二次募集は無理だと分かっていたので、わらをもつかむ気持ちで「お願いします」と即答。ネットで調べると、関東に10園以上展開するチェーンのようで、明るい写真と、「保育士は全員正社員」「愛情を持って育てます」といった園の運営に関する言葉が書かれており、ほっと一安心。夫とも「とにかく認可に入れるまで、ここに入れよう」と話し、上司にも連絡を入れた。

説明会では、保育士と運営会社のスーツの男性が現れた。週末だったため園児の様子は見ることができず、かわいいイラストの切り絵が貼ってある保育室を見学し、入園約束金2万円を払って終了した。部屋はマンションの1階にある30畳程度の1部屋。毎日散歩に行き、0~2歳中心。保育士は0歳児クラスでは園児2人につき1人、1歳児クラスでは園児3人につき1人、2歳児クラスでは6人につき1人が配置されると聞き、安心した。

昼食は給食センターからの配達で、コンビニ弁当のようなメニュー(揚げ物あり)がプラスチック容器に詰められているものだったため、まだ1歳になったばかりの息子には手製のお弁当を持たせることに決めた。職場復帰と同時に始まる弁当作りは不安だったが、離乳食も完全に終わってないうちから揚げ物を食べさせるよりはいいかと決意。復帰は間近に迫っていたが、やっと安心でき、登園バッグやお弁当袋を縫うなど、少しでも息子に何かしてあげたいという気持ちだった。

そして4月。A園に通い始めて10日目に、連載冒頭の恐怖のシーンを目撃した。

入園説明会での内容はほぼウソだった。

A園は、入園式も何もなく、1週間の慣らし保育から始まった。いつ迎えに行っても園児(0~2歳)約40人に対して、保育士は2~3人。しかも、常に連絡ノートを記入するのに必死で、子どもたち(ほとんどがまだハイハイか伝い歩きの赤ちゃん)は部屋中に散らばって泣くか、床を這っているか、とぼとぼと歩いているか……。不審に思い「オモチャなどで遊ばないのでしょうか?」と連絡ノートに書いた次の日には、お迎え時にこれ見よがしに床にオモチャが数個散らばっていた。一緒に歌を歌ったり、絵本を読んだりする姿は一度も目にすることがなかった。

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顔や手に黒いべとべとしたものが