力も道具も不要 驚くほどラクな認知症ケア

日経ヘルス

フランス発、認知症の人のためのケア技術「ユマニチュード」が注目を浴びている。体力や道具は不要。ただ、4つのポイントを心がけるだけで、介護する人は驚くほどラクになり、介護される人は快適に、穏やかになる。

「ユマニチュード」とは、フランス語の造語で「人であることを尊重する」という意味。フランス人のイブ・ジネストさんと、ロゼット・マレスコッティさんという2人の体育学の専門家が生み出した、認知症の人のためのケア技術だ。

「この2人は、認知症の患者さんをあまり動かさない従来の医療現場の常識を覆し、介護者が患者さんの力を引き出しながらケアすることで、介護される人は穏やかになり、介護する人はラクになるという、いい結果を引き出すことを見出した」と話すのは、日本でのユマニチュード普及を行う国立病院機構東京医療センター総合内科医長の本田美和子さん。

具体的には150の技術があるが、ポイントは(1)見つめる、(2)話しかける、(3)触れる、(4)立つことをサポートする――の4つ(図1)。「認知症の人は、情報の入り口が狭くなる。たとえば視野は、鼻を中心に左右15度くらいに狭まる。だから、後ろや横から声をかけられても、気づきにくいし、恐怖を感じやすい。認知症の人と接するときは、まず、目の高さで正面からじっと見つめることが大切」(本田さん)。ほかに、話しかけるときはポジティブな言葉で、触れるときはなでるように、と心がける。中でも重要なのは、「立って歩く」のをサポートすることだ。立って歩くことこそが、その人らしさの原点との考え方があるからだ。

図1 (イラスト:いたばしともこ)
図1の4つのポイントを解説しよう。
1.見つめる
同じ目の高さで、20センチ程度の距離で、チラ見ではなく、0.4秒以上じっと見つめる。見下ろされていると相手に感じさせず、お互いの関係が平等であることを伝える。
2.話しかける
低めのトーンで柔らかな抑揚で話す。「お元気そう」といったポジティブな内容で。また、「今、腕を拭きますよ」と、行っている動作の内容を“実況”し、頻繁に話しかけると、相手は安心する。
3.触れる
ゆっくりなでるように、広い面積をやさしく触れ続ける。腕は、上から力まかせにつかんだり、引っ張ったりせず、下から支えるようにサポートし、相手を労わっていることを伝える。
4.立つことをサポート
寝かせたままにせず、できるだけ、「立つ」「歩く」サポートを行う。最期までその人らしく、を大切にする、ユマニチュードの考え方の原点になっている。
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