタイリッシュな映像で描く。
待望のシーズン3は、「シャーロックの死」という衝撃の最終話で幕を閉じたシーズン2の思わせぶりな終わり方を受けて、シャーロックが奇跡の生還を果たすところから始まる。周囲をあぜんとさせるも、また事件を解決する日々が始まるが、今シーズンはジョンの結婚式をめぐるエピソードなど、かなりシャーロックのプライベートに寄った作りとなっている。
シャーロック役でブレイクしたベネディクト・カンバーバッチ、ジョン役のマーティン・フリーマンほか、個性的なレギュラー陣のアンサンブルは相変わらず絶好調。悪役で登場する、『THE KILLING/キリング』のラールス・ミケルセンの怪演も見ものだ。
(C)2014 Hartswood Films Ltd. Distributed under licence by BBC Worldwide Ltd. Robert Viglasky (C)Hartswood Films 2013 (C)Everett Collection/アフロ
映画&海外ドラマライター。女性誌、情報誌、ウェブ等に映画評やインタビュー等を寄稿。「BAILA バイラ」「eclat エクラ」「日経エンタテインメント!」映画サイト「シネマトゥデイ」などに連載中。著書に『海外ドラマ10年史』(日経BP社)。
[日経エンタテインメント! 2014年8月号の記事を基に再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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