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書籍・マンガ編集者が語る ベストセラーの舞台裏

日経エンタテインメント!

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 ビジネス構造が変化している出版業界。ヒット作と売れない作品の差が広がるなかで、ヒット作の編集者は、どんな手を打っているのか。昨年最も売れた書籍『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』を手がけた加藤貞顕氏(ダイヤモンド社)、小栗旬と岡田将生主演の映画が2012年春公開の原作マンガ『宇宙兄弟』担当編集・佐渡島庸平氏(講談社)、直木賞候補作『ジェノサイド』を担当する足立雄一氏(角川書店)の3人に、市場動向から、仕事をする上でのポリシーまで、それぞれの立場で語ってもらった。

ラノベ人気から見えること

――この1年ほどの出版業界で目についた動きはありますか?

加藤貞顕(以下、加) 本の市場では、若い層向けの本と年配層向けの本が増えている気がします。

足立雄一(以下、足) 若い層向けでは、ライトノベル(ラノベ)は勢いがありますね。

佐渡島庸平(以下、佐) 僕らの世代は、高校時代に村上春樹さんを読んでいましたが、今の子は西尾維新さんを読んでいるのかな?

桜庭一樹さんや有川浩さんのブレイクも含め、文芸とラノベの垣根はなくなっているので、ありえますね。ただラノベは読者の回転が本当に早く、作家が、読者の言葉の感覚についていけなくなるケースが少なくないと聞きます。

 ラノベの言葉感覚は、独特ですよね。『とある魔術の禁書目録(インデックス)』というタイトルを初めてamazonで見たときに、すごくいいタイトルだなと思ったのを覚えています。「とある」といきなり付ける発想は、僕にはない。

 ラノベの読者層は、本来は、マンガがターゲットにしていた人たちなんじゃないですか?

 そう思います。出版社が、少年マンガ誌をうまく機能させられていないから、読者がラノベに移っている気がします。マンガ誌編集者の平均年齢が30代後半から40代のときに、10代向けは作れないですよ。ただ、ラノベも気をつけないと、マンガの二の舞になりますね。

 作り手があっという間に読者に追い抜かれてしまうという…。

――ベストセラーや話題作で、気になる作品は?

 『謎解きはディナーのあとで』のヒットは「本屋大賞」受賞も大きかったですが、作者の地元・広島から仕掛けていくとか、大賞を取る前から営業や書店の取り組みが効果的に回って売れた作品だと思います。『のぼうの城』や『神様のカルテ』もそうですが、小学館ならではの、1作品を推していく力を実感しましたね。

――賞の影響は大きい?

 マンガで部数に影響する賞は、「マンガ大賞」と「このマンガがすごい!」ですね。部数への影響はほとんどないものの、小学館と講談社の「漫画賞」は、マンガ業界にいる身としてうれしい賞です。結構"ガチ"で選考していることを知っているので。『宇宙兄弟』で両方受賞したときはとてもうれしかった。

 文芸で一番セールスにつながるのは本屋大賞。本屋大賞は、有志の書店員が賞を一からつくっていく経緯を見ているので、欲しいとずっと思っていました。『天地明察』が受賞したときは、ほかの賞と比べても、やっぱりうれしかったですね。

 ビジネス書の場合、賞はあまりないんですけど、『もしドラ』は賞を2ついただいています。ディスカヴァー・トゥエンティワンが主催する「ビジネス書大賞2011」の大賞と、「書店新風賞」。「新風賞」は一般に知られていませんが、その年に書店の活性化に貢献した本に与えられる賞として歴史が長く、権威がある。1969年にドラッカー『断絶の時代』でも受賞しています。

宣伝に効果的な番組は?

――賞の後押しが期待しにくいビジネス書で、宣伝効果が見込める媒体は?

 影響力が大きいのはやはりテレビですね。特にNHK『クローズアップ現代』やTBSの『王様のブランチ』などは強い。

 小説の場合も『ブランチ』とか『情熱大陸』は効きますね。ただし、番組が作品よりも作家のキャラクターに寄りすぎると、本を読みたいという気持ちにうまくつながらないこともあります。

マンガの場合は、小説やビジネス書と違って、一冊だけでの勝負ではありません。巻数を重ねるなかで、1~2年かけてどうやって読者を増やすかを考えるので、媒体の力を借りない宣伝方法を工夫しますね。

――部数を伸ばすきっかけとして映像化は大きなチャンス?

 『もしドラ』の場合、2009年12月に発売して、その1~2カ月後から映像化の話が来ましたけれど、ビジネス書の担当なので、それまでやったことがなかった。どうしたらいいか分からなかったので、佐渡島さんに相談したんです。

 映画化とドラマ化は、同じ映像化でも、作品への影響は随分違うというような話をしました。長期的な視野で作品を作る映画と、短期的な視聴率を取りに行くドラマでは、合う作品が異なると。『ドラゴン桜』はドラマが向いているし、『宇宙兄弟』は映画のほうがいい。

実は本来僕は、あまり映像化は賛成ではないんです。担当作家には、映像化できないといわれる突出した作品を生み出してほしい。そうしたなかで、『宇宙兄弟』の映像化に熱心なのは、作者の小山宙哉さんにとって週刊連載第1作目だから。デビュー作で作家ファンがたくさん生まれると、2作目以降を、読者の手応えがあるなかで、自由に描けるはず。だから、『宇宙兄弟』は映画化をきっかけに部数を伸ばしたいんです。

 小説の場合は、ドラマより映画のオファーが多いですね。気にするのは、文庫化と映画化のタイミング。映画に合わせて文庫を発売すればすごく伸びます。最近は1年半ぐらいで文庫化する例もありますが、作家によっては「単行本としてもっと売りたい」と言う人もいる。映画化のときに文庫にできず、チャンスを逃すことも。

映画やアニメをいかに本の売れ行きにつなげるかについては、いろいろやりました。アニメだと、声優さんのファンはまだ本を読んでない人も多いことが分かったので、声優さんによる『もしドラ』の書籍朗読会を大手書店で開きました。映画だと、主演のAKB48前田敦子さんのファンをいかに本のほうに誘導するかということを考えています。 

――編集者として、部数や売り上げはどれくらい気にしている?

 文芸の場合は、話題作がある年とない年で売り上げが大きく変わるので、厳密なノルマのようなものはないんですね。自分としては、2~3年のスパンで帳じりを合わせるぐらいの感覚でやっています。

 僕は編集者の仕事を、「作家の頭の中と現実の世界の橋渡しをすること」と定義していているんです。「橋渡し」の一環として、お金のことは無視できないので、売り上げや原稿料はかなり気にします。例えば、『宇宙兄弟』の小山宙哉さんは新人のときからずっと担当をしていて、デビュー直後は、小山さんがアシスタントを雇うための費用をどうやって捻出するかなども考えました。

 書籍の編集者なら誰もが収支の計算を自分でやると思います。イラスト代や帯のコストなど制作の細かい費用も含めて。あとは最近、電子書籍も手がけるなかで、技術者に対してどうお金を払うかという、ビジネスの設計みたいなこともやっています。

電子書籍時代の編集者とは?

 ――電子書籍への対応など、1人の編集者に求められている役割は増えていますか?

 電子書籍に関しては、昨年くらいから各々の編集者も本格的に考えなきゃいけないと言われています。ビジネスとして成立していくためのアイデア出しも含めて、現場に対して求められている部分はありますね。

 電子書籍の場合、許可を取る範囲も書籍と違っていて、大変なときがあります。例えば書籍は、紀伊國屋書店で売るときとジュンク堂で売るときに個別の許可は必要ないですよね。でも電子書籍だと、書店が増えるごとに作家さんに許可を取る場合もあって。

 書店によって料金体系が違いますしね。『もしドラ』に関してはあまりにもたくさんの電子書籍書店から引き合いがあるので、包括的な契約にしましょうと、つい最近決めました。細かなやりとりを散々してきて、「大変すぎますよね」という合意に至ったから、そういうことができるようになったというのはありますね。

――本の価格を決める基準はありますか?

 価格は、できれば高めにしたいです(笑)。『もしドラ』は1600円なんですけど、最初は1500円で行こうとしていて、最後の最後に100円上げたんです。表紙などにかなりコストをかけましたし、「これは1600円の価値がある」と。値段も読者へのメッセージの一つだということです。

 文芸だと逆に100円でも安くという感覚ですね。特に単行本は。100円の差で財布を閉めちゃう人もいるという前提で考えています。今回の『ジェノサイド』は原稿用紙1200枚、600ページの大長編なので、どうやって安く読者に届けるか、ということは気にしました。最終的に定価は1800円に決まりましたが、この本が2000円だったら、ここまで伸びなかったと思います。

 マンガは上げるといっても10円単位ですからね。600円を超えるかどうかが一つのハードルかなと思います。でも価格や部数に関しては、みんな感覚論で話していて、根拠はない気がします。

震災後に変わったことは? 

――震災後、本を作ることに対する気持ちに変化はありますか?

 自分が作りたい本に対する意識は、変わらないですかね。

 僕は、人の本質的な面と時代の流れを、いかにミックスしてエンタテインメント性を高くみせられるかを考えながらビジネス書を作っています。そうしたなかで、ビジネス書を取り巻く環境は、明らかに変わりましたね。震災後は、目先の小さいことはどうでもよくなった感じがする。ここ数年の流れではありますが、『もしドラ』やマイケル・サンデル『これからの「正義」の話をしよう』、ニーチェ本などのように、本質的な話をエンタテインメント化した作品がますます求められると思います。

 以前、伊坂幸太郎さんが打ち合わせで、「世の中に悲惨なことや悲しいことがたくさんあるのだから、自由に書ける物話ぐらいハッピーに終わりたい」と言っていて、その考え方に僕も大賛成で、震災前も後もそれは変わらずです。

足 仙台の伊坂さんもそうですし、冲方丁さんも、被災された福島から避難しながら連載『光圀伝』を、相当テンション高く書いていただいているのを見ていると、「来年から大きく変わるのかな」と思います。震災以降、被災地に入った作家の方が何人かいます。そういった影響を受けた作品が、連載を経て、書籍として店頭に並ぶのは、来年からなのかな、と。

 明るい本は増えるんじゃないですかね。僕が本を作るときにけっこう心掛けているのは、同じことをなるべく明るく言うことなんです。ビジネス書の基本は、何かを説明すること。だから、読む人を傷つけないように、単語一つひとつまで気を遣って作っているんです。買っていただいた方が、気持ちよく、しかもできれば面白く読める。ビジネス書に限らず、震災を経験したことでそういう風潮はさらに進むかもしれませんね。

(ライター 土田みき)

[日経エンタテインメント!2011年9月号の記事を基に再構成]

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