2014/7/24

これまでは公共調達のうち「男女共同参画やWLBに関連する調査、広報、研究開発事業」においてインセンティブを付与するという一定の枠組みがあった。「テレワーク全国展開プロジェクト」(総務省)、「両立支援に関するベストプラクティス普及事業」(厚労省)、「企業のダイバーシティ経営の促進に関する実態調査」(経産省)等、その事業自体が男女共同参画やWLB関連に限定されたものであり公共工事などは入っていなかったが、その枠組みを外すということである。

「公共調達の原則として経済性と公正性は担保されなければいけないが、その大原則を踏まえつつ、女性の活躍推進に取り組む企業を適切に評価することを盛り込んだ取り組み指針を策定し、受注機会の増大を図る」(内閣官房)

これまでの公共調達で認定した評価項目は、女性の雇用率や女性の管理職(課長相当職以上)・係長相当職の割合、ポジティブアクションの公表等があるが、その実績を踏まえつつガイドラインを速やかに策定し各省庁の取り組みを進めていくということである。

環境への影響が少ない製品を優先的に購入することを「グリーン調達」というが、その言葉にあてはめると、女性登用・女性活用をしている企業を評価する、いわば「ダイバーシティ調達」といえるのかもしれない。その本格稼働が2014年度から始まるのだ。

いっぽう、国交省はすでに女性活用を促すモデル事業を始めており、女性技術者の現場への配置などを入札参加要件とする国発注の公共工事を全国10カ所程度実施する。

女性活躍の評価をポイントにするのではなく、女性技術者を配置していなければ入札もできないというより厳しい条件であるが、その第1弾として東北地方整備局が山形県東根市の橋梁上部工工事に適用、落札価格は2億円となった。公共工事の規模は調査、広報、研究開発事業に比べると桁違いに大きい。この国交省のモデル事業だけでも大きな総額となり、前年と比較すると女性活用企業を優遇する公共調達は大幅に増えると予想される。

経産省のダイバーシティ経営企業100選運営委員長を務め、企業の女性活躍推進に詳しい東京大学社会科学研究所の佐藤博樹教授は、「女性の活躍や登用を公共調達の入札審査の基準に含めることは、女性の活躍の場の拡大に貢献する可能性を持つが、評価基準のあり方によっては、女性の活躍の場の拡大にマイナスの影響を及ぼす可能性が高いと考える。具体的には、管理職の数や比率のみを基準とすると、名称のみ管理職の数を機械的に増やすようなことが生じかねない。そのため、管理職の数や比率だけでなく、女性登用への取り組みを評価することが重要になる」と指摘する。

麓幸子(ふもと・さちこ)
 日経BPヒット総合研究所長・執行役員。日経BP生活情報グループ統括補佐。筑波大学卒業後、1984年日経BP社入社。1988年日経ウーマン創刊メンバーとなる。2006年日経ウーマン編集長、2012年同発行人。2014年より現職。同年、法政大学大学院経営学研究科修士課程修了。筑波大学非常勤講師(キャリアデザイン論・ジャーナリズム論)。経団連21世紀政策研究所研究委員。経産省「ダイバーシティ経営企業100選」サポーター。所属学会:日本労務学会、日本キャリアデザイン学会他。2児の母。編著書に『なぜ、女性が活躍する組織は強いのか?』(日経BP社)、『就活生の親が今、知っておくべきこと』(日経新聞出版社)などがある。
[参考] 日経BPヒット総合研究所(http://hitsouken.nikkeibp.co.jp)では、雑誌『日経トレンディ』『日経ウーマン』『日経ヘルス』、オンラインメディア『日経トレンディネット』『日経ウーマンオンライン』を持つ日経BP社が、生活情報関連分野の取材執筆活動から得た知見をもとに、企業や自治体の事業活動をサポート。コンサルティングや受託調査、セミナーの開催、ウェブや紙媒体の発行などを手掛けている。
  「女性が活躍する組織づくりセミナー」を2014年8月4日に開催する。「女性が活躍する組織が必ず実行している5つのこと」などの講演等がある(http://www.nikkeibpm.co.jp/hit/140804briefing.pdf)。

なぜ、女性が活躍する組織は強いのか

著者:麓幸子・日経BPヒット総合研究所編
出版:日経BP社
価格:1,998円(税込み)