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アニメパワーを活用する大手企業

2012年のアニメ界を振り返る(2)

日経エンタテインメント!

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NIKKEI STYLE

 2012年のアニメ映画業界は多くのヒットに恵まれた。そして、様々な企業がアニメの影響力の強さに気づき、販促やマーケティング、さらには集客をするために活用した。2012年のアニメ業界のトピックを紹介する。

2012年のアニメ関連ニュースを振り返れば、アニメがきっかけで、映画や音楽といったエンターテインメント業界はもちろん、企業や地方、そして世界に至るまで、人やお金が大きく動いたことが分かる。電通が2012年3月にオタク専門のシンクタンク「オタクがラブなもの研究所」を設立したことからも、アニメが多方面から視線が注がれ、ビジネスチャンスがあると認識されていることが見て取れる。

アニメが求められる理由

もっとも、アニメ自体の市場や産業規模は決して大きくはない。2011年のアニメ業界市場(アニメ制作企業の売り上げをベース)は、前年比3%増の1581億円(日本動画協会調べ)。最大手の東映アニメーションの2012年度決算売り上げは330億円。例えば国内ユニクロ(ファーストリテイリングの国内ユニクロ事業)が約6000億円ということを考えれば、おのずとその規模が分かるだろう。

一方、アニメ産業市場(ユーザーが支払った金額をベース)の2011年の売り上げは1兆3393億円。両者には10倍近い差がある。つまり、業界自体の規模は小さいが、流通時の付加価値、経済波及効果は絶大。アニメは、関わる企業に新たな利益や価値を生む一種の「磁力」として機能しているのだと言える。

それではアニメは具体的にどんな力があるのか。まずは物理的なもの。アニメは、それが加わることによって、「動員の拡大」「購買の増強」などが見込める。動員の最たる例は、毎年3日間で50万人以上を動員する「コミックマーケット」(コミケ)だろう。作品単位で見ても、放送開始やDVD発売など、1万人規模のホールイベントを行える作品も多く、例えば2012年10月には、40以上もの作品イベントが全国各地で行われた。徳島市で開催されるアニメのイベント「マチ★アソビ」が、直近のvol.9(2012年9月22日から10月8日まで開催)で5万2000人を集客したように、地方に万単位で人を集めることも可能だ。

購買促進力でいえば、「けいおん!」関連キャンペーンで10億円を売り上げたローソンしかり。2012年5月に公開された劇場版「魔法少女リリカルなのは The MOVIE 2nd A's」は、公開初週の土日興収が約1.6億円。それに対して、劇場でのグッズ売り上げは最初の3日間で約2.3億円にも上った。興収よりグッズ売り上げのほうが多く、アニメの劇場公開が、映画を上映するだけではなく、様々な企業に恩恵をもたらしている。

アニメファンは「他のエンターテインメントと比較して、景気に左右されずに(商品の購入に)積極的な方が多いように思う」(毎日放送の丸山博雄プロデューサー)と言う。「ものが売れない時代に、パッケージのトータル売り上げがここ4年横ばいをキープしている」(日本動画協会でアニメ産業の研究、マーケティングなどを行う増田弘道氏)のもその表れといえるだろう。

売り上げなど直接的ではないが、「イメージ戦略」に果たす役割も大きい。2011年5月、米トヨタが初音ミクをカローラのCMに起用するや、そのニュースはネットを駆け巡った。「PES(Peace Eco Smile)」の制作も「あのトヨタがアニメ!?」と驚きを持って迎えられ、取材のオファーが数多く寄せられているという。NTTドコモも低価格でアニメを配信することで、「ツイッターでご意見をいただくことが圧倒的に増えた」(コンテンツ開拓担当部長の田中伸明氏)など、新しいユーザーの獲得に手応えを感じているのだとか。

大前提として熱心なファンがいること、あらゆる業種に合わせて多角的に展開していける許容の広さ、さらに、異業種タッグなどニュース価値も高めてくれる。人を集め、好かれる力があり、"まだ何かできる"可能性を秘めている。新規ビジネスへの模索は、アニメ作品が魅力あるコンテンツである限り、続いていくはずだ。

課題は「海外」と「人材育成」

こうしたアニメの長所──アニメを介することで経済を活性化させ、国内産業の大きな武器になりうる点を、国は「成長戦略の一つ」と捉え、その支援を模索している。国内向けには人材育成や地方産業のバックアップを、海外に向けては「海賊版や無断アップロードの対策に乗り出すと共に、アニメコンテンツを海外で展開するためのスキーム作りを進めたい」(経済産業省メディア・コンテンツ課仲舎菜子課長補佐)とする。

残念ながら日本のアニメは、その認知度の高さに対して、海外におけるビジネス展開はうまくいっているとは言い難い。

例えば、2012年に開催されたフランスの「JAPAN EXPO」では20万人超を動員したほか、アメリカで10万人以上を動員する「Anime Expo」などを見ても、その認知度や人気はより高まっているように見える。

だが、実際の海外売り上げを見てみると、2005年には313億円だったアニメ業界海外推計市場は、2009年には153億円まで半減。2011年は177億円まで回復したが、2008年以降の円高も影響もあって、依然停滞気味だ(日本動画協会調べ)。バンダイビジュアルの川城和実社長も「アメリカはコスプレ中心、ヨーロッパは日本の感覚に近いが、それでもアニメが支持されている理由が決定的に違う」と、海外ではアニメがビジネスとして成立しづらいことを認めている。

経産省では、2007年より「JAPAN国際コンテンツフェスティバル」(通称、コ・フェスタ)を主催、海外のバイヤーにアニメを紹介してきたが、今年からは、お台場に場所を移し、アニメだけではなく、音楽、映画、放送など、様々なエンターテインメントコンテンツを1カ所に集めて、国内外に幅広くアピールしていく考えだ。

もう1つの課題とされるのが、「人材育成」だ。動画協会に登録があるだけで60社、個人ベースも含め、アニメの制作会社は数百にも及ぶといわれ、そのほとんどが零細企業。制作費カットのため原画と原画をつなぐ動画部分を韓国や中国へ下請けに出す流れもあり、経験を積めないケースも少なくないといわれている。

そこで文化庁では2010年から、若手アニメーターの育成プロジェクト「アニメミライ」を推進。国内のアニメ制作会社から若手育成を条件にオリジナルの企画を公募。選ばれた会社は3800万円を無償提供され、約30分の短編アニメを制作する。完成した作品は、シネコンやテレビ各局で上映・放送。2013年には「ストライクウイッチーズ」などを制作したゴンゾ(GONZO)、2011年に設立されたトリガー、「好きっていいなよ。」が放送中のZEXCS、そして劇場版「HUNTER×HUNTER」が公開中(2013年1月12日から)の老舗マッドハウスの参加が決定している。

V字回復した希有な産業

アニメの年間放送タイトルは、2006年の年間279本(うち新作195本)という空前のピークを記録して以降、右肩下がりに転じた。しかし、2010年に200本(うち新作139本)と底を打つと、2011年には220本(うち新作164本)とV字回復をみせている(図1参照)。増田氏は「一度下方に転じた産業が、これほどの短期間で復活した例は、日本においてはこれまでなかった。それだけ、アニメというコンテンツがしっかり根付いた証拠」と考える。

「一時期、"アニメはもうかる"と考えたファンドなどの出資・参入によって作品数が大幅に増加。クオリティーにバラツキが出始め、1作当たりの売れ行きが低下してしまいました。その影響で制作数が減り、売り上げも下がってしまった。作品数のピークは2006年で、当時はただのブームでしたが、この回復はその後いい作品を作り続けて認められた結果だと思います」(増田氏)

現在のクリエイターの強さは、直近のヒットが証明している。従来アニメビジネスは、キャラクターの2次利用など商品化ありきだったり、放送中心のものが多数派だったりした。しかし、「我々が手がけているのは、パッケージ主導のビジネス。作品そのものを買っていただく、そのために、自分が面白いと信じるものを作る。そういう考え方です」。取材時に強い意志を感じさせた岩上プロデューサー率いる「まどか☆マギカ」劇場版の後編は、上映規模が300~400スクリーンのテレビ局映画や洋画大作を退け、堂々の1位を獲得。

「けいおん!」山田尚子監督、「峰不二子という女」山本沙代監督、「銀魂」藤田陽一監督、「PSYCO‐PASS サイコパス」塩谷直義監督、映画「ねらわれた学園」中村亮介監督など、2012年に話題になった作品には30代前後の若い監督も多い。さらに「踊る大捜査線」の本広克行監督ら、異業種のヒットメーカーもアニメに参画してきている。

元は一部のファンのもので、"好き"だから「見る」「買う」「支える」といったビジネスが好循環する基盤がしっかりあるアニメ。最近ではネット配信のほか、新しい楽しみ方としてイベントや映画館で同時中継するライブビューイングが台頭。大勢が1カ所に集まって仲間意識を共有できる空間ができたことで、新たなファンを生み出している。

そして、「アニメパワー」に気づくことができた企業は、どんどん活用していく。そうすれば、制作者にお金が入り、さらなる好スパイラルが生まれる。

「アニメを使ったプロモーションは、誰がターゲットなのかという意見もあるなど、賛否両論があります。ただ、今の20代はアニメに普通に親しんでおり、若い世代には受け入れられやすい。また、現在、政治・経済的にいろいろな問題が山積していますが、それをブレークスルーできるのはカルチャー=文化的交流ではないかと。『PES(Peace Eco Smile)』のようなアニメはまさにこれに当てはまるので、これからも継続することで親近感を持ってもらい、こちらの価値観をうまく伝えていきたい」(トヨタモーターセールス&マーケティングの稲川博氏)

2012年11月17日には、大きなムーブメントとなっている「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」が公開された。その後も映画・テレビとも強力な作品が続く。日本のアニメの力がもたらす未来は、明るいはずだ。

(連載終わり)

(日経エンタテインメント! 平島綾子、ライター 山内涼子)

[日経エンタテインメント! 2012年12月号の記事を基に再構成]

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