1杯のコーヒーを巡る戦いが激化している。既存の大手カフェチェーンを脅かす第1の波が、急拡大した低価格のいれたてコーヒーだ。2008年にマクドナルドが豆のグレードを上げて「100円コーヒー」を刷新。この成功を受けて、昨年から大手コンビニ各社が、レギュラーサイズで1杯100~180円のいれたてコーヒーの提供を一斉に始めた。
特にセブン-イレブンの「セブンカフェ」は当初の年間目標を早々に上方修正し、年4億5000万杯を販売する勢い。購入者の約半数が女性といい、缶コーヒーの代替ニーズだけではなく、既存カフェの需要も取り込み、一躍、大手セルフカフェの一角に躍り出た。
第2の波は、地方からやってきた。無料のモーニングサービスや居心地の良い店内空間などを特徴とする「名古屋式」のフルサービス型喫茶店、コメダ珈琲店だ。長時間くつろげる場として、またはボリューム感のある軽食メニューやスイーツに引かれてファミリーレストラン代わりに使う人の支持も得ている。ドトールコーヒーショップやスターバックス コーヒーに迫る国内1000店体制を目指す構えだ。
既存のカフェチェーンなども、手をこまぬいているわけではない。ドトールは、より快適性の高い「白ドトール」へと急ピッチで既存店の改装を進めている。コンビニコーヒーに追い上げられる形になったマクドナルドも、専任バリスタがラテなどを提供する店内カフェ「マックカフェ バイ バリスタ」を増やす計画で、カフェ志向を強めている。
2012年から大手コンビニが「カウンターコーヒー」などと呼ばれる、いれたてコーヒーを相次ぎ強化。セブン-イレブンが1杯ごとにひきたてをドリップするマシンを導入したのに対し、ミルク系メニューを得意とするローソンなど戦略は分かれるが、いれたてコーヒーの提供店が一気に数万店規模に。
2008年にハイスペックなアラビカ豆を使った「元祖」100円コーヒーの「プレミアムローストコーヒー」で、大ヒットを記録。2012年には深煎りの豆を加え、香りとコクを強化した。
一気に勢力を拡大したコンビニコーヒーに対して、既存のカフェチェーンはまだ静観の構え。都市部のカフェが飽和状態にあるなか、出店余地が大きい郊外立地に期待する向きが大きい。星乃珈琲店を積極展開するドトール・日レスホールディングスの他、銀座ルノアールも郊外型の「ミヤマ珈琲」のフランチャイズ展開を検討している。