ビー玉とiPhoneで超アップ写真 至近距離でパチリ
試行錯誤が自由研究にも
8月も残りわずか。まだ夏休みの宿題や自由研究が終わっていない小中学生もいるのではないだろうか。一方、親は親で「身の回りの物で手軽に何かできないか」などと考えているかもしれない。いまやスマートフォン(スマホ)を持つ世帯は49.5%と約半数(総務省2012年末調査)。家族の中で誰かしらはスマホを持っているケースが多いはずだ。ここはひとつ、親子でiPhone(アイフォーン)を使った自由研究に挑戦してみてはいかがだろう。
■100円ショップで小道具をそろえ、アリを撮ろう
今回は、iPhoneを使っていろいろな被写体のアップ撮影(マクロ撮影)を試してみた。マクロ撮影をするには、市販のiPhone用マクロレンズを使うのが手っ取り早いが、100円ショップなどにレンズの代わりになるものは売っていないだろうか。自宅近くにある数店で探してみると虫眼鏡や老眼鏡、読書用の拡大鏡などが見つかった。動植物の観察をする意味でも、一番持ちやすくて使いやすい虫眼鏡がちょうどよさそうだ。
早速身近にいる小さな生き物、アリを撮ってみよう。とは言うものの、アリはすばしっこくて意外と撮りづらい。そこでシャッターチャンスを増やすために、行進するアリに狙いを定めてみた。
動物行動学が専門の佐藤俊幸・東京農工大学准教授によると「クロクサアリやアミメアリ、サムライアリなど、行進するアリは東京近郊にもいる。中でもトビイロシワアリは近くの公園や庭にゴマを皿に盛って置けば、持ち運ぶために行進する」そうだ。
先日、日経電子版に掲載した写真企画「写真は語る」では佐藤准教授の協力のもと、アリの行列の撮影を試みたが、それでも苦労した。デジタル一眼レフは写真こそ美しく撮れるが、撮影のセッティングでカメラの大きさが撮影の邪魔になることもしばしば。地面すれすれを撮る場合には、土を掘ってカメラの位置をより低くすることもあるのだ。
しかしiPhoneならその必要はない。本体も小さく、画面で常に確認しながら撮れるので、簡単に超ローアングルができる。腰を低くして「アリの目線」でシャッターチャンスを狙おう。
■「究極の凸レンズ」はビー玉
虫眼鏡が被写体を拡大できるのは「凸レンズ」の性質によるものだ。凸レンズとは丸く膨らんだ形をしたレンズのこと。レンズといえばほとんどがガラス。丸いガラスと言えば――。そう、ビー玉。今回、100円ショップで半ば冗談のつもりで買ってみたビー玉。「何か写ればラッキー」と思っていたら驚いた。マクロ撮影でビー玉が思わぬ大活躍をしてくれることが分かったのだ。
iPhoneのレンズにビー玉をくっつけて、被写体にもくっつける。ちょうど被写体とiPhoneでビー玉をはさむ感じだ。
ビー玉の大きさによっても倍率が変わるのが面白い。ガラスビーズやアクセサリー用の水晶でも撮れるので、試してみてほしい。
この他にも、DVDプレーヤーのレーザー照射レンズがマクロ撮影に使える。パソコンのジャンク品を取り扱っている店で探してみよう。ドライバーでネジを取ってカバーをはずすと中心部分に、精密部品のかたまりがある。それを取り出すと直径5ミリほどのレンズがあるはずだ。慎重にはずしてiPhoneにくっつければ完成だ。
■もっとアップで撮るには
これぐらいのアップでは物足りないという人もいるかもしれない。感性サイエンス研究所(横浜市)が販売する「iミクロン」は約20~80倍の拡大写真を撮影できる。マクロ撮影というよりも、むしろ顕微鏡に近い倍率。植物の細胞などまで観察できるほどだ。
気になる花や葉っぱを自宅に持ち帰り、部屋でじっくり撮影するのもいい。植物に限らず身近な物を手当たり次第、拡大撮影してみれば、面白い発見に出合えるに違いない。
と、ふとこれらの撮影を終えて思った。アップ写真は自由研究の素材として使えるだけではない。アップ写真を撮るために、市販レンズの代わりになるものをあれこれ探して工夫すること自体、自由研究にできるだろう。
虫の撮影で有名な栗林慧氏と海野和男氏はいずれも、撮影機材を改造して、驚くべき写真を世に生み出している。優れた写真の裏にはそんな試行錯誤が隠れているものだ。必要な機材がなければ身近なものを使って自分で作る。そんな「DIYフォトグラファー」になるのも面白いだろう。
(写真部 小林健・寺沢将幸)
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。