2014/2/1

おでかけナビ

自治体にはお金ではなく「情報と熱意と労力」を求める

福井県出身で都内に2店の居酒屋を経営していた合掌社長が、遠く離れた北海道八雲町の存在を知ったのは2009年。たまたま八雲町に転勤した親友が、ホタテ貝やサケなど、地元の新鮮な海産物を送ってくれたのがきっかけだった。商売柄、多くの産直食品に触れていたが、八雲町の海産物の質の高さにショックを受け、「八雲町にフォーカスした産直居酒屋」のアイデアがひらめいたという。

グループ1号店となった「北海道八雲町 三越前店」。八雲町は、北海道南部の渡島半島の中央を占め、日本で唯一、太平洋と日本海の2つの海に面した町

しかし、海産物を送ってくれた友人は地元の鮮魚店で購入しただけ。特別な仕入れルートがあるわけでもなく、誰と交渉すればいいか分からなかった合掌社長は、とりあえず八雲町役場の農林水産課に電話し、八雲町を前面に出した産直居酒屋を提案。電話に出た担当者はけげんそうだったが、ともかく関係者を集めてプレゼンテーションをすることになった。

「東京から来た見知らぬ人間がいきなりそんなことを持ちかけても、相手にされないだろう」と予想した合掌社長は、商談を成功させるため、いくつかの作戦を立てていた。

「北海道八雲町」の人気メニュー「本日の激特刺身盛り」(1人前724円、2人前 から) ※写真は2人前

その1つがプレゼン前の段階で、店舗用の物件を用意したこと。しかも場所は日本橋三越前という都内の一等地で、島根館、新潟館、奈良館などの人気アンテナショップが集中している好立地。「手ぶらで行っても怪しまれるだけ。『すごい!』と思ってもらえる物件を用意することで、こちらの熱意と真剣さを感じてもらえると考えた」(合掌氏)。もし交渉が決裂したら、ほかの業態の店舗に転用すればいいと、決断したそうだ。

またこうした提案では、地域活性化のための補助金を当てにする企業が多いが、「補助金は一切もらわない。提供してほしいのは、情報と熱意と労力」と強調。町の中のどこにどんな特産物があり、誰が作っているかを地元以外の人間が調べるのは困難だ。その部分の協力を自治体職員などに依頼し、あとは農家、漁師、もしくは道の駅などから自分たちが直接仕入れる形にする。さらに農産物の場合、農協には卸せない形の悪いものも含めて、農協より1個10円でも高い金額で買い取る姿勢を伝えた。

「名物北の海あふれ寿司」(1344円)は「北海道八雲町」の名物

1カ月間にプレゼンを3回行い、ようやく協力をしてもらえることになったが、当初、自治体側は「応援はするが公認はしない」というスタンス。「“町ぐるみ”といった表現は控えてほしい」とくぎを刺されていた。

しかし2009年8月、三越前に「北海道 八雲町」をオープンすると、すぐに月商1100万~1200万円を稼ぎ出す繁盛店となり、「八雲町」は3店舗(三越前店、浜松町店、日本橋別館)に拡大。八雲町の関係者も何度か来店し、オープンから半年後には「八雲町公認」のお墨付きがもらえたという。

続いて「焼き鳥の店も始めたい」と考え、日本中から40種類以上の鶏肉を取り寄せて研究した結果、選んだのが鶏肉の名産地として知られる佐賀県三瀬村で3年前に誕生した鶏種「赤鶏」。生産地の三瀬村を訪ねてタマネギなどの新たな名産品も発見し、2012年7月に「佐賀県三瀬村 ふもと赤鶏」を東京・田町に開業。現在、八重洲店と合わせて2店舗展開している。

さらに2012年8月にはカキを中心にした「北海道 厚岸」を、2012年12月にはむつ下北半島の食材を中心にした「青森県むつ下北半島」オープンした。

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