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電王戦、高性能PCに立ち向かった棋士の執念

2013/4/20

 5人のプロ棋士と5種のコンピューター将棋ソフトが戦う、第2回電王戦が終わった。1勝3敗1分けと負け越しはしたが、圧倒的な計算能力を誇るコンピューターに生身で立ち向かった棋士たちの執念に、心からの賛辞を贈りたい。

電王戦第5局を終え、記者会見する三浦弘行八段(左)と「GPS将棋」開発チームの金子知適・東大准教授(20日)

 「自分から投了するつもりは(ありませんでした)……」。第4局をソフト「Puella α」と戦い引き分けた塚田泰明九段は終局直後、込み上げてくる涙を抑えきれず、幾度も言葉に詰まった。立会人を務めた神谷広志七段は「塚田九段とは30年以上の付き合いだが、泣くところは初めて見た」と明かした。

 この将棋、途中までソフトの必勝だった。両者の玉が詰まない形になり、互いの駒数(点数)で勝負を決める展開となったが、点数は一時20点以上が開く大差。飛車角(各5点)2枚分も足りない、普通なら誰もが負けを認める状況だった。対局室の隣室で検討、応援していた棋士たちもさじを投げた。いつ投了するのか。大勢の報道陣は何度もカメラを担ぎ、ペンとノートを手に終局を待った。

 そんな状況でも、塚田九段は死力を尽くして延々と指し続けた。駒数を競う展開をソフトが苦手と知っていたこともあるが、「自分が負けたらチームの負け越しが決まってしまう」(塚田九段)という責任感が、諦めることを許さなかった。ソフトが損な手を重ねる中で塚田九段は少しずつ差を詰め、引き分けに必要な点数をついに確保。誇張なしに“奇跡”という言葉がふさわしい結末だった。

第2回電王戦勝敗表
棋 士ソフト
第1局阿部光瑠四段習甦×
第2局×佐藤慎一四段ponanza
第3局×船江恒平五段ツツカナ
第4局塚田泰明九段Puella α
第5局×三浦弘行八段GPS将棋

注:△は引き分け(持将棋)

 執念を見せたのは塚田九段だけではない。初戦で見事勝利を挙げた阿部光瑠四段は事前にソフトと本番同様の練習将棋(1回指すと丸一日かかる)を20回ほどもこなして相手の癖をつかみ、そこを突いた。佐藤慎一四段は敗戦後、翌日未明まで体が震えるほどの気持ちで対局に臨み、一時は優位に立った。船江恒平五段も途中までは終始ソフトを上回る正確な読みを発揮してはっきり優勢を確保、時間切迫と疲れさえなければ完勝していただろう。

 「(プロ対ソフトの電王戦は)何年も続いてほしい棋戦。(勝ってチームを引き分けに導くという)役割が果たせなくて申し訳ない」。敗戦直後に言葉を絞り出した三浦弘行八段の、今回の電王戦にかけた思いの強さはいかばかりだったか。

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