14歳で妊娠…貧困が貧困を招く米国社会のアイロニー米国NPの診察日記 緒方さやか

2013/9/27
米国の医療機関などで働きながら、出産・育児を経験した著者が、仕事・出産・子育て・文化の違いなど、さまざまな切り口で、米国社会とそこで働く女性の現状を紹介。読めばリアルな米国が見えてきます。さて、今回取り上げるテーマは、米国における若年層の妊娠について。地域によっては高校卒業前に妊娠、出産する女性も少なくないのだとか。

成人科のナースプラクティショナー(NP)として、原則18歳以上しか診ない私にも、担当している患者さん親子が何組かいる。親子といえどプライバシーは守って診察するのが義務なので、子の前で親の病気の話をしたり、その逆をすることもしないようにしているが、家庭の裏事情を知っているため、ついつい感情が入ってしまうことがある。

シングルマザーがかかえる深い悩み

Aさんは50代前半の女性で、時にぶり返すうつ病に悩まされながらも、懸命に生きている。幼い頃に親から受けた虐待からか、若い頃はドラッグに現実からの逃げ道を見つけ出し、一時期はホームレスだったこともあるという。その後、教会に通い始めてヘロインをなんとか断ち、ネイリストの資格を得て真面目に働き続けてきた。現在、夜間大学に通う計画も立てている。中毒の時に産んだ子どもは養子に出してしまったが、その後生まれた3人の娘を女手一つで育てながら、先も見据える彼女の強さと意気込みを、私は尊敬している。

彼女の一番の願いは「3人の娘たちこそは、まともな教育を受け、きちんとした社会で生きてほしい」というもの。しかし、現在20代後半の一番上の娘は、高校生の時に妊娠して学校を中退し、生活保護を受けている。「ほかの2人にも『教育が一番大切だ』って、口を酸っぱくして言うんだけれど、聞いてるのかどうか…」と彼女はため息をよくついていた。

そんなAさんがある時、とりわけ憔悴しきった顔で来院した。「私のベビーが妊娠しちゃった」。妊娠した末っ子の娘は、なんと14歳。「娘に『その年で子どもを育てられるわけないでしょう』と言うと、怒って家を出ちゃった。多分ボーイフレンドの家にいるんだとは思うけど、もう数日連絡が取れないの…」

私にはかける言葉が見つからなかった。このような状態では、おざなりの慰めの言葉は意味を持たない。時間が許す限り、泣く彼女の話を聞いてあげるしかなかった。選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を処方しておしまい、で済む話ではない。