2014/2/1

おでかけナビ

町のブランド価値が上昇すれば、店の価値も上がる

同社が魅力的な食材を発見することと同じくらいこだわっているのが、「魅力を料理だけでなく言葉でも伝えること」。そのため、新店のオープン前には多くのスタッフを産地に出張させ、生産者と一緒に農作業を経験したり、酒を酌み交わしたりさせるそうだ。まるで地元民かのような、熱のこもった説明ができる理由が分かった気がした。

「三瀬村」のメニューの1つ「佐賀野菜焼き」(価格はその日の野菜により変動)。腰まで泥に浸かってレンコンの収穫作業を手伝ったスタッフが「ものすごく粘りが強く、甘くておいしいレンコンです!」と熱のこもった説明をしてくれた
「三瀬村」店で手絞りしているという佐賀産のトマトで作った(左)「佐賀生トマトハイ」(619円)、(右)「佐賀生トマトハイボール」(590円)。生のトマトのようなさわやかさ

その甲斐あってか、この店をきっかけに八雲町に興味を持ち、実際に八雲町に行ってきた常連客もいるという。「僕たちが目指しているのは、まだ知られていない小さな産地の価値を都会の人に伝えることだったので、非常にうれしかった。さらにその町の産品がブランド化すれば、僕たちの店も同じように価値が上がり、お互いに利益を得られる」(合掌社長)。

「みつせ村ジャージー牛乳ハイ」(619円)。ジョッキの3分の1まで焼酎が入っているので、見かけによらずアルコールは意外に強い

合掌社長は生産者からよく「食べた人の感想を教えてほしい」と言われるそうだが、そのたびに生産者と食べた人がつながらない、現在の流通の問題点を痛感するという。札幌中央市場でも、海産物のラベルには「北海道」と大ざっぱにしか表示されていない場合も多いそうだ。

流通の発達で食材自体は産地からすぐに届くようになっても、間に介在する業者が増え、生産者と消費者の距離はむしろ遠くなっている。今まさに問題視されている産地偽装表示問題も、そのことが遠因の1つだろう。お金だけでなく、無名の生産地の認知度を上げることに意義を見いだす「ピンポイント産直居酒屋」のビジネスモデルに、そうした構造的な問題を解決するヒントがあるのかもしれない。

「佐賀県三瀬村 ふもと赤鶏」の店内では佐賀県の特産品も販売
佐賀有明海産海苔と佐賀県産小麦を使った「海苔うどん」「海苔パスタ」(350円)。海苔が溶けだしたゆで汁はだしにもなるとのこと
「一の塩」(1050円)は透明度が高い加唐島の海水から作るため、ろ過の必要がなくミネラルが豊富に残っている塩

(ライター 桑原恵美子)

[日経トレンディネット 2013年11月21日付の記事を基に再構成]

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