企業を後押しする作品力

これまでの「新劇場版」2作同様、先ごろ公開された「Q」のプロモーションでは、公開前に詳細なストーリーなどは明かされず、公に配布される素材も少なかった。そのため「商品を目にする機会を増やす」という異例の宣伝方法を採り、タイアップやコラボ商品などで作品のイメージを広める作戦を展開した。

「Q」公開前にこのタイアップ・コラボ作戦に参加した企業は150社超。同作の商品企画・版権管理を担当するグラウンドワークスの神村靖宏氏は、「エヴァ史上最大規模」と話す。参加企業には、NTTドコモ、ANA、ロッテリア、参天製薬、ドワンゴなどの有名企業が名を連ねた。

企業側が「エヴァ」に注目したのは、コラボをきっかけに、商品や企業の認知度アップ、そして販促につながる点が挙げられる。2012年6月にNTTドコモが発売した「エヴァスマホ」は3万台が即日完売。参天製薬は、同8月に「人類爽快化計画」キャンペーンを展開。対象となる目薬「サンテFXネオ」と同「FX Vプラス」は、発売から2週間で前者が通常期125%、後者150%の売り上げを記録した。

中川翔子がプロデュースするファッションブランド「mmts(マミタス)」も、エヴァンゲリオンとコラボ。登場人物の真希波(まきなみ)・マリ・イラストリアスにふんした。

おそらく、エヴァンゲリオンを最も目にする機会が多かったのは、コンビニエンスストアのローソンだろう。「エヴァ」をよく知らない人でも、一度は見たことがあるはずだ。ローソンが「エヴァ」キャンペーンを始めたのは「序」公開の2007年から。「破」では作中にも店舗が登場した。「Q」でもコラボを行い、7000円もするグッズ付き映画チケットがローソン限定で販売された。

同社広告販促企画部の白井明子氏は「“エヴァだから買う”というユーザーが確実にいる。チケットからグッズ、ソフトまで幅広い展開力を持つ希有な作品だと考えている」と話す。

こうしたプロモーション展開の方針について、神村氏は次のように言う。「ファンの期待を裏切らない“新奇性”を織り込みつつ、スタイリッシュさを一般層にアピールして、新しいファンを獲得したかった」。

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「エヴァ」が地方を変えていく