2014/2/2

日経ヘルス&メディカル

皮脂が過剰に落ちてしまう

ヒトの皮膚は通常、皮膚常在菌により皮脂が「パルミチン酸」や「ステアリン酸」に分解されて弱酸性に保たれている。このため、食中毒や皮膚感染症の原因となる黄色ブドウ球菌や化膿レンサ球菌は、そもそも増殖しにくい環境となっている。また、健常な皮膚は、アレルギーを誘発する大きな分子量の物質は透過させない構造となっている。これら皮膚の防御機構を最大限に発揮するには、皮膚常在菌を維持するとともに、皮膚を傷つけないようにする必要がある。

「お湯だけの洗浄は有効なスキンケアの方法だ」と話す大嶋皮膚科医院の西谷茂樹氏

だが、界面活性剤を用いて過剰に皮膚を洗ってしまうと、保湿に必要な皮脂や皮膚常在菌までもが落ちてしまう。さらには「肌が傷つき、アレルギーの誘発や細菌感染の原因となる可能性がある」と、大嶋皮膚科医院(兵庫県赤穂市)院長の西谷茂樹氏は説明する。

米国皮膚科学会(AAD)でも、アトピー性皮膚炎の患者に対するスキンケアの方法を「洗浄剤は必要なときのみ使用する」としている。岡田氏はこれらのことから、「来院した患児や保護者に、入浴時は頭部からつま先まで全身をサッとお湯でくぐらすように指導している」と話す。

入浴後は、保湿を目的に、皮膚症状がなくても白色ワセリンを塗布。湿疹やかゆみなど、皮膚トラブルがある患者には、必要に応じて外用ステロイドなどを塗布するよう指導している。

お湯だけの洗浄で皮膚症状が改善

岡田氏は自院を受診した、かゆみや湿疹などの皮膚症状を有する乳幼児162人に対してアンケート調査を実施。2013年4月、その結果を日本小児科医会会報に報告した。来院した患児の保護者には、洗浄剤をできるだけ使わず、汚れや臭いが気になるときにだけせっけんを用いて洗い、入浴後は白色ワセリンを用いて保湿するように指導。その後、3カ月以内に再度来院した際に皮膚の状態を保護者に確認した。

その結果、50%が「軽快した」、23%が「変化なし」と回答。1%が「体の湿疹は改善したが頭が臭くなった」、1%が「湿疹は改善したが、頸部に発赤が現れた」と訴えた。残りの25%は記載がなかったり、再診がなく不明だった。

この指導を開始してから1年以上経過した時点で、患児の保護者188人に入浴時の洗い方を改めて確認したところ、「洗浄剤をほとんど使ってない」と答えた保護者は90%、「洗浄剤を毎日ではないが使っている」のは8%、「毎日洗浄剤を使っている」のは2%だった。

「最初は抵抗感を示していても、実践してもらうと、『皮膚症状が改善する上に子どもをお風呂に入れるのが楽になった』と答える保護者が多い」と岡田氏は言う。

西谷氏も「洗浄剤を使っていて皮膚症状が生じた患者に、お湯だけの洗浄と白色ワセリンでの保湿をするように指導するだけで、治療効果が得られることがある」と話し、スキンケアの方法であることを強調する。

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重度の肌トラブルでは洗浄剤を使う