AKB48の最大のライバル、SKE48はブレイクするか
日経エンタテインメント!
「アイドル戦国時代」と呼ばれるなか、トップを走り続けるAKB48。そして、CDセールスから見て、最大のライバルといえるのは妹分であるSKE48だ。2011年7月にリリースした「パレオはエメラルド」では初めて40万枚を突破。出せばミリオンのAKB48には及ばないものの、「ももいろクローバーZ」や「ハロー!プロジェクト」勢などは引き離している。
SKE48が存在感を示したのが、2012年6月に行われたAKB48選抜総選挙だった。AKB48のメンバーだけでなく、姉妹グループも含めた人気投票として開催されるこのイベント。AKB48のシングルにも選抜メンバーとして参加して知名度が高い松井珠理奈・松井玲奈の二人がトップ10入りを果たしたほか、発表された64位までに15名がランクイン(うち8人は初のランク入り)。SKE48のツートップであるW松井以外のメンバーも、知名度が全国区になりつつあることを感じさせた。
これは、全国進出を果たすため、これまで進めてきた強化策が実を結びつつあることを表している。まず2011年7月、レコード会社をエイベックスに移籍。さらに同年10月末には、結成以来、マネジメントを行っていたピタゴラス・プロモーションから、メンバーとSKE48を担当していたスタッフ全員がAKB48の運営会社であるAKSに転籍した。以後、東京を中心にメディアの露出が増えている。
ライブイベントにも多数出演
AKB48との違いとして、SKE48はアクティブな曲調とダンスの激しさが特色といわれるが、そのパフォーマンスを地元以外で見せることにも力を入れている。2011年6~7月に初の全国ツアーを開催したほか、他のアーティストと共演するライブイベントにも積極的だ。今年の夏は、エイベックスグループ主催の「a-nation2012 IDOL NATION」(AKB48グループからはほかに指原莉乃、HKT48が出演)、フジテレビ主催の「お台場合衆国めざましライブ2012」などに出演。多くのアイドルユニットが集結する「TOKYO IDOLFESTIVAL」にも、AKB48グループのユニットとして初めて登場している。
一方、SKE48とAKB48を比較したときに、大きく異なるのは、所属メンバーの地元出身率の高さだ(表1参照)。AKB48は、結成当初こそ東京・秋葉原発のアイドルグループというイメージが強く、オープニングメンバー20名のうち16名が南関東4都県出身だった。だが、現在では柏木由紀・横山由依など地方出身者が増えている。これに対し、SKE48はメンバーの約8割が地元・愛知県出身で、近隣の岐阜・三重出身者も多い。こうしたことから、SKE48は、シングルのプロモーションビデオを愛知県の商店街で撮影するなど、"地元密着"を強く打ち出してきた。
全国進出を強化する一方で、地元ファンへアピールする材料となりそうなのが「専用劇場」の開設だ。これまで、SKE48が本拠地として使用してきた名古屋・栄の「SUNSHINE STUDIO」は、他のイベントにも使われる施設だった。今回、これを全面改装、SKE48専用の劇場として生まれ変わることが7月27日に発表された。2011年、5期生が入ったSKE48は、現在63名。今では研究生だけでも公演できる大所帯となっており、劇場の稼働率が上がっていくことは間違いない。
SKE48版「神曲たち」は?
全国区のグループとしてさらに飛躍するための課題は、キー局でのレギュラー番組。2シーズン目となった「SKE48のマジカル・ラジオ」が2012年6月末で終了し、現在は地上波で全国放送されるグループの冠番組はゼロという状況だ。
さらに、メンバーの個人活動強化も求められる。この春、主力メンバーのうち、松井玲奈がGrick、高柳明音はエイベックス・マネジメント、矢神久美がワタナベエンターテインメントへと、所属事務所の移籍を果たした。AKB48も、2007年に前田敦子・大島優子・篠田麻里子・板野友美らが、テレビドラマやバラエティー番組に太いパイプを持つ大手芸能プロダクションに移籍したことによって、ソロ活動が増えて知名度を上げている。SKE48も同じように、個々のメンバーの知名度上昇に連動して、グループ自体の人気も上昇することが期待される。
2009年、AKB48は15枚目のシングル「RIVER」で初のオリコン1位を獲得。続くシングル「桜の栞」、アルバム「神曲たち」が40万枚前後の販売を記録した後、2010年夏の「ポニーテールとシュシュ」で70万枚を超えて大ブレイクを果たした。CDセールスの規模や、メンバーの置かれた状況をみると、現在のSKE48はAKB48の"大ブレイク前夜"に似た状況にある。
9月19日には、SKE48にとって通算10枚目のシングルと初のアルバムを同時発売、シングルについては発売初週に50万枚を突破したと見られる。この作品が、AKB48がブレイクしたときと同じように飛躍のポイントとなるのか、注目される。
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音楽プロデューサー 田中博信氏に聞く 「SKE48サウンドの秘密」
全力を出せる振り切った曲がSKE48らしさ
AKB48と比べると、SKE48はやはり元気のいい楽曲というのが大きな持ち味だと思います。
ただ、グループの結成時に、プロデューサーの秋元さんから「(AKB48とは)このように変えたい」という具体的な話があったわけではないんです。最初はAKB48の楽曲で公演をしていたので、それを見ながら方向性を定めていった感じですね。勢いがあって激しいダンスが特徴だと判断して、2ndシングルの「青空片想い」あたりから、それを生かせる楽曲へと固まっていきました。
メンバーの声のトーンが、全体的に若く明るいという特徴もあります。SKE48と比べるとAKB48は、前田敦子、高橋みなみ、篠田麻里子など、サウンドの中核となるメンバーにもう少し落ち着いた声の持ち主が多いですね。だから、SKE48は「バンザイVenus」や「パレオはエメラルド」のように全力を出しやすい曲、抜けが良く、振り切った曲のほうが"らしさ"が出やすい。一方で「片想いFinally」のような切ない曲は重くなりすぎず、それも独特の味で聴こえるんですが。
旋律より盛り上がり優先か?
松井珠理奈は年齢同様に、声も若くて勢いがあります。松井玲奈はかわいらしさが特徴。この二人はSKE48の楽曲を作る上でも重要ですね。ただ、珠理奈と玲奈は集団のなかでも探しやすい声なので、特別に強調してはいません。高柳明音や小木曽汐莉はハスキーな声で、珠理奈や玲奈には出せない表現ができる存在。須田亜香里は声が高いので、彼女が入るとパッと明るくなりますね。
音圧を出すため、4人ずつブースに入るというレコーディング方法はAKB48と同じ。さらにSKE48の場合、リズム感を止めず、いかに勢いを出すかを考えることが多い。「オキドキ」の「okey-dokey」というフレーズなど、曲によっては旋律通りに歌えていることよりも盛り上がりを優先して、いつもは聴かないようなトーンのテイクばかり拾うこともあります。彼女たちはレコーディングも全力なので、歌い終わるとライブのように、汗をかいているように見えることもありますよ。
(日経エンタテインメント!編集部)
[日経エンタテインメント!2012年10月号の記事を基に再構成]
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