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アイドル市場に商機あり 仕掛け人は博報堂DY社員

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AKB48のプロジェクトに、初期から大手広告代理店の電通が参加していたことは、よく知られている。メジャーデビュー前に大手通信会社の広告に登場させるなど、ブレイクに大きく貢献した。

電通と並んで日本を代表する広告代理店の博報堂DYグループも、後発ながら実は、「夢みるアドレセンス」(夢アド)というアイドルグループを手がけている。ただそのプロデュース方針は、インディペンデント活動を中心に据えた、地道な手法。結成から1年弱でメジャーデビューしたAKB48とは対照的と言えるかもしれない。その狙いは何か。

夢アドは2012年8月に活動を開始した。現在5人組で、メンバーはティーン誌「ピチレモン」(学研教育出版)の現役&OGモデルが中心で、月1回のペースで開催している定期公演を軸に活動中。テレビなどの大手メディアの露出は少ないが、アイドルファンに口コミで人気が広がり、2013年12月の定期公演では、500人規模の会場チケットが完売した。また、メンバーの志田友美は「仮面ライダー鎧武(ガイム)」のヒロインに抜てきされた。

これからのコンテンツは「1000円を10万人より、10万円を1000人」に

夢アドのプロデュースを手がけるのは、博報堂DYメディアパートナーズの伊藤公法氏。伊藤氏は、博報堂DYグループのベンチャー起業公募制度に事業計画書を提出し、それが認められてグループアイドルを立ち上げた。伊藤氏は、もともと同社の雑誌媒体部に所属。ティーン誌のモデルを活用したビジネスを以前から温めており、それが実現した形だった。

「広告会社は1のものを10にするのは得意だが、0から1を作れる人間はなかなかいない。そこで、ティーン誌のモデルが所属する芸能事務所との交渉から始まり、商標権の獲得、メーカー、宣伝、流通を通じて一般顧客に届くまで、川上から川下までを統合したビジネスを展開できないかと考えた」と伊藤氏は話す。現在は、伊藤氏が中心となり数人のチームで運営している。

ビジネスのタネがアイドルだったのは、消費スタイルの変化が顕著に表れていたのがアイドル市場だからだと伊藤氏は話す。

「10万人に対して、1000円の商品を買わせる時代は、従来の広告のビジネスモデルが成り立つが、これからは、1000人が10万円を使いたくなるようなコンテンツが必要とされる時代になる」(伊藤氏)

消費のスタイルが、多様化すると同時に一点集中型になりつつあり、その代表のコンテンツがグループアイドルというわけだ。

新しい消費スタイルの代表

エンターテインメントをヒットさせる手法として、大手流通を介することが以前ほど重要でなくなったことも、ビジネスとして成立しやすいとみた要因の1つだ。

一般的な商品であれば、消費者に買ってもらうために、まずコンビニやスーパーなど、ナショナルチェーンの棚に並べてもらうことが重要となる。しかし、アイドルファンは「流通を介さなくても、自らイベント会場に足を運んで、モノを買ってくれる」と伊藤氏は指摘する。ファンとの重要な接点であるCDにしても、全国に流通させるだけではなく、ライブやイベントを行う会場など、必要なところに集中させることで、十分な効果が得られるという見方だ。

ファンが商品を購買する場所であるイベント中心の活動方針であるため、ブレイクするまでの時間はかかるが、現在の戦略は効率性や自由度の高さが魅力。現時点では、インディペンデントレーベルを活動の中心に据えるほうがメリットが大きいという判断だ。

楽曲やライブなど制作面では、中学生時にモーニング娘。がヒットし、大学生時にAKB48の立ち上げ期を見てきた「アイドル(ファン)の黄金世代」(伊藤氏)といえる自身の経験が、方向性の指針となっている。

それでも、活動開始当初は楽曲制作や集客面で思い通りにいかないことも多かったという。「アイドルファンに対して知名度を上げる活動に約1年くらいかかった。2013年夏ごろから、何とか手ごたえを感じられるようになった」(伊藤氏)。最初は100人規模のライブ会場も埋まらなかったが、2013年5月の定期公演から売り切れるようになった。「TOKYO IDOL FESTIVAL 2013」の出演も果たすなど、徐々に軌道に乗り始めている。

2014年はさらなるステップアップを目指し、アイドルファン以外にも訴求力を高めていくという。

(日経エンタテインメント! 上原太郎)

[日経エンタテインメント! 2014年2月号の記事を基に再構成]

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