注目は「死者復活」 よみがえりドラマがブームの兆し
海外ドラマはやめられない!~今祥枝
ミッドシーズンからスタートした地上波の新番組の中で、2014年3月に始まった、ちょっと毛色の変わったドラマ『Resurrection』(ABC)が目を引きます。「(死者の)復活、よみがえり」というタイトルの通り、死者が次々とよみがえるという設定の本作。企画の段階では流行のゾンビもののアレンジなのかという臆測もありましたが、ふたを開けてみれば、心を打つヒューマンドラマといった趣の内容です。
中国の田んぼで、白人の少年ジェイコブが目を覚ますところから物語は始まります。故郷ミズーリ州の町アーケイディアに戻ってきた彼は、移民局のベラミー調査員に連れられて自宅へ戻ってくると、そこには年老いた両親が待っていました。死んだはずの幼い息子がなぜ…と父ヘンリーは複雑な思いに駆られながらも、母ルシールは素直に喜びます。
間もなく、町では過去にこの世を去った人々が、当時の姿で家族の元に戻ってきます。しかし、周囲の人々や牧師でさえ、どう受け止めればよいのか悩み、一方で、なぜ自分の愛する人は戻ってこないのだろうかと嘆く人々も出てくるなど、町は混乱していきます。
ジェイソン・モットの著書『The Returned』をベースとしていますが、「原作とは登場人物の多くも違うし、全く別の展開になる」と語るのは、脚本と製作総指揮を手がけるアーロン・ゼルマン。人間の生と死を見つめ、愛する人を失った喪失感、悲しみ、そして癒やしがテーマとなっており、シリーズものとしても難しい題材ではありますが、この物語がどう展開していくのか、とても興味が湧きます。
フランスで同じ題材がヒット
実は、"よみがえり"ドラマは世界でも注目の題材のよう。2012年に放送されて大ヒットしたフランスのシリーズ『Les revenants』(英語のタイトルは『The Returned』)は、2004年のフランス映画『奇跡の朝』がベースになっています。
4年前にバス事故で大勢の子供が亡くなった山間の小さな町で、ある日、事故の犠牲者の1人である少女が、当時のままの姿で戻ってきます。同時に、10年前に自殺した青年や、30年前に亡くなった妻が次々と姿を現し、町は不可解な現象に見舞われていきます。
『Resurrection』に比べるとスリラーの要素が強く、不気味さも強めですが、見応えのある作品に仕上がっています。北欧やイギリス、カナダ、アメリカ(リメイクの企画も浮上)でも放送され、各国で高い評価を得て評判を呼んでいます。
ゾンビもまだまだブームは続いていますが、次はスピリチュアル系スリラーがくるのでしょうか。まずは『Resurrection』に注目したいと思います。
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●今月のオススメドラマ
『ハウス・オブ・カード 野望の階段』
大統領に裏切られた政治家が企てる復讐劇
デヴィッド・フィンチャーとケヴィン・スペイシーという、大ヒット映画『セブン』でもタッグ組んだ2人が、監督&主演として挑んだ大型政治サスペンス。
ホワイトハウス入りを夢見てきた政治家フランクは、自分が支持する候補が大統領となる。だが、新大統領をはじめとする権力者たちの裏切りに遭い、約束された地位はあっさりと他人のものとなってしまう。強く美しい妻クレアの精神的な支えを得て、フランクの壮大な復讐(ふくしゅう)劇が幕を開ける。
スペイシーの名演も見ものの本作は、動画ストリーミング・サービスのネットフリックスによるオリジナルシリーズで、2013年2月1日にシーズン1全13話が一挙配信された。2013年のエミー賞ではフィンチャーの監督賞を含む3部門で受賞し、2014年のゴールデン・グローブ賞ではクレア役のロビン・ライトが主演女優賞を受賞した。
アメリカでは2014年2月14日から、シーズン2全13話が一挙配信中。ジョディ・フォスターや、本作に出演中のロビン・ライトがエピソード監督を務めたことも話題になっている。シーズン3の製作も決定している。
映画&海外ドラマライター。女性誌、情報誌、ウェブ等に映画評やインタビュー等を寄稿。「BAILA バイラ」「eclat エクラ」「日経エンタテインメント!」映画サイト「シネマトゥデイ」などに連載中。著書に『海外ドラマ10年史』(日経BP社)。
[日経エンタテインメント! 2014年6月号の記事を基に再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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