■ラノベ人気から見えること
――この1年ほどの出版業界で目についた動きはありますか?
加藤貞顕(以下、加) 本の市場では、若い層向けの本と年配層向けの本が増えている気がします。
足立雄一(以下、足) 若い層向けでは、ライトノベル(ラノベ)は勢いがありますね。
佐渡島庸平(以下、佐) 僕らの世代は、高校時代に村上春樹さんを読んでいましたが、今の子は西尾維新さんを読んでいるのかな?

足 桜庭一樹さんや有川浩さんのブレイクも含め、文芸とラノベの垣根はなくなっているので、ありえますね。ただラノベは読者の回転が本当に早く、作家が、読者の言葉の感覚についていけなくなるケースが少なくないと聞きます。
佐 ラノベの言葉感覚は、独特ですよね。『とある魔術の禁書目録(インデックス)』というタイトルを初めてamazonで見たときに、すごくいいタイトルだなと思ったのを覚えています。「とある」といきなり付ける発想は、僕にはない。
加 ラノベの読者層は、本来は、マンガがターゲットにしていた人たちなんじゃないですか?
佐 そう思います。出版社が、少年マンガ誌をうまく機能させられていないから、読者がラノベに移っている気がします。マンガ誌編集者の平均年齢が30代後半から40代のときに、10代向けは作れないですよ。ただ、ラノベも気をつけないと、
足 作り手があっという間に読者に追い抜かれてしまうという…。
――ベストセラーや話題作で、気になる作品は?
足 『謎解きはディナーのあとで』のヒットは「本屋大賞」受賞も大きかったですが、作者の地元・広島から仕掛けていくとか、大賞を取る前から営業や書店の取り組みが効果的に回って売れた作品だと思います。『のぼうの城』や『神様のカルテ』もそうですが、小学館ならではの、1作品を推していく力を実感しましたね。
――賞の影響は大きい?
佐 マンガで部数に影響する賞は、「マンガ大賞」と「このマンガがすごい!」ですね。部数への影響はほとんどないものの、小学館と講談社の「漫画賞」は、マンガ業界にいる身としてうれしい賞です。結構“ガチ”で選考していることを知っているので。『宇宙兄弟』で両方受賞したときはとてもうれしかった。