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東京ふしぎ探検隊

2012/7/20

東京ふしぎ探検隊

大阪ではなぜ、直通運転が少ないのか?

1960年代以降、首都圏の鉄道各社は次々と直通運転を広げていった。今では都営浅草線に5社の車両が乗り入れるなど、ますます便利かつ複雑になっている。これに対し、関西では直通運転はあまり広がっていない。現在、大阪市営地下鉄が直通運転を実施しているのは3社だけだ。東西の違いはどこからくるのか?

森地特別教授はこんな見方を披露する。「東京と大阪では混み方が違う、というのがまずあります。直通運転の必要性が東京ほどではなかったのでしょう。それに大阪は私鉄各社の独立志向が強い。都心部への乗り入れは官(大阪市)に頼るのではなく、自分たちの手でやればいい、と考えたのではないでしょうか」

直通運転で悪化した車両の混雑

都心と郊外との直通運転は、メリットばかりではない。

「東京の鉄道神話は崩れ去った」。森地教授はこのところの車両運行に厳しい見方を示す。世界に誇ってきた緻密で正確な運行が、直通運転をきっかけに失われてしまった、という。

森地教授によると、混雑には4つの種類がある。車内、ターミナル、車両、そして踏切だ。直通運転によって車内とターミナルの混雑はある程度緩和したが、車両の混雑がかえって悪化してしまったという。

東急田園都市線は地下鉄半蔵門線、東武伊勢崎線と相互乗り入れをしている

例えば東武伊勢崎線と直通運転を実施している東急田園都市線では、ラッシュ時の遅延が常態化している。東武線内での遅れが波及し、列車が数珠つなぎになってしまうのだ。もちろん、東急線内の遅れも東武線に波及していく。

森地教授は「密接に絡み合う鉄道網と頻繁にやってくる電車、そして直通運転と、これまで世界に誇ってきた3つの要素が、一転してマイナスの側面を見せている。首都圏が高密度につながったことで、わずかな遅れであってもネットワーク全体に広がってしまい、解消に時間がかかるようになった」と指摘する。先の例でいえば、東武伊勢崎線内で発生した遅れが東急田園都市線に波及し、迂回ルートである東急大井町線、東横線に乗客が流れ、これらの路線まで混雑の影響で遅れてしまう、といったケースだ。森地教授は「負の連鎖を断ち切るには、思い切った間引き運転など、これまでの常識にとらわれない運行管理が必要なのでは」と訴える。

「小田急線内を走らない小田急の車両」のナゾ

ところで、直通運転が始まってから、都心部では奇妙な現象が起きている。自社の路線を全く走らない車両が増えているのだ。

試しに東京・大手町の千代田線ホームでしばらく車両を眺めてみた。すると、小田急の車両なのに行き先が千代田線止まりの車両があった。別の路線でも同じだ。どうしてこんなことが起こるのか。

その答えは「東京地下鉄道千代田線建設史」に書いてあった。そこには直通運転のこんな契約が載っている。「それぞれの車両の相手線内の走行キロが、極力接近するように定める」――。この協定が、車両管理をややこしくしているのだ。

地下鉄千代田線への乗り入れ用などで活躍した小田急電鉄の「9000形」車両。2006年に引退した

実は直通運転を行う際、各社は走行距離に応じてお互いに車両の利用料金を払っている。例えば千代田線内を小田急の車両が走った場合、東京メトロは小田急に車両使用料を払う。車両の走行距離が均等になれば料金も相殺できるため、他社の路線内を走らせることで距離を調整する手法が広がったようだ。ある私鉄大手の担当者は「乗り入れ先が3社以上になると、車両のやりくりがかなり複雑になる」と漏らす。このあたりのからくりは、所沢秀樹「鉄道会社はややこしい」(光文社)にも詳しい。

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