例えば、宮部みゆきの『R.P.G.』の英訳版『SHADOW FAMILY』の装丁は、真ん中に大きくタイトルが書かれている。その後ろに登場人物を思わせる男女を配したデザインになっており、原本よりもストーリーがイメージしやすいように仕上がっている。日本人の著者が抽象的なタイトルや装丁を好むのとは逆だ。

本の内容をにおわすタイトルの付け方や、カバーデザインは日本人ならではの奥ゆかしさの表れ。日本の原本と翻訳本を並べてみると、改めて日本文学の情緒的な側面が浮かび上がってくる。

スペイン語版や韓国語版の傾向は?
 最近では、日本文学はスペインやポルトガルでも翻訳されている。背景には日本のアニメやマンガが普及していることがある。アニメの『クレヨンしんちゃん』や『新世紀エヴァンゲリオン』などの人気が高く、こうした作品への関心が、日本文学に対する興味を後押ししている。スペイン版などは英語版から翻訳されるパターンが多く、タイトルや装丁も英訳ものに近くなる傾向があるようだ。
 一方、中国や韓国などアジア圏でも松本清張や山崎豊子をはじめとする日本文学が人気だ。アジアは日本と生活スタイルや文化が似ていること、日本人に近いメンタリティーを持ち合わせていることから、タイトルは直訳が多くみられる。嶽本野ばらの『下妻物語』は、欧米では『KAMIKAZE GIRLS』と変更されたが、中国や韓国、タイでは原本と同じく『下妻物語』で販売されている。
 また、東アジア圏には日本語を正しく訳せるネイティブの優秀な訳者も多く、日本文学が出ていきやすい環境が整っている。

(ライター 渡守武祐子)

[日経エンタテインメント!2011年4月号の記事を基に再構成]