祖母との思い出を歌った『トイレの神様』がヒット。2010年に急にブレイクした植村花菜さん。「泣ける」と言われたこの曲のように、「詞」から生まれたヒットは数多くあります。日経エンタテインメント!では、植村さんへのインタビューから“今届く言葉”の秘密を探ってみました。
10分ほどのバラード曲『トイレの神様』がロングヒット中のシンガーソングライター植村花菜。今年急に知名度を上げた彼女だが、そのキャリアは長くデビューは05年。それまでは自分の体験に基づいた恋愛や夢をテーマに歌うことが多かったが、『トイレの神様』では大人になってから初めて気づいた、育ててくれた祖母への感謝の気持ちを、「いい孫じゃなかったのに/こんな私を待っててくれたんやね」と素直に歌う。自分の家族のことを歌にしたのは初めてだ。
1曲約10分という長さのため、ラジオやテレビでのフルコーラス歌唱は避けられがち。しかし、誰もが自分の思い出に重ねて心を揺り動かされるこの歌詞が、ヒットにつながった。『トイレの神様』はどのように生まれたのだろうか。
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2010年3月にミニアルバムをリリースするために、2009年夏からコンセプトを固めていく作業をしていきました。そのなかで、今までも自分をさらけ出していたけれど、まだまだ踏み込み方が足りないのではと考えていました。
プロデューサーの寺岡呼人さんも「素の植村花菜をもっと楽曲に反映できるといいね」と言ってくれたので、今度は自分のルーツを歌おうと決めました。
それで、寺岡プロデューサーと相談しながら、色々な話をしました。家庭環境の話、恋愛の話、音楽の話――。そのなかで小学校3年生から祖母と2人暮らしをしていて、お手伝いを全部やっていた。でも、トイレ掃除だけが苦手で、それだけやらなかったら、祖母がこんな話をして――と、「トイレの神様」のエピソードを話したら、「それいい話だね。曲にしてみたら?」と言われたんです。