書店によって料金体系が違いますしね。『もしドラ』に関してはあまりにもたくさんの電子書籍書店から引き合いがあるので、包括的な契約にしましょうと、つい最近決めました。細かなやりとりを散々してきて、「大変すぎますよね」という合意に至ったから、そういうことができるようになったというのはありますね。

――本の価格を決める基準はありますか?

 価格は、できれば高めにしたいです(笑)。『もしドラ』は1600円なんですけど、最初は1500円で行こうとしていて、最後の最後に100円上げたんです。表紙などにかなりコストをかけましたし、「これは1600円の価値がある」と。値段も読者へのメッセージの一つだということです。

 文芸だと逆に100円でも安くという感覚ですね。特に単行本は。100円の差で財布を閉めちゃう人もいるという前提で考えています。今回の『ジェノサイド』は原稿用紙1200枚、600ページの大長編なので、どうやって安く読者に届けるか、ということは気にしました。最終的に定価は1800円に決まりましたが、この本が2000円だったら、ここまで伸びなかったと思います。

 マンガは上げるといっても10円単位ですからね。600円を超えるかどうかが一つのハードルかなと思います。でも価格や部数に関しては、みんな感覚論で話していて、根拠はない気がします。

震災後に変わったことは? 

――震災後、本を作ることに対する気持ちに変化はありますか?

 自分が作りたい本に対する意識は、変わらないですかね。

 僕は、人の本質的な面と時代の流れを、いかにミックスしてエンタテインメント性を高くみせられるかを考えながらビジネス書を作っています。そうしたなかで、ビジネス書を取り巻く環境は、明らかに変わりましたね。震災後は、目先の小さいことはどうでもよくなった感じがする。ここ数年の流れではありますが、『もしドラ』やマイケル・サンデル『これからの「正義」の話をしよう』、ニーチェ本などのように、本質的な話をエンタテインメント化した作品がますます求められると思います。

 以前、伊坂幸太郎さんが打ち合わせで、「世の中に悲惨なことや悲しいことがたくさんあるのだから、自由に書ける物話ぐらいハッピーに終わりたい」と言っていて、その考え方に僕も大賛成で、震災前も後もそれは変わらずです。

足 仙台の伊坂さんもそうですし、冲方丁さんも、被災された福島から避難しながら連載『光圀伝』を、相当テンション高く書いていただいているのを見ていると、「来年から大きく変わるのかな」と思います。震災以降、被災地に入った作家の方が何人かいます。そういった影響を受けた作品が、連載を経て、書籍として店頭に並ぶのは、来年からなのかな、と。

 明るい本は増えるんじゃないですかね。僕が本を作るときにけっこう心掛けているのは、同じことをなるべく明るく言うことなんです。ビジネス書の基本は、何かを説明すること。だから、読む人を傷つけないように、単語一つひとつまで気を遣って作っているんです。買っていただいた方が、気持ちよく、しかもできれば面白く読める。ビジネス書に限らず、震災を経験したことでそういう風潮はさらに進むかもしれませんね。

(ライター 土田みき)

[日経エンタテインメント!2011年9月号の記事を基に再構成]